マンションの一括受電については、新築を中心に導入事例も急速に増えているため、関心を持つ管理組合も多いのですが、正しい知識を得る機会が少ないのが実情です。
実際、大手新聞社の記事を読んでも本質をよく理解できていないと感じることがあります。(過去記事を参照ください)
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そこで、管理組合の方にから日頃よく尋ねられる事項をもとに、一括受電のしくみやスキームの選択について知っておくべきポイントをFAQ形式でまとめてみました。
#1 なぜ一括受電すると電気料金が下がるのか?
高圧と低圧の価格差を利用するからです。
これまで低圧で受電していた電気を、高圧で受電することによって、およそ3割電気料金が下がるのです。(高圧料金:約25円/kwh、低圧料金:約17円/kwh ※実際の料金体系はもっと複雑です。大まかな目安とお考えください。)
言い換えれば、管理組合が従来より3割安く電気を仕入れ、それを各住戸に高く(低圧料金で)売ることで管理組合が儲かるというわけです。
#2 なぜそのようなことができるのか?
電力自由化によって規制が緩和されたためです。それ以前は、大規模な工場等の大口ユーザーでないと高圧で受電することはできませんでした。
ところが2005年の法改正で、受電容量が50kwh以上のマンションも高圧で受電できるようになったのです。
その結果、管理組合の単位で大口ユーザーとなり、電力会社と契約できるようになりました。
#3 高圧で受電するために何をしなければならないのか?
マンションの共用部にある電気室が電力会社の借室(無償提供)の場合、電力会社が変圧したうえで共用部と各住戸に低圧の電力を供給しています。
その電気室にある変圧器(トランス)は電力会社の所有ですが、これを撤去して管理組合の負担で新たに設置すれば、電力会社と高圧契約を結ぶことができます。
この他、各住戸に設置されている検針メータやブレーカーも電力会社の所有物なので、管理組合の負担で新たに設置することが必要です。
もう一つ重要なことがあります。それは電気使用量の検針と電気料金の出納請求の業務です。
これらは電力会社が行っていた業務ですが、高圧契約に変更すると管理組合自らがやらねばならなくなります。ただし、外部に委託することは可能です。
#4 高圧受電する場合に管理組合が負担する金額はどの位か?
100戸のファミリータイプのマンションで2000万円前半くらいが目安になります。
なお、変圧器はおよそ25年~30年くらいの耐用年数となります。
また、変圧器については定期保守点検が必要となります。特に3年毎に1時間程度の停電による点検が必要なので、留意が必要です。
#5 最初の設備投資の負担が重い。他に方法はないのか?
あります。
一括受電サービス業者の場合、上記に挙げた必要な設備類をすべて提供してくれるほか、検針から出納請求業務、設備の保守点検までやってくれます。(下図参照)
#6 サービス業者と契約するスキームはどうなるのか?
一般的には、以下のようなスキームが多いと思われます。
①10~15年の契約で、中途解約はできない。
②検針から出納・請求業務、設備保守点検まですべてお任せ。
③共用部の電気料金が下がる。(※規模等によるが、20%~40%。)
#7 サービス業者のスキームと、管理組合が設備を保有する場合の最大の違いは?
サービス業者は、変圧器等の設備を自ら投資しますから、設備償却費を負担しなければなりません。その投資を回収するため、#1で得られる電気料金の価格差の多くの部分を収受するしくみになっています。(ただし、内訳は通常開示されません。)
仮に管理組合への還元が共用部分の電気料金の30%だとした場合、専有部分の電気料金の価格差で得られる収益については、サービス業者がすべて収受することになります。
たとえば100戸のマンションで、共用部分の電気料金が年間300万円とすれば、その30%の90万円/年が管理組合に還元されます。
しかし、各部屋の使用料金が平均月1万円だとすると、@1万円×30%×100戸×12ヶ月=360万円/年の差益をサービス業者が得ることになります。
#8 サービス業者との契約期間が終了したら、組合で直接一括受電できるのか?
もちろん可能です。
ただし、解約に際して既存設備の撤去をするための費用を負担したうえで、新たに設備を購入することになる可能性が高いと思われます。
#9 一括受電するには全員の同意が必要なのか?
まずは、管理組合全体としての機関決定が必要です。一括受電の導入に際しては規約の変更が伴うケースも多いため、その場合には特別決議事項となり、区分所有者等の4分の3以上の賛成が必要となります。
組合決議を経た後、受電先を変更する前に、各住戸が電力会社との契約を解約しなければなりません。その同意書が全戸分必要です。
したがって、最終段階で手続きが滞ることがないよう、組合で決議する以前の早い段階で、組合員に一括受電のメリットとデメリットをしっかり理解してもらう努力が必要と言えます。
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