国交省の標準管理規約には、専有部分の用途として「専ら住宅」制限を設けていますが、これに倣ってほとんどのマンションも規約を定めているのが実情です。
しかしながら、すでに昨今民泊やシェアハウス等での活用が議論を呼んでいるように、この「専ら条項」にどこまでの効力があるのかが怪しいわけです。
<参考記事>
たとえば、管理規約上は住宅兼事務所まではセーフとなっているものの、その「事務所」の業種・業態によって来客の有無あるいはその多寡はさまざまで、どこまでを許容するのかという「線引き」は結構難しいものがあります。
そんな中、11月3日付の産経新聞では、大阪の某タワーマンションの管理組合において、専有住戸の使用方法を巡って区分所有者との間で裁判にまで発展する事件となった記事が出ていました。
この裁判の判決内容(ただし一審)が興味深かったので、記事をご紹介します。
記事を要約すると、以下の通りになります。
■ 繁華街にある30階超のマンションの管理規約では、専有部分を「住宅または住宅兼事務所(いわゆるホームオフィス)として使用する」と規定していた。
■ さらにその使用細則では、「店舗使用の禁止」も明記しており、不特定多数の人の出入りがあったり、会員等の特定の人間が訪れるようなケースもNGとしていた。
■ ところが、区分所有者の中に婚活業者がおり、その事務所には約1週間で約70人の来訪者があったため、組合側は規約や細則を遵守して営業を中止するよう警告した。
■ これに対して、婚活業者は裁判所に調停を申し立て、管理組合との間で以下のような調停条項がまとまった。
・婚活業者は、マンション内で来訪客のある窓口業務一切を中止することを約束する。
・と同時に、業種の如何にかかわらず、来訪客のある窓口業務を行った場合には例外なく管理規約や使用細則に違反するものとする。
■ ただ、その後も両者のトラブルは解決しなかった。婚活業者を訪れる毎月の来客数は以前月間50人を超え、窓口業務を縮小させようとする兆しが見られなかったからだ。
■ 管理組合からの警告に対して、婚活業者は「他の区分所有者の事務所が規約や細則を順守しているかどうかを説明せよ」と組合側を牽制した。
■管理組合は「他の事務所などにも個別の連絡をしながら改善対応の要請に当たっている」と回答したが、婚活業者側がこれに納得せず、「管理規約や使用細則が区分所有者間に公平かつ平等な方法で運用されていない」と主張した。
■ 今年9月にあった一審判決では、婚活業者の主張が認められて勝訴した。
■ 管理組合が他の事務所として使用する他の区分所有者に対し、細則を遵守するようどんな措置を講じたのか明らかでない以上、婚活業者だけを相手取って訴訟を起こしたことは「権利濫用に当たる」と裁判所は管理組合を批判した。
今回の判例から窺える判断の基準とは、
単に、当該区分所有者が規約や細則を違反しているかどうかでは十分な対応とは言えず、管理組合がこれらルールの運用に際して当該区分所有者と他の区分所有者とを同等に取扱っていることも求められている、ということでしょう。
つまり、実際の管理規約の運用はグズグズに緩いのに、特定の区分所有者だけに厳格に遵守を求めるような「差別的対応」は認められない、ということです。
これを言い換えると、「他の違反者を見逃すなら、自分も見逃せよ!」と主張したら通っちゃったみたいなケースですが、今回のように「規約」でなく「法律」の運用なら当然認められないのでしょうね・・。
ただし、今回の判決でまだ確定したわけではありません。
この事件に今後どのような決着がつくのか、続報に興味津々です。
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