マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

管理会社に「提案力」を期待できるか?


9月24日付のハフィントンポストに下記の記事が投稿されていました。

提案力が求められるこれからのマンション管理業

本記事は、おおよそ以下のように要約されます。
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管理会社選びは、コストより管理の質を重視すべき

相見積もりなどで安い管理会社を選ぼうとすると、「安かろう、悪かろう」になるリスクがある。

理サービスの標準化と管理費の相場観形成は進んでいる

最近は管理に関する情報も増え、住民の関心も高くなったため、不要なサービスや法外な管理費は提示されにくくなっている

これからのマンション管理では、新たな課題が目白押し

今後は、住民の高齢化対応、良好なコミュニティ育成支援、防災・危機管理対策、管理組合員への情報配信などが求められる。

これからの管理会社に求められるのは長期的な視点での「提案力」

工事の専門会社には真似のできない、資産価値を引き上げ、生活利便性や快適性を高めるような魅力的な提案をすべき。

たとえば、太陽光発電装置の設置、耐震補強、ゲリラ豪雨対策、高齢者見守りシステムの導入、高圧一括受電による電気料金引き下げなど。
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この記事に対して、2つ意見を述べたいと思います。

1つは、「管理費の相場形成」についてです。

たしかに管理費の相場としては、新築物件のデータを見る限り平均で月額210円(専有床m2あたり)というデータも存在します。

ただ、それが管理委託費の妥当性を立証しているわけではありません

日々コンサルティングをしている立場から言えば、ほとんどの分譲マンションにコスト見直しの余地があります。

少なくとも2割~3割程度は割高です。

まして、管理組合が管理委託費の個々の費用について一定の相場観を持っているようなことは皆無と言えます。

その理由は、カンタンです。


新築当初に管理組合が自らの判断で管理会社を選択していないからです。

複数の選択肢の中から選ぶという手続を経ていれば、ある程度の相場観は把握できるかもしれませんが、それを経験する機会がありません。


また、管理費自体の水準が妥当だとしても、管理費会計には駐車場使用料などの「その他収益」も加算されており、その収益全体で割高な委託費を賄っているケースもあります

これは、総会議案書の収支決算を読めばすぐに分かることです。

残念ながら、本記事は管理費と管理委託費の概念の違いに対する理解が不十分と言わざるを得ません。


2つ目は、「管理会社の提案力」への期待に関する部分です。


管理組合にとって新たな課題が目白押しであることは記事の通りであり、何ら異論をはさむ余地はありません。


ただ、管理会社にその解決の役割を望むのは難しいでしょう。

理由の第1は、管理委託契約の内容です。

管理委託契約書には、委託金額の前提となる管理仕様が記載されています。

建物維持管理や理事会・総会の運営補助対応などは、仕様の中で定められていますが、高圧一括受電や高齢者対応に関する提案まで要求するのは酷でしょう。

この仕様以外のことを求めるのであれば別にコンサルティング契約を締結するなどして相応の報酬を管理会社に支払う必要があります。


理由の2つ目は、管理会社に深く染みついた「業者」としての精神構造と行動パターンによるものです。


管理組合となるべく利益が相反しないよう立ち振る舞えないと、本当の意味で「提案力」を駆使することはできません

提案力を持つこととは、すなわち管理組合のパートナーになるのと同じことです。

しかし、業者にパートナーの役割は務まらないというのが私の持論です。

逆に言えば、コンサル契約もなしにそのような提案をしてくる管理会社には慎重に対応した方が良いと思います。

そのような場合は、たいてい自分たちの利益になるような誘導をするからです。

修繕工事、LED照明の導入、高圧一括受電の提案などを管理会社が自主的にしてくる場合は、グループ会社を含め自らが元請けなど立場を独占するか、業者からバックマージンを要求しているなどの事情があると考えたほうがよいでしょう。


ただ、マンション管理業界として提案力が求められているのは、まったくの同感です。


提案力も兼ね備えたパートナーのポジションを獲得できるよう、マンション管理士として日々精進していきたいと思います。

 

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