10月9日付のNETIB-NEWSで、「福岡市のマンション管理業者に営業停止処分」という記事が掲載されていました。
この記事を要約すると、以下の通りです。
■ 10月2日、国土交通省は福岡市の管理業者「(株)西日本ビル代行」に対し、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」違反に伴い「業務停止」などの監督処分を行うと発表。
■ 業務停止命令および指示処分を受けた場合、30日間はマンション管理業に関する新規の契約を結べないほか、再発防止措置を講じるよう求められる。
■ 処分の理由は、マンション管理組合が毎月の管理料や修繕積立金などを出し入れする収納口座の通帳と印鑑をマンション管理業者が保管する場合、業者の私的流用や倒産による損失を防ぐために、「管理費保証制度」に加入する必要があるにもかかわらず同社はそれに加入していなかった。
■ 2016年12月、同社が管理を受託しているマンションの組合員から、「管理業者から法律に基づいた書面が組合に提出されているか」という旨の問い合わせがあったことから、今回の違反が発覚した。
■ 取材に応じた同社は、「法改正の際、制度変更を当該マンション管理組合の理事長に説明したが、管理費の値上げにつながるため、納得いただけなかった。」とコメントしている。
つまり、本記事の管理業者は、「 マンション管理適正化法」に違反したために業務停止処分を受けたわけですが、それが具体的にどんな違反行為なのかが分かりづらいと思います。
この記事を読み解くポイントは、
「管理費・修繕積立金の収納方法」と「管理費等保証制度」の2点ですが、これらについて以下解説しましょう。
(1)管理費・修繕積立金の収納方法
一般的に、毎月徴収される管理費等は以下のように収納・保管されます。
①まず、毎月、区分所有者の口座から自動振替え(もしくは振込み)によって、管理組合理事長名義の「収納口座」に入金がなされる。
②管理事務に要した費用(管理委託費、水光熱費など)が控除される。
③残額を、翌月末日までに収納口座から「保管口座」に移し換える。
この一連の収納・保管業務を、管理会社が代行するのが一般的です。
あるいは、管理会社から「集金代行会社」に再委託することも少なくありません。
<集金代行会社に委託している場合には、区分所有者の口座から集金代行会社の口座に振り替えたあと、管理組合又は管理会社の収納口座に収納することになる>
管理会社による組合財産の着服等を防止するため、管理組合の「保管口座」に係る管理組合の「印鑑」は原則として管理会社が管理するのはNGです。
保管口座には、多額の修繕積立金と管理費会計の繰越剰余金が集まる重要性の観点から、管理会社が(通帳はOKですが)カード・印鑑等まで預かれないのです。
一方、「収納口座」については、上記のフローのとおり、毎月1ヶ月分の管理費等が預け入れされるものの、翌月末までには保管口座に経費控除後の残金が移管されて一旦残高ゼロになるため、保管口座に比べるとリスクは低いと言えます。
そのため、事務代行業務の効率性の観点から、管理会社が「収納口座」に関する印鑑・カード・通帳等を管理することも「条件付きでOK」としているのです。
その「条件」こそが、管理費等の保証契約締結です。
(2)管理費等保証制度
管理費等保証制度は、「マンション管理適正化法」で規定される指定法人として、「一般社団法人マンション管理業協会」が行う保証制度です。
一般社団法人マンション管理業協会は、マンション管理会社の国内唯一の所管団体で、マンション管理会社308社(平成30年3月現在)が協会保証機構に加入しています。
■ 保証が受けられる管理組合
保証機構に加入する管理会社と管理委託契約を締結している管理組合で、かつ管理会社から保証機構に対して届け出のあった管理組合。
■保証の対象となる管理費等
管理組合が毎月徴収している管理費、修繕積立金、各専用使用料等。(一時的に徴収する工事分担金及び借地料、町会費、CATV使用料等は対象外)
■保証する債務
管理会社が倒産等により、管理組合に対し管理費等の返還債務を負うこととなった場合、協会が管理会社に替わって管理費等1ヶ月分の額を限度としてその返還債務を履行するものです。(ただし、管理組合に故意または過失があると認められた場合には、この限りではありません。)
保証対象となった管理組合には、マンション管理業協会から「保証委託契約受諾証明書」が管理会社を通じて交付されます。(下の画像参照)
さて、本記事の違反行為に話を戻すと、
この管理会社は「収納口座」の通帳だけでなく印鑑も預かっていたにもかかわらず、管理費保証制度に加入していなかったため処分を受けたというわけです。
それにしても不可解なのは、
この管理会社のコメントにある「制度変更を管理組合理事長に説明したが、管理費の値上げにつながるため納得いただけなかった。」という発言です。
保証契約を締結できないなら、収納口座の印鑑を預からないという選択肢もあったのに、なぜこの方法に固執しなければならなかったのでしょうか?
しかも、あたかも管理組合にも道義的な責任があるかのような主張ぶりです。
「開いた口が塞がらない」というのは、このようなケースを言うのかもしれません。
<参考記事>