マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション一括受電に関する主な論点をまとめてみた

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多くのマンション管理組合では一括受電についてはいまだ十分に認識がなされず、そのため理解も進んでいないと言わざるを得ません。

 

そこで本ブログの過去記事を整理しつつ、一括受電の主要な論点について纏めてみました。

 

#1 マンション一括受電のしくみが理解されていない

一括受電を導入するには、<管理組合が変電設備を自ら所有する方法>と、<一括受電サービス業者と契約する方法>の2つがあります。

 

それぞれの仕組みはもちろん、メリットと留意点をまず正しく知ることが大切です。

 

<参考記事>

allabout.co.jp

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

ただ、残念ながら取材記者の誤った理解にもとづく記事も見られます。

 

たとえば、下の記事で取り上げた新聞記事では、一括受電サービス業者(新電力)のスキームの実例だけを紹介しています。

 

そのうえで、一括受電によって電気料金が下がる理由として、

東電など地域電力会社が送配電設備を保有する高コスト体質なのに対して、一括受電サービス業者などの新電力は変電設備の投資負担しかないので、電気代を大幅に割り引くことができる

というトンチンカンな説明をしています。

 

受電サービス業者であろうと、管理組合であろうと、変電設備を持つことで3割安く電気を購入することができます。

 

一括受電業者は、安く仕入れた電力を管理組合に販売する際に料金調整することによって長期間にわたって差益を稼ぐというビジネスモデルを理解していませんでした。

 

 <参考記事>

 

#2 一括受電導入のハードルの高さは、マンション建替え以上!?

既築マンションで一括受電の普及が進みにくい原因は、それだけではありません。

 

一括受電の導入自体は、管理組合の普通決議事項のため、過半数承認で原則十分なのですが、実際には全住戸が現契約の解除に同意する文書を地域電力会社に提出する必要があります。

 

最大のイベントであるマンションの建替え決議でも、全体の8割以上の同意があれば実現可能なのに、「100%の同意が絶対条件」というわけです。

 

これはあまりにも理不尽であるし、管理組合の運営ルールの原点である区分所有法の精神にも反すると思います。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

そのため、管理組合で圧倒的多数で決議されたにもかかわらず、一括受電への理解が不十分な反対者が少しでも現れ同意書を提出してくれないと、導入スケジュールが遅れるか、もしくは導入自体が頓挫してしまうことになるのです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

#3 電力小売り自由化で、一括受電のメリットが分かりにくくなった

 平成28年4月に実現した「電力小売りの全面自由化」の宣伝効果によって、マンション一括受電に対する関心も高まったのは事実です。

 

 ただ、各住戸で電力会社を自由に選択できるようになったうえ、電気料金も若干下がることになったために、組合でまとめて電気を購入する一括受電と区別して正しく理解してもらうことが一層難しくなった感があります。

 

 低圧受電という中で料金が下がったとしてもせいぜい数%が関の山であり、一括受電で料金が大きく割り引かれるメリットを勝ることはないのですが、一括受電を選択することで電力会社を各住戸が選択できない点がデメリットだと考える方もいらっしゃるのも事実です。

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 以上を纏めると、

◆一括受電の基本的なしくみが認知されていない。

◆管理組合内の合意形成のハードルが異常に高い。

◆電力自由化によって、消費者の選択肢も増えて論点が複雑化した。

 

これら3点が一括受電が普及しにくい要因と言えます。

 

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