マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

電子ブレーカーの導入ができないマンションの事情とは?

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マンション共用部の電気料金を下げる方法は、以下のとおり3つのアプローチがあります。

  1. 消費電力量を抑制する方法

  2. 電気料金の単価を下げる方法

  3. 電気の基本料金を下げる方法

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

「基本料金を下げる方法」として代表的なのが、電子ブレーカーの導入です。

 

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マンションの場合、一般的には共用部の設備のモーター容量の合計(KW)を契約容量とするため、その稼働状況や使用電力に関係なく最大電力値での契約(負荷設備契約)となってしまいます。

 

その結果、共用設備の稼働時間は総じて短時間なのにもかかわらず、基本料金が割高となってしまうわけです。

ところが約10年前の電気事業法改正によって、実際の設備稼働時にブレーカーに流れる電流をもとに使用電力を決定し、ピーク時の電力は使わないという契約(主開閉器契約)に変更できるようになったのです。

 

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それによって契約電力の水準が下がり、その分基本料金も下がるというわけです。


ただし、それには共用部に電子ブレーカーを設置し、実際に流れる電流値と設備の稼働時間の両方を計測できるようにする必要があります。

もっともこの電子ブレーカーの設置工事の代金(30万円台)は、毎月の基本料金の削減額が大きい場合には2,3年でその費用を回収できてしまいます。

 

特に、エレベータや機械式駐車場など設備機器の多いマンションほど効果的であるとともに、高圧一括受電するまでのメリットがない比較的規模の小さいマンションに適しており、基本料金が下がるという意味では確実なコスト削減方法というわけです。

 

ところが、マンションによっては設備上の問題で、電子ブレーカーの導入ができない事例もあることがわかりました。

 

先日、関西エリアにある30戸のマンションで現地調査した際に、動力設備と消火設備の配線が現在一つの系統で繋がっていることが分かりました。

 

実は、このようなタイプのマンションはかなり少数派で、通常は消防と他の設備は別系統で配線している方がはるかに多いのです。

 

このタイプの場合、電子ブレーカーの導入がなされた後、何らかの事情でブレーカーが故障すると消防設備を含む全体が使用できなくなる恐れがあります。

 

そのため、消防法上の制限によって両者の系統を切り離す工事が必要となるわけです。(※)

 

※非常電源専用受電設備は、他の電気回路の開閉器又は遮断器によって遮断されないことが必要なため。(消防法施行規則)

 

しかしながら、もう一つ問題があることが分かりました。

関西電力の所管エリアでは、本年4月以降は消火設備と他の共用設備を別系統で受電できなくなったのです

 

そのため、このマンションで電気系統の分離工事をすること自体が現時点ですでに不可能になってしまったため、電子ブレーカーの導入は断念せざるを得ませんでした。

 

実際にはこうした珍しいケースもありますので、ご検討の際には必ず現地調査を行うようにしてください。

 

 

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