13日付けの日経新聞に、「老朽マンションの情報一元管理、小池知事が所信表明」という記事が掲載されていました。
記事の要約は以下の通りです。
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■ 東京都の小池知事は都議会の所信表明の中で、マンション管理組合に耐震診断の結果などの報告を義務付ける条例を制定する考えを示した。マンションが集中する都内で、行政が踏み込んで老朽化の情報を一元管理する全国に先駆けた試みとなる。
■ 都内には分譲マンションが約5万3000棟ある。このうち、まず管理組合について明確な規定がなかった1983年以前に建設された6戸以上のマンションで報告を義務化する方針。約1万4000棟が対象となる。
■ 小池知事は、老朽マンションについて「管理組合の機能を強化し適正管理を進めるため、条例化も視野に対策を講じる」と表明した。有識者らの検討会などを通じて条例案を詰め、18年度中の議会提出、成立を目指す。
■ 条例は管理組合などを対象に、これまで必要なかったマンションの管理状況の報告を義務付けるのが特徴。都の案では、修繕積立金の状況や大規模修繕工事の有無、耐震診断の結果や空き住戸の割合などを報告させる方向。
■ 施行後の報告状況を見ながら対象マンションを拡大する。例えば、築40年以上経過したマンションを、義務化の対象に順次追加する案が浮上している。
■ 管理組合には新たな負担が生じることになる。ただ、報告ができない管理組合が多数出ることも予想される。都は未報告のマンションには督促や指導を行い、同意を得て必要な調査を実施する考えで、罰則は設けない方向。
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今回、都が管理組合に報告を義務付ける対象としたのは、「管理組合の法的定義がない1983年以前に建てられた約4分の1の物件が対象」としています。
この「1983年以前」の意味するところは一体何でしょうか?
これは過去の法改正と関係しています。
分譲マンションのようないわゆる区分所有建物は、通常の建物に比べて所有関係が複雑で、区分所有者相互の利害関係を調整する必要性が高いため、民法の特別法として「区分所有法」が1962(昭和37)年に制定されました。
これにより、専有部分・共用部分・建物の敷地に関する権利関係の明確化が図られ、規約・集会に関する法制度が整備されたわけです。
しかし、その後分譲マンションが急速な普及に伴い、管理運営に関するトラブルが生じたり、不動産登記事務が煩雑になるなどの問題点が生じたので、1983(昭和58)年に区分所有法が大幅に改正されました。
この改正の際に、区分所有者が当然に管理組合を構成すること、集会での多数決主義、建替え制度、敷地利用権と専有部分の一体化などが定められたのです。
その具体的な規定は1983年の改正によって新設された「第3条」にあります。
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区分所有法<第3条>
「区分所有者は,全員で,建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し,この法律の定めるところにより,集会を開き,規約を定め,及び管理者を置くことができる。」
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この規定によって,以下の3点が新たに明確化されました。
①マンションなどの区分所有建物における区分所有者団体(=管理組合)は,区分所有建物の存立とともに自然発生的に「当然に」構成されること
②その区分所有者団体は,区分所有者の「全員で」構成されること
③区分所有者団体は,区分所有建物並びにその敷地及び附属施設を管理するための「財産管理団体」であること
言い換えれば、「1983年以前」に竣工したマンションの中には、当時の事情から管理組合が設置されていない「既存不適格」のケースもあるということです。
そのため、マンション内に管理組合が設置されて定期的に総会が開催されているか、あるいは管理費や修繕積立金の管理が適正になされているかを行政側も今後は確認したいということです。
さらに、「1983年以前」に竣工したマンションのほとんどは、旧耐震基準の建物であるという問題もあります。(建築確認済証の交付日が1981(昭和56)年6月1日以前の建物は、旧耐震基準のため)
そのため、耐震診断の結果などの報告を管理組合に義務付ける条例を制定するという動きになっていると思われます。
この記事で驚いたのは、「高齢化」が進んでいる都内マンションの実態です。
1983年以前の竣工とは「築35年」以上となりますが、すでに都内のマンションの4分の1を占めているということです。
不動産のリスクといえば、昨今空き家問題が全国的に顕在化していますが、
分譲マンションの老朽化対策や管理不全の問題への対応なども取り組むべき課題として行政が将来直面するのは確実です。
一歩ずつ、確実に、なすべき施策を実行してもらいたいものです。
<参考記事>
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