8月2日付の日経新聞に、「所有者不明の空き家問題、マンションでも深刻に 」と題する記事が掲載されていました。
本記事を要約すると、以下のような内容です。
■ 所有者不明の不動産問題は、分譲マンションでも深刻になってきた。今後老朽化マンションが増えれば相続を放棄される部屋が増える可能性も高い。新たなルール整備を求める声もあり、東京都は独自に条例制定の検討に入った。
■ 今年1月、埼玉県内の管理組合の臨時総会にて、24戸のうち3戸の区分所有者の氏名と住所を特定できず、管理費などの滞納が続いていることが報告された。
■ 支払期日から5年近く経過し、支払請求権の消滅時効も迫っていたことから、管理組合は家庭裁判所に対し、不在者財産管理人の選任を申し立てる決議をした。ただ部屋を売却しても、滞納分に見合う売却代金を得られるかは不透明な状況。
■ 所有者不明問題は管理費などが徴収できなくなるほか、管理が行き届かない部屋は周囲の住環境を悪化させ、管理組合の意思決定の足かせにもなりかねない。
■ 管理組合における通常の決議では、区分所有者の議決権の過半数(<筆者注記>総会出席者に対して)の賛成が必要。一方、管理規約の変更・廃止などの重要事項の場合には(<筆者注記>区分所有者全体の)4分の3、建て替えは同5分の4の賛成が必要になる。
■ マンションを解体して敷地を売却する場合は、区分所有者全員の合意が必要になるため、区分所有者不明となればその意思決定はできなくなる。
■ 国交省が管理組合を対象に実施した調査によると、回答した組合のうち、連絡がつかない所有者らが存在する割合は「14%」に達したという。
■ 所有者不明問題の原因は、相続に伴う区分所有権の移転登記がされないのが一因だが、相続そのものがなされないケースも広がっている。管理組合が調査して突き止めた区分所有者の子が相続を放棄したため、管理組合はその部屋の競売手続きを迫られるケースも出ている。
■ 老朽化で資産価値が下がり、管理費も滞納しているマンションは、相続する魅力に乏しく、将来相続放棄されてしまう恐れがある。
■ 東京都は18年3月に「マンションの適正管理促進に関する検討会」を設置し、管理組合に管理状況を5年ごとに行政に届け出てもらう制度の創設や、分譲会社などの事業者に対して管理組合の管理のしやすさに配慮した物件供給に努めるよう求めることなどを議論している。検討会による報告書をを踏まえて、都はそれ条例化を検討するとのこと。
■ マンション管理を充実させて資産価値を保つ取り組みは、所有者不明物件の増加を防ぐうえで大切だ。また、住人による自治を前提とした区分所有法はもはや実態に合わなくなっているとの指摘もあり、現行法の見直しや新たなルールも幅広く議論していかなければならない。
相続放棄に伴う所有者不明問題については、本ブログでもすでに取り上げていますが、今後のマンション管理組合の運営にとってかなり深刻なリスクになるのは間違いないでしょう。
<参考記事>
これには、「区分所有者の高齢化に伴う相続の発生」と「建物老朽化に伴う資産価値の下落」の2つの要因が重なっていることが影響しています。
2017年の国交省による推計値によれば、分譲マンションの総ストック:約644万戸のうち築30年以上が185万戸あり、すでに全体の3割弱を占めています。
その10年後にはこれがほぼ倍増し、352万戸にも達すると予測が出ています。
ヒトの命が有限である以上、相続の発生自体は避けられるものではありません。
ただ、「老朽化に伴う資産価値の下落」については管理組合が主体性を持ち、しっかりとした財政運営を行うことができれば、ある程度食い止めることも可能です。
マンション購入を「ババ抜きゲーム」にしないための対策の「一丁目一番地」は、築浅の段階から長期修繕計画で求められる修繕資金を無理なく賄えるよう、均等積立方式にもとづいた修繕積立金の徴収と運用を行うように「改革」することです。
しかしながら、ほとんど全ての新築分譲マンションは、必要な積立金に対して半額以下の水準しか徴収しないところからスタートしているという実情があります。
これは販売価格の維持を主な目的とする、分譲デベロッパーの「策略」によるものです。
<参考記事>
しかし、修繕積立金をいきなり2倍に増額するのは、さすがに「痛み」が伴います。
これを緩和する方法としてお勧めするのが、「管理コストの適正化」です。
管理組合の主要な支出である、以下の3費目をなるべく早期に適正化することです。
■ 管理委託費〔管理会社に支払う経費)
■ 共用部の電気料金
■ 共用部の損害保険料
分譲デベロッパー系の管理会社の場合であれば、彼らの言い値で管理委託費が決まっているため、かなり割高な金額になっているのが実情です。
これまでの経験から当初決まった管理委託費については3割程度下がる余地があると思います。
なるべく早めにこれを見直し、コスト削減を通じて管理組合の剰余金を増やすことによって修繕積立金の増額リスクを抑えることをお勧めします。
<参考記事>
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