マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「共用部電気料金97%削減」を実現したマンションは「何」が違うのか?

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マンション・バリューアップ・アワード2019」というイベントがあるのをご存じですか?

 

マンションへの永住志向が高まる中、適切な維持管理や健全な組合運営を推進していくことを目的に、マンション管理業協会が「住み心地の向上」や「建物の適切な維持・管理」のための事例やアイデアを募集するイベントを開催しています。

 

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このイベントの要約は以下の通りです。 

■ 「アワード」のテーマは、以下の5部門に分かれ、今年度は計800近い応募があった。

①マンションライフ部門(住み心地、居住価値向上)

②工事部門(建物資産価値の向上)

③防災部門(防災力の向上)

④財政部門(組合財政の健全化)

⑤高齢者対応部門(居住者の高齢化に伴う先進事例)

 

■ 今年度のグランプリには、「省エネ・創エネで共用部分電気代を97%削減」した京都・西京極大門ハイツ管理組合法人が選ばれた。

 

■ 同マンションは、過去43年間の共用部・動力電気代の推移のデータが残っており、管理費に占める割合が20%を超え負担が大きいことから、低電圧契約、LED照明への切り替え、電力一括受電、太陽光発電の導入などを図り、電気代の負担を約280万円から平成30年は約8万円まで減らし、管理費に占める割合を0.7%に抑えた。

 

■ 同マンションは、2015年に外壁外断熱、真空ガラスの設置工事を実施しており、京都環境賞を受賞している。

 

■  同マンションの理事長は、受賞後「組合理事はみんな素人だが、誰にも迷惑をかけない、誰からも喜ばれる、どこでも取り組めること。電気代の推移のデータはあるはずなのにそのままにしている。見える化を図り、せっかくの宝の山を生かすべき」と、全国の管理組合に呼び掛けた。

 

■ 主催者であるマンション管理業協会の岡本理事長は、「マンションの劣化、居住者の高齢化、さらに自然災害への対応など管理業を取り巻く環境は厳しさを増し、10年後、30年後は想像を絶する事態を招きかねない懸念もある。区分所有法も施行から60年。制度疲労を起こしている。従来のビジネスモデル、フレームを超えたイノベーションを若い人中心に起こす必要がある」と語った。

 

 今年のグランプリに輝いた西京極大門ハイツ(1976年竣工・190戸)ですが、以前からしばしばマス媒体にも取り上げられている、有名なマンションです。

 

今からもう6年も前になりますが、これまでの管理組合の取り組みは、「マンション・ラボ」でも特集記事が組まれたほどです。

 

www.mlab.ne.jp

このサイトページによれば、

■ 1992年に完全自主管理に移行したことによって、マンション管理の「自分ごと化」が実現できた。また、管理組合法人に移行したことで、「経営」視点からの管理組合運営が実現した。 

■ 設備の交換タイミングの度に、省電力・エコ化を視野に入れてコンバーター制御のエレベーターの入替、水道の揚水ポンプ交換、高架水槽のモーター容量の低容量化、LED化、真空ガラスの導入などで省エネ化を図ってきた。

■ 上記の電力使用量の低減と高圧一括受電による電力単価の低下が相乗効果を発揮して、電気代は最高時の6割減となった。

■ さらに、敷地内の共用施設の屋上に太陽光発電設備を設置し、売電事業を行なっており売電により年間60万円ほどの収益が得られている。

■ このマンションでは、工事を発注する際に自分達で仕様書を作成して、インターネットで業者を募集する。応募した業者を管理組合で審査して、その後入札。公募した方が、適正な価格でより多くの業者から選ぶことが出来るからだ。

管理費から発生する余剰金は、2ヶ月相当分の“管理費還付金”を毎年度実施している。こうした取り組みによって、管理組合に対する信頼感は非常に高いものになった。実際、総会には8割を上回る参加があり、ほとんどの議案が全会一致で可決されている。

 

高圧一括受電や太陽光発電装置の設置といった重要事案は、特別決議事項に該当するため、4分3以上の賛成が必要になります。

 

しかし、この組合では概ね「全会一致」で可決してきたといいます。

 

なぜこのような「偉業」がなし遂げられたのでしょうか?

 

その要因は、組合員全体が自らが所有するマンションの運営を「わがこと」と捉える意識の高さにあると思います。

 

ただ、このマンションも当初は「管理会社任せ」の運営だったようです。

 

「管理会社の対応は住み込み管理員や清掃員を派遣するだけ。フロント業務や理事会運営サポートは脆弱なものでした。住み込みの高齢な管理員夫婦が退職されるにあたり、管理委託料を大幅に値上げする見積もりが出たのが、自主管理に切り替えたきっかけですね。」(理事長談)

 

つまり、「このままでは拙いのではないか?」という「危機感」が生まれたことによって、管理組合の運営に改革のメスが入ったというわけです。

 

組合の財政問題や管理の品質についてリスクや問題意識を持ちはじめたことをきっかけに、一部の住人がリーダーシップをとって改革を起こしたのがきっかけだったようですが、多くの住人が管理組合の運営を「自分事」として意識できなければ20年以上も続きません。

 

ところが、

分譲マンションの購入者は「管理組合の運営を管理会社に任せておけるように、毎月管理費を払っているのだ」という考える傾向が強い。

 

その考え方が根本的に「間違い」なのです。

 

なぜか?

管理会社と管理組合とは「利益相反」の関係にあるからです。

 

管理費や修繕費が高い方が、管理会社は儲かります。

修繕積立金が不足しても、管理会社は特に困りません。

組合運営に無関心な住民が多い方が、管理会社は楽チンです。

組合役員が輪番制の方が管理会社は組合をコントロールしやすいです。

管理費の滞納や駐車場の空きが増えても管理会社の売上は減りません。

 

こうしたリスクに早く気づき、組合運営を「自分事」として捉え、「主体性」をもって行動できるかどうかで、あなたのマンションの将来の資産価値は決まるのです。

  

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