10月1日付けの朝日新聞に、「相続放棄マンション、積み上がる管理費滞納 価値に影響」という記事が掲載されていました。
記事の要約は以下の通りです。
■ マンションの部屋が相続放棄されたため管理費などの滞納が積み上がり、ほかの所有者に負担のしわ寄せがいきかねない懸念に直面している管理組合を取材した。
■ 神奈川県座間市にあるマンションでは、80代の女性が借金を抱えて孤独死した。管理組合から親族に死亡を伝えたことろ、2カ月後に「相続放棄した」との連絡が来た。その女性は死亡時に管理費等も57万円滞納していたが、その後も滞納額は毎月積み上がっている。
■ 横浜市戸塚区にあるマンションでも、昨年10月に独居老人が死亡したが子どもはおらず、相続人となる親族13人全員の放棄の意思を確認するまで10カ月かかった。管理費の滞納はなかったが、死亡後は毎月2万円余りの滞納が増加している。
■ 相続放棄された場合、裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることになる。財産管理人は物件を売却したお金で滞納分やローンの残額などを債権者に支払い、残れば国庫に納める。
■ ただし、相続財産管理人の選任申立てには数十万円から100万円程度の費用がかかり、物件が売れてもローンの返済などで滞納分を回収できない場合もある。その場合、管理組合は滞納分を損失として処理せざるを得なくなる。
この記事が衝撃的だったのは、
相続放棄の対象となったマンションが、立地条件や築年数の面で特段大きな問題を抱えているわけではなく、どこにでもある普通の物件ということです。
もう一つは、相続放棄が発生した場合には管理組合にとって非常に厄介な事態になるということです。
冒頭の記事にも紹介されている通り、「相続財産管理人の選任」を家庭裁判所に申し立てなければなりません。
「管理人」の資格要件は特にないものの,一般的には弁護士,司法書士等の専門家に有償で業務を委託することになるでしょう。
ちなみに、裁判所のサイトでこの申立てに必要な書類を確認したところ、主なものだけでも以下の通り膨大で、その準備だけでも相当な手間ひまがかかることがうかがえます。
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
・財産を証する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類等)
しかも、こうした手続きを経ても、最終的に管理費の滞納分が回収できないリスクもあるわけです。
今年の6月、相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積は、今や「九州」の面積よりも広い という驚くべき推計結果が、所有者不明土地問題研究会によって公表されています。
低成長経済と少子高齢化に伴う人口減少の影響を受け、「不動産を所有すること自体が善」という従来のパラダイムが大きく転換しつつあるのは確かなようです。
まさに「負動産」の時代にどう備えるか、真剣に考えなくてはなりません。
<参考記事>
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