日新火災海上保険が、7月1日付けで、今年10月からマンション管理組合向けの火災保険「マンションドクター火災保険」の販売を開始すると発表しました。
最大の特長は、同社が業務提携する日本マンション管理士会連合会(日管連)が実施する「マンション管理適正化診断サービス」の診断結果に応じて保険料が決まるしくみを導入した点にあります。
つまり、日管連による診断結果が良好な場合には「割安な保険料」で加入できるというわけです。
本件については、商品化が発表された今年2月にも本ブログで感想を述べさせてもらいました。(下記参照)
管理組合にとっては、築年数の経過だけで「十羽一絡げ」に低く評価されたために保険引き受けがなされなかったり、高い保険料の負担を強いられることへのアンチテーゼとしての意義があり、商品コンセプト自体はとても良いと思っています。
ただ、この商品が良い意味で今後どこまで影響力を持ちうるかは懐疑的にならざるを得ません。
<理由 その1>
ユーザーである管理組合自身が無関心です。そもそも管理組合がどのような種類の保険に加入し、毎年いくら保険料を負担しているかを正しく認識している理事さんは皆無に近いと思われます。
要するに、どのように集客するかが最大のハードルになるはずです。
<理由 その2>
管理状況診断の結果が良好な場合、自社比較で2,3割保険料が下がる可能性があるとのことですが、そもそも同じマンションでも各社の提示する保険料や免責の範囲などは相当の開きがあるのが実情です。
日新火災の競争力や契約獲得の意欲がどの程度かは分かりませんが、現状の保険料の水準がメガ損保に比べて割高だとしたら、たとえ管理状況が良好なマンションでも割安感を出せない可能性もあります。
また、それ以前の問題として、保険各社の相見積りをとって比較検討する機能が管理組合に備わっているのでしょうか?はなはだ疑問です。
<理由 その3>
日管連の診断サービスは「無料」とのことですが、日管連のホームページを覗いても診断報告の内容について具体的なイメージは何も提示されていません。いったいどこまで踏み込んだ診断を、しかも親切なことに「無料」でやってくれるのでしょう?
見る人が見れば、ほとんどのマンションは管理委託費が割高な一方、修繕積立金は将来不足するリスクを抱えていることが判明するはずですが、そうした財政上の問題点は保険料の判定にネガティブな方向に働かないのでしょうか?
逆に、建物のハードウエアの状況が今まで良好だから診断結果もマルになる程度なら、別にマンション管理士に依頼するしくみまでは不要であり、保険代理店でも代行できそうです。
今後このような商品が評価され、世の中に普及するには、まず専門家の診断結果と事故・故障などの発生リスクが高い確率で相関することが不可欠です。
そのためにも、日管連は対外的にも説得力を持つ診断レポートの具体的な内容を示すとともに、日新火災以外の保険会社にも提携先を拡大できるよう努めることを期待したいと思います。
どうも有り難うございました!
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