マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

標準規約改正で、議決権割合を変更しようとする管理組合が増えるか?

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4月11日付の「NEWSポストセブン」の記事で、「マンション管理規約改正 資産価値高い部屋の発言権が増す」と題する記事が掲載されていました。

 

www.news-postseven.com

 

この記事を要約すると、

◆3月14日に、国交省による「マンション標準管理規約」の改正が発表されたが、マンション住民にもっとも大きな影響を与える変更が「議決権割合」である。

 

◆管理組合の総会で物事を決めるとき、これまでは「1戸1票」が原則だったが、マンションの高層化・大型化に伴い、同じマンション内でも住戸の資産価値に大きな差が生じてきたため、その常識が通用しなくなってきたためだ。

 

◆標準管理規約の改正がなされたからといって、既存マンションの管理規約がこれに則ってただちに変更されるわけではないが、既存物件でも大きな影響を受けるのは避けられない。今回の改正を“錦の御旗”にして、管理規約を見直そうとする管理組合も少なからず出てくるはず。

 

◆議決権割合の高い住戸の所有者、すなわち高所得者や資産家にとって有利な規約への変更がなされたり、彼らが望む運営方針(物件の資産価値を上げるため、より高品質な管理サービスを導入したり、大規模修繕を頻繁に行うなど)を実行することで、将来的に管理費や修繕積立金が 大幅にアップするような事態も起こる可能性がある。

 

◆管理規約を変更するには、全住戸の4分の3以上の区分所有者が賛成する必要があるが、組合総会には全体3分の1程度しか出席せず、残りは委任状の提出で理事長に一任する人が多いので、管理規約の変更自体はそれほど難しいことではない。

 

さらに、これを簡潔にまとめると下のようになります。

 

今回の標準管理規約の改正を奇貨として、既存マンションの管理規約もこれに則った形で改正がなされると、議決権割合の高い区分所有者=「高所得者あるいは資産家クラスの組合員」が事実上組合運営の主導権を握ることになり、それによってその他の区分所有者が不利益を蒙るケースも増えるのではないか? 

 

本当にそうでしょうか? 

 

率直に言って、私はこの「仮説」に賛成しかねます。

 

現行の管理規約の改正に際しては、通常よりもかなりハードルが高く、「組合員総数の4分の3以上の賛成」および「議決権総数の4分の3以上の賛成」という両方の条件を満たさねばなりません。(特別決議事項)

 

一方、普通決議事項は、委任状を含めて全体の半数以上の出席が成立要件となり、出席者の過半数が賛成すれば決議されます。

 

つまり極端に言えば、少なくとも全体の25%超の賛成票があれば決議することも可能なわけです。

 

これに対して、特別決議事項は全体の4分の3=75%以上の賛成票が必要なので、普通決議事項に比べて「最大3倍の票集め」を要することから、両者の難易度はかなり違うのです。

 

仮に、既存マンションで各住戸の議決権割合を変更しようとする場合には、議決権全体のパイを各組合員でゼロ・サム形式で配分し直すことを意味しますから、各組合員の利害に関する明暗がはっきりすることになります。

 

その際、「他人が得して自分は損する」ことで既得権を失う人が多い場合でも、「いつもの無風で平穏な総会」で終わると考えるのは少々甘く見過ぎではないでしょうか。

 

たとえ平時は組合運営に無関心な人が多いと感じられても、各人の利害に直結する議案については皆さんかなり敏感に反応するものです。

 

また、規約改正を行おうとする場合にはそれなりの「大義名分」も必要になります。

 

つまり、「今なぜ、何のために規約を改正しなくてはならないのか?」ということです。

 

少なくとも「標準規約の改正がなされたから」というだけでは、「大義」とはなり得ないでしょう。

 

以上の点を踏まえると、

「議決権割合の変更を目的とする管理規約の改正の実現は容易ではない」

と考えます。

 

 

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