マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

なぜ管理組合の業務から「コミュニティの形成」が削除されるのか?

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管理組合の活動と自治会(町内会)活動に一線を画すため、新たな標準管理規約では管理組合の業務から「居住者間コミュニティの形成」の文言を削除しようという提案が国交省からなされています

#1 コミュニティ形成業務削除の経緯

それが議論されているのは、国交省の他に、学識経験者、デベロッパー、管理会社、マンション管理士等が委員として参加している「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」です。

 

この委員会の配布資料から、提案の経緯を要約すると以下のようになります。

◆管理組合の運営において、自治会費が管理費等とともに事実上強制徴収されている実態が多く見られる。


◆しかしながら、管理組合と自治会はそれぞれの目的・性格や構成員、加入義務の有無等の違いが明らかなのにもかかわらず、半ば渾然一体化して運営したために管理組合内で内紛や訴訟に発展したケースもある。

 

◆こうした過去を教訓に、管理組合における自治会的な活動に関する取り扱いについて今般見直すこととなった。

◆ついては、標準管理規約の第27条(管理費)及び第32条(組合業務)から、「地域コミュニティの形成に配慮した居住者間のコミュニティ形成」を削除したい。

なお、検討会の資料には以下のような補足的なコメントも記載されています。

「今回の見直しは、管理費の支出をめぐり意見の対立、内紛、訴訟等の法的リスクがあるという法律論にもとづくものであり、政策論としてマンション内のコミュニティ活動を積極的に展開することを否定しているものではない。」

「マンション管理と自治会活動の定義・範囲を整理し、費用の徴収と支出を区分して適切に運用するならば、居住者間のコミュニティ形成や周辺地域とのコミュニティとの円滑化は積極的に行われることが望ましい。」

 

つまり、マンション内のコミュニティ形成を決して軽視しているわけではない点に留意すべきでしょう。

 

#2 管理組合と自治会の違いとは

両者の違いについて、改めて整理しておきましょう。

(1)構成メンバーと加入義務の違い

・管理組合   :区分所有者による強制加入制の団体

・自治会(町内会):地域内の居住者による任意加入制の団体

 

(2)目的の違い

・管理組合:各区分所有者が共有する財産の管理について規約を定め、日常の維持管理、建物・設備等の修繕などの資産管理を適正に行うこと。


・自治会 :居住者相互の親睦や、防犯・防災等の共助を図ることを目的とする、地縁性をもつ団体。

 

このように、管理組合を「共有財産の管理団体」、自治会は「居住者間の親睦や共助推進を図る団体」と分けることができます。

 

性格も目的も異なる団体の業務を兼ねたり、運営費用を一括で徴収することに違和感を持つ人がいても無理はありません。

 

#3 区分所有者=居住者タイプが「管理組合のスタンダード」ではない

マンションと一口に言っても様々です。ファミリータイプの新築マンションでは、自らが居住する目的で購入するケースがほとんどのため、「区分所有者=居住者」の方が圧倒的でしょう。

 

このような場合、管理組合の業務として理事が自治会活動も兼務した方が効率的ですし、分かりやすいのはよく分かります。

 

しかし、老朽化物件や投資マンションはどうでしょう?外部の区分所有者として第三者に賃貸するケースの方が自己居住タイプよりも多いことも少なくありません。

 

長期にわたる組合の運営の中で、前者が果たしてスタンダードと言えるのでしょうか?

また、外部所有者が居住者間のコミュニティ形成に取り組むことが果たして期待できるのでしょうか?

 

#4 人が集まって住まう空間である以上、コミュニティ活動は大切

 マンションの「価値」っていったい何でしょう?それを決めるのは何もその建物や設備のようなハードウエアの質だけではありません。

 

居住者間の円滑なコミュニケーションがあり、かつ適度な互助関係を維持している方が永く住みたいと思われるのは当然で、そのようなソフトウェアの価値も加わることでトータルな居住価値の維持に貢献できるのでしょう。

 

ではそれを誰が担うのか? もちろん、第一には居住者自身で、管理組合はそれをサポートする役割なのではないかと思います。(たとえば、集会施設や防災用品の提供などは管理組合の業務と言えるかもしれません。)

 

大規模マンションの中には、施設の使用や費用の負担をめぐって、自治会と管理組合の間で対立が生じているケースも見られます。

 

分譲マンションに住む区分所有者は、オーナーと居住者の2つの立場を使い分けるだけでなく、管理組合と自治会の活動が円滑に連携できるよう努めなければならないでしょう。

 

なので、戸建てよりもマンション住まいの方が気楽ということは、ないですね。

 

どうも有難うございました!

 

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