「オリックスが電力子会社を売却へ」という興味深い記事を見かけました。
その内容を要約すると、
■オリックスが、マンション一括受電サービスを主業とする子会社のオリックス電力を売却することがわかった。
■売却先は6~8月に入札で決める方針で、関西電力など電力大手や都市ガス大手が参加を検討している。
■ オリックス電力は、首都圏を中心に約800棟(約8万世帯)に販売しており、最新の年間売上高は約70億円。
■ただ、オリックス電力単独では事業拡大が難しいと判断した。売却額は数百億円になりそうだ。
その後、このオリックス電力の事業売却の背景について下記のような観測記事も出ています。
この記事の内容は、ざっとこんな感じです。
■2005年の電気事業法の改正に伴い、50KW以上(※およそ50戸程度のマンションの規模に相当)の高圧電力が自由化の対象となった。
■そのため、マンションでの高圧一括受電サービスの提供を目的としてオリックスも20子会社を設立して参入し、一気に事業を拡大した。
■しかしながら、2016年4月の「電力小売りの完全自由化」後はこの事業を発展を継続させるのは難しくなることが予想される。
■小売りの完全自由化によって、各家庭をはじめとする小口利用者も自由に電力会社を選べるようになったため、すでに一部の住民が新電力などに契約先を切り替えている場合、管理組合が新たに高圧一括受電を導入することに対して反対するものと考えられる。
■その場合、一括受電実現の要件として全戸同意を得ることが必要なため、今後はマンション全体として高圧一括受電を実現することが難しくなると予想される。
■オリックスの撤退を契機に、今後高圧一括受電事業者に対する融資や投資が厳しくなり、資本力のない同業者の倒産も予想される。
■仮に事業者の倒産に見舞われると、マンション内の変圧器は債権者によって差押えされることになり、債権者の意向によっては電力供給がストップすることもあり得る。
もともと2005年に始まった高圧一括受電自体が、電力自由化の「はしり」的な存在だったわけですが、昨年の「完全自由化」によって一般の家庭を含む小口利用者も自由に電力会社を選べるようになってしまいました。
それがいわば「パンドラの箱」を開けた格好になり、マンション管理組合が一括受電の合意形成をすることを難しくしています。
と言うのも、一括受電の導入には(区分所有法で定める)総会の承認決議を得るだけでは足らず、電気事業法の定めにもとづき「現受電契約の解約のための同意書を全住戸から回収する」ことが必要だからです。
言い換えれば、総会決議で過半数の承認を得られて機関決定できたとしても、全戸分の同意書がないと東電などの地域電力会社が一括解約を認めてくれないのです。
そのため、昨春の自由化後に新電力等と契約した住民は、一括受電に反対する可能性が高いと推測されるので、全員分の同意書が集めるのが困難になるというわけです。
ただ、上の記事の後半部分にある、一括受電業者の倒産 ⇒ 債権者の意向による電力供給停止のリスク という部分はやや煽りすぎの印象を受けます。
オリックスも今後の事業拡大は難しいと判断したからこそ今回売却方針を選択したかもしれませんが、本事業の安定性・採算性自体は決して悪くないと考えられるからです。
<「マンション一括受電サービス」のイメージ図>
高圧で受電することによって、マンションの各住戸の電力を定価に比べておよそ3割安い料金(大口価格と小口価格の差額分)で仕入れることができます。
たしかに事業会社には変圧器等の投資とそれに伴う償却負担はありますが、管理組合に(電気料金の値下がり分の)一部を還元したとしても10数年で初期投資を回収できるように仕組んでいるはずです。
しかも、変圧器の平均耐用年数は38年と言われています。つまり、初期投資の回収後20数年間は電気料金の差額マージンを享受できることになります。
さらに、このサービスは、マンション共用部のほかに各住戸の電気料金の出納・請求も毎月実施する業務の収益も長期にわたって得られます。
その意味で、この業界も全体のパイの成長が乏しくなることに伴って優勝劣敗が進み、今回のオリックスのような事業譲渡による「合従連衡」が進んでいく可能性が高いと思います。
<参考記事>
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