マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「管理不全マンション」の実態とはどのようなものか?

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先日、知人から某マンションの相談を受けました。その内容を要約すると以下のようになります。

 

◆今から10年ほど前に、友人が新築で購入した小規模のマンションがある。

 

◆友人は仕事の都合で移転したため現在そのマンションに居住しておらず、今後も戻る可能性もなくなってしまったので、今売りたいと考えている。

 

◆しかしながら、3つの点で「問題」があることがわかった。

1)管理組合の総会がここ数年開催された形跡がない。

2)管理規約や使用細則も持っていない。

3)管理費等をしばらく滞納しているが、督促されていないため支払っていない。

 

◆このような状況下でも区分所有権を売ることができるだろうか・・?

 

管理規約を定めるかどうかは、その管理組合の任意で判断できます。

 

ただ、毎年1回定期総会を開催することは区分所有法で定める強行規定ですから、これが守られていないとなると、かなり深刻な状況だと思われます。

 

総会が開催されていないということは、おそらく決算書も作成されていない可能性が高いわけで、直近の管理組合の財政状況が全く分からないことになります。

 

これではマンションの資産価値を査定しようがないと言わざるを得ません。

 

また、滞納管理費があるにもかかわらず、管理組合として督促していないことは、理事会や管理会社が収益の日常管理すらできていないものと推測できます。

 

率直に言って、「管理不全マンション」に陥っている可能性が高いといえるでしょう。

 

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こうした区分所有マンションを現状のまま売りに出してもまず買い手はつかないと思われます。

 

なぜ、まだ老朽化していない段階でこのような状態に陥ってしまったのか分かりませんが、マンション管理士としては非常に興味深いものがあります。

 

ただ、このようなマンションの管理を適正化するのは容易なことではありません。

 

かつて東京都が、管理組合の活動が思わしくないマンションを選定し、マンション管理士を派遣して組合活動の活性化に向けた取組を支援するモデル事業を実施したことがあります。

その際、管理不全の兆候があるマンションを訪問したものの、「必要ない」「居住者間の繋がりが無く不可能」などの理由により拒否されるケースが多かったとしています。

調査への協力が得られないと、実際にそのマンションがどのような問題を抱えているのか把握できないため、解決策も提示できないことになります。

 

また、現状では行政でさえ管理組合の活動に関与できる法的根拠を持たないため、管理組合自身の協力が得られない限り、これを支援・指導することができないのが実情です。

 

これでは堂々巡りになってしまい、管理組合を救うことができません。

 

また、このようなマンションを放置することはその地域における安全・防犯・防災などの面でのリスクを高めることになります。

 

たとえば、定期総会の開催すら行われず、明らかに区分所有法に違反している実態が把握できた場合には、行政機関が強制介入できるような措置も必要ではないでしょうか。

 

その意味で、昨年9月に実施した東京都住宅政策審議会の答申における、管理不全マンションの予防保全対策案には概ね賛同します。

 

<参考>

【答申】東京都におけるマンション施策の新たな展開について

 

 

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