マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

法改正でマンションの建替えは進むか?

 

老朽化マンションの土地・建物の一括売却に必要な区分所有者の合意要件を緩和する建て替え円滑化法の改正案が、18日の参院本会議で可決、成立しました。

一度建てられたマンションは、老朽化しても改修するか建て替えするしかなく、管理組合を清算して土地を一括売却することは事実上不可能と考えられていました

と言うのも、既存のマンションを取り壊した後の敷地の処分については、区分所有法の適用がなくなり、民法の定めに従う必要があるからです。

つまり、「共有物の処分は共有者全員の同意を要する」ことになり、区分所有者全員の賛成を取り付けなければならず、建替え(5分の4の賛成が必要)以上にハードルが高い要件をクリアしなければならないのです。

しかしながら、建て替えが必要な時期を迎えても、現実には一向に進んでいないという現実があります。

全国約590万戸の分譲マンションストックのうち、旧耐震物件は約106万戸あると言われています。そのうち、建て替えが実現したのはたった1.4万戸、1%強に過ぎません

その大きな障害の一つが、資金問題です。

修繕積立金でさえ足りない状況が一般的なのだから当然ですが、建て替え資金を耳を揃えて用意できる管理組合はまずありません。

公団の大規模団地なら、余剰容積をデベロッパーに売却して資金を調達できますが、その恩恵に与かれるマンションはごく一部に過ぎません。

建替え工事費に加えて、仮住まい用の家賃や往復の移転費などを含めると1千万円単位の資金が必要になります。

同じマンション内でも、区分所有者の経済力も様々な中、合意形成は容易でないことは窺い知れます。

そこで新たに考え出された制度が、この「マンション敷地売却制度」です。

耐震性不足の認定を受けること、敷地を買い受けるデベロッパーの認定等が条件になりますが、区分所有者の5分の4の賛成があれば敷地を売却できるようになります。

買受人(デベ)が、マンションを建て替えた暁には、元の区分所有者がそのマンションに再入居する選択も可能です。

そして、この法改正には、もう一つの目玉があります。それは、「容積率の緩和」です。

一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては、行政庁の許可を経て容積率の緩和措置が受けられることになるのです。

緩和の幅はまだ不明ですが、およそ50%増になるのではと言われています。

容積率の緩和が受けられれば、従前に比べて敷地が高い価格で売れるため、区分所有者の承認が得やすくなるでしょう。

「市街地環境の整備・改善に資する」との認定については、まだ明確な要件が決まっていませんが、建て替え後に食料の備蓄や非常用発電のための倉庫を設置したり、災害時に一時避難所として提供するなどが条件になると言われています。

地域の防災力向上に貢献することで、建物が大きくなる容積率の緩和に対する周辺住民の理解も得やすくなるという理屈です。

ただ、容積率緩和については、実際にどこまで実現が可能かは、正直微妙なところです。

というのも、建築基準法前面道路の幅員や北側の隣地への日影規制等が、消化できる容積率に大きな影響を及ぼすからです。

また、たとえ法的な規制はクリアできていても、近隣住民の反対があれば行政も容易に許可できないでしょう。

とはいえ、改修か建替え以外に選択肢のなかった管理組合に「第三の道」が開かれつつあることは確かなようです。

 

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