先日、顧問先である某管理組合からの依頼で「電力の自由化と一括受電に関する基礎知識」についてプレゼンしてきました。
この管理組合では、一昨年から一括受電導入を検討していますが、いわゆるサービス業者のスキーム以外にも選択肢があることを伝えたところ、ゼロベースで仕切り直すことになったという経緯があります。
いよいよ来春に迫った「電力小売り自由化」とそれに伴い予想される影響を踏まえて、マンション管理組合の一括受電にどのようなメリットやリスクがあるのか、小一時間ほど説明しました。
その後役員との質疑や意見交換があり、今後は具体的な経済条件などがどうなるかを検討していくことになりましたが、管理組合が乗り越えなければならないハードルが大きく3つあります。
1)全員合意の取付け
たとえば管理委託契約や管理会社の変更について総会決議を取る場合には、総会出席者の過半数の賛成があれば承認され、それが機関決定として有効に成立します。
しかし、一括受電の場合、たとえ総会承認による機関決定ができたとしても、各専有住戸の受電契約に関する解約の同意書は全員分が必要です。
一部の区分所有者が何らかの理由で反対してこれに同意しない限り、一括受電は実現できないのです。
2)一括受電に対する正しい理解
一括受電とは、管理組合で電力をまとめ買いすることで電気料金の負担が下がるというベネフィットを享受することが目的です。
ただ、実際のスキームの詳細や、新たなリスクやデメリットなど現状から変化する点について正しく理解できている方はほぼ皆無と言ってよいでしょう。
しかも、マスメディア上でも多数の誤った情報が氾濫しているのでなお厄介です。
正しく理解できない、すなわち住民間で様々な誤解が生じやすいため、管理組合の中のコンセンサスに時間がかかることになります。
【参考記事】
3)電力小売り自由化を控えたタイミング
来春に小売りの自由化が実現した後、これまで規制されてきた電力料金が実際どうなるのか、これは誰も分かりません。
一括受電による経済的メリットの源泉は、現時点で約3割ある「高圧料金と低圧料金の価格差」にあります。
自由化によって、この価格差に影響が出るかもしれません。たとえば高圧よりも低圧価格の方が大きく下がり、両者の価格差が縮小する可能性もないとは言えません。
変圧器の償却や、使用量の検針から料金請求までの業務のコストを考慮すれば価格差が消滅することはあり得ないでしょうが、今の価格差が変わらない保証はどこにもありません。
そのため、小売りの自由化後の動向を見極めたうえで検討する方が安全ではないかという意見も出てくるでしょう。たしかに、それも一理あります。
ただ、自由化に伴い様々な異業種が参入し、たとえばガスや携帯電話とのセット販売のような新たなメニューが登場することはほぼ間違いありません。
その場合、各住戸で低圧のままそうした新サービスに切り替えればそれが既得権となるため、新たに管理組合で電力をまとめ買いすることが困難になるおそれもあります。
管理組合としては、自由化になるまでに一括受電のメリットとリスクを整理したうえで、組合単位でまとめ買いするのか、従来通り各住戸で契約するのかについて方針を決めておくことが望ましいと思います。
どうも有り難うございました!
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