東日本大震災後に電気料金が上昇して管理組合の収支が悪化したことから、光熱費削減を目的とした一括受電が分譲マンションで普及しつつあります。
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しかし、管理組合の理事さんたちとコンサルティングの現場等で話してみると、一括受電の本質がほとんど理解されていないことが分かります。
なぜか?それには理由があります。
現在普及が進んでいる「マンション一括受電」は、実は管理組合が一括受電していないからです。
# 一括受電している主体は誰なのか?
高圧で一括受電する主体は、サービス業者(中央電力、オリックス電力など)です。
サービス業者が東京電力などからマンション内の電気室を引き継ぎ、自らの変電設備(キュービクル)を新たに設置します。(下図参照)
サービス業者は、マンションの共用部だけでなく専有住戸すべての電力を賄うため、東京電力など地域電力会社と大口契約を結んで高圧で受電します。その際の買電価格は低圧と比べておよそ3割も安くなります。
そして、大口契約(高圧)で仕入れた割安な電気を、変電設備を経由して共用部や専有住戸すべてに低圧で配電することになります。
その際、サービス業者は3割安く仕入れた電力を管理組合に売電することで長期間にわたって収益を稼ぐことができます。ただし、従前の電力会社よりも電気料金を安くすることで管理組合にメリットを一部還元するわけです。
発電や送配電は東京電力など地域電力のままで、従前と変わりはありません。電気室内で変圧するのがサービス業者に変わっただけのことです。
それに加えて、メータ検針から料金計算、出納請求までの業務も地域電力会社からサービス業者に変更されるので、そうした経費は実質的には管理組合の負担となります。
要するに、一括受電するのは管理組合ではなく、あくまでサービス業者なのです。
# 管理組合のベネフィットは適正なのか?
さて、このようなスキームでサービス業者と契約をした場合に、もっとも注目すべきは電気料金の削減メリットの大きさでしょう。
マンションの規模等にもよりますが、多くの場合、「共用部の電気料金の40%削減で還元する」と提案することが多いようです。
これだけを聴くと、結構大きなメリットに感じるかもしれません。
しかし、これを共用部分でなく各専有住戸への還元を選択した場合はたったの5%の削減にしかなりません。
言い換えれば、専有住戸すべての電気料金の合計は共用部分の8倍にもなるということです。
ただ、それより重要なのは、高圧と低圧価格の差はおよそ3割もあったはずなのに、一括受電後の管理組合への配分は、かなり減ってしまうということです。
<組合が事業者となる場合> <サービス業者の場合>
そして、この両者の差が一括受電への切り替えに伴うコストの負担と、サービス業者の利益になるわけです。
一括受電に伴い、管理組合が負担すべき経費としては、以下の費用項目があります。
◆設備償却費(変電設備のほか、各住戸の検針メータ、アンペアブレーカー)
◆設備保守点検費用(電気主任技術者による定期点検)
◆電気使用量の検針、電気料金の出納・請求業務費用
これらの経費さえ把握できれば、サービス業者の利益も推測が可能になります。
しかし、サービス業者はこれらを一切開示しません。開示されるのは、結論だけ。つまり管理組合に還元する金額だけです。
なので、サービス業者の利益がはたして適正なのかを判断できる管理組合はいないでしょう。
しかし、これを判断する方法が一つだけあります。
それは、自らが事業者となって変電設備等を保有するスキームです。初期投資の負担は伴うものの、出納請求などの日常の業務は外注することは可能です。逆に言えば、これこそが本当の意味での高圧一括受電というわけです。
⇒<参考サイト>マンション電力見直し隊
もちろん、こちらのスキームにもリスクや短所があります。両者の比較検討こそが管理組合としてのより正しい判断を下すための必要なプロセスだと考えます。
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