11/25付の日本経済新聞に「マンション理事会は理事長を解任できるのか」という記事が掲載されていました。
この問いに対して、近々 最高裁が初めて判断を示すことが話題になっています。
本記事の要約は、以下の通りです。
・・・・
■2013年に、福岡県のマンションで当時理事長だった男性が管理会社をリプレイスしようとしたところ、他の理事らが反発。「理事長は解任した」と住民に通知。男性は解任は無効として管理組合を相手に訴訟を提起した。
■裁判の争点は、「理事会が理事長を解任できるか」という点。このマンションの管理規約では「理事長は理事の互選で選ぶ」と定める一方、理事会が理事長を解任して単なる理事に「降格」させられるかどうかは明記していなかった。
■一審の地裁判決では、解任の規定がないことを重視して解任を無効とした。二審の高裁でも原告が勝訴した。
■一方、敗訴した管理組合側は、「学説や実務の慣行では、選任に準じて解任もできるとの考えが定着している」として上告した。株式会社の取締役会が代表を解職できることなども根拠に挙げ、二審の見直しを求めている。
■原告側代理人は「規約に明記されていない解任を認めれば、理事長の地位が不安定になる」と強調。「意に沿わない理事長を排除したい管理会社が他の理事を巻き込んで解任に追い込めるようになる」との懸念も示す。
■最高裁は11月30日に双方の意見を聞く弁論を開くが、上告審の弁論は二審の結論を変更する際に開かれるのが通例で「解任できる」と判断する公算が大きい。
■このマンションの管理規約は、国土交通省の「マンション標準管理規約」に沿った内容となっている。国交省は「最高裁判決を踏まえ、必要があれば標準管理規約の見直しを検討したい」と説明している。
・・・・・
この記事を読んでそもそも疑問に感じたのは、「理事長の専横を止めるために理事長を解任した」という部分です。
このマンションの管理規約が「標準規約に沿った内容」なのであれば、理事会の議事運営の方法も同様のはずで、理事長が提案する議事に他の理事が反対すれば多数決で否決することもできたと思います。
区分所有法上の「管理者」も兼務しているとはいえ、理事長一人の権限で決定できる事項はかなり限定されています。
また、標準管理規約は、民主主義に則って(総会・理事会ともに)多数決制を採用していますから、理事会の議案も出席した理事の過半数の承認で可決されます。
管理会社のリプレイスに反対という理由だけで理事長を解任したとすれば「行き過ぎ」と言わざるを得ません。
むしろ、他の理事たちが「管理会社のシンパ」だったのでは?と訝ってしまいます。
さて、理事長解任の理由の是非はさておき、
記事の本題である「理事会は理事長を解任できるのか」を検討しましょう。
標準規約では、各理事の役職は「役員間の互選で決める」と定められています。
「何かと矢面に立つ理事長だけにはなりたくない!」と考える役員がもっぱらで、互いに押し付け合ったうえ、それでも決まらない場合は公平に(?)くじ引きで決めるのがよく見られる光景ですが・・・。
理事会の発足時に互選で決めた役職を再度互選で決め直すのは「あり」でしょう。
たとえば、仕事の都合で理事会に出席が困難になったなどの急な事情の変更も考えられます。
これまでの理事長が副理事長や(平)理事に変わる、といったことも再び互選でできるはずです。
ただし、当の本人を含めて最終的に「理事全員の承諾を得ること」が前提でしょう。
一方、「一旦互選で決めた役職について、理事会内の多数決という手段で(強制的に)解任できるか?」となると、確かに今の標準規約にも明確な記載がありません。
したがって、現行の区分所有法にしたがうと、臨時総会を開催のうえ理事長を「役員として解任する(=理事会から追い出す)」しかないと考えられます。
そこで問題になるのは、
その「総会を招集する主体が理事長本人」ということです。
他の理事の圧力に屈し、意に反して自分が解任される議案のために、理事長の自分自身が総会を招集する・・というのはあまりにも酷ですね。
その意味では、理事会の(多数決による)決議で理事会内の役職変更ができるように標準規約を改正するのが良いのではないかと考えます。
ただし、理事会内の意見対立から端を発した事実上の「理事長解任」のようなケースもあることを踏まえると、その決議要件(=出席した理事の過半数で決する)はより厳格にしておく必要があるかもしれません。
<参考記事>
※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/
↓ ↓