マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

インフレのご時世でもマンションの管理費を下げられる理由

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11月12日付けの週刊現代ビジネスに、「高額化するタワマンの管理費、放置しておくとこんなに資産価値が下落する!」と題した記事が掲載されていました。

 

gendai.media

本記事の要約は以下の通りです。

■ なぜ管理費は高くなってしまうのか?「管理会社」が絶対に知られたくない「闇」について、マンション管理のからくりを知り尽くす3人(マンション管理士、住宅ジャーナリスト、元管理会社社員)が座談会を行った

■ タワマンの管理費が高騰している。70平方メートルくらいの物件で、3万円近い金額になっている。

■ おかしいのは、同じ管理会社のほぼ同様のサービスのマンションでも物件によってはかなりの違いがあること。

■ たとえば、都心の駅直結の高級タワマンの「Sタワー」は2つのラウンジに加えて、ゲストルームやワーキングルーム、ジムなど多彩な共用施設を誇るが1平方メートルあたり210円程度。

■ 一方、この物件を管理する大手財閥系管理会社が管理する別のタワマン「Pタワー」は1平方メートルあたり約430円で、その差は2倍以上になっている。

■ 実は「Sタワー」は理事長が管理委託費をはじめとする支出を見直す改革を実現したマンションである。

■ 管理会社の収益源は、管理組合が集めた管理費と修繕積立金などの維持費なので、根本的には割高なサービスほど管理会社が儲かるという利益相反の関係にある。性善説を信じて管理会社に任せっぱなしだと損をすることがある。

■ マンションの管理・維持費を高いまま放置すると、最終的には資産価値に悪影響を与えてしまいかねない。実際、中古マンションの市場を見ても相場よりも安く感じる物件は多くの場合は維持費が高い。

■ これは単純な理屈で、管理費と修繕積立金の合計が同等の物件より2万円高いとすると、ローンを組む35年間で840万円も支払いが多くなるからだ。

■ それでは、マンションの維持費、とくに毎月の管理費は「下げられるのか」といえば、答えはYES。とくに値下げに応じてもらいやすい物件は、分譲後一度も管理委託費の減額交渉が行われていないケース。

竣工後の管理会社は無競争のまま分譲会社の系列子会社に決まっていることがほとんどだ。親会社の収益確保のため、割高な随意契約になっていることも多く、そこに管理費値下げの交渉の余地がある。

■ 具体的な手段は、競争原理の導入に尽きる。複数の同業他社に管理会社変更(リプレース)の見積もりを取り、それを現在の管理会社に突きつける。

■ そうすると、現行の管理会社が慌てて「管理委託費」と外注費の見直しなどを行い、管理委託費の引き下げに応じることも多い。それでも値下げに応じないならば、現行の管理委託費より低い金額を提示した管理会社を変更すればよい。

■ こうした改革をすれば、昨今でも1平方メートルあたり300円を超えるような高額な管理費の場合、200〜250円程度まで下がる可能性は十分あるし、実際、今年に入っても管理費を減額したマンションの事例が複数ある。

■ 割高かもしれない管理委託契約を続けているのは、機会損失にもつながる。たとえば500戸のタワマンで月2万円の管理費が1万5000円になれば、年間で合計3000万円。10年間で3億円の経済効果になる。この金額を修繕積立金会計に振り向ければ、段階的に引き上げられる修繕積立金の上昇を抑えられる

■ こういった維持費の改革は、管理組合の理事会が主導するが、管理会社の交渉など多大な負担もかかる。手間を避けたければ、理事に変わって面倒な見積もり作業を代行してくれる外部のサービスもある。

■ 「管理費が安くなると、その分、サービスが悪くなるのではないか?」という不安があるかもしれないが、そもそも他社への見積りは過剰なサービスを見直しながらも、「現在と同等レベルの管理体制」を条件にお願いするものなので、管理会社が変わったとしてもサービスが悪く感じるということはない。

■ 基本的に現行の管理会社に不満があって変更される場合が多いので、むしろ変えた後のほうがサービスがよくなったという声が多いのが実情。もちろん、管理会社を変更したことよる些細な変化を気にする人もいるかもしれないが、毎月の管理費が安くなったり、その分のおカネで修繕積立金の値上げを回避できたりするなど、大半の区分所有者にとって金銭的なメリットのほうが大きい。

 

この記事では、マンションの管理費を1平方メートルあたりの月額で記載していますが、新築マンションの平均月額は@200円強とされています。

 

<参考記事>

ieul.jp

ただ、記事の後半で述べられている管理会社に支払う管理委託費(≠管理費)を含む日常の維持費(水光熱費、保険料、組合運営費など)の「原資」になるのは、この管理費だけではありません。

 

管理組合の一般会計では、駐車場使用料などの各専用使用料を重要な収益源としているケースが圧倒的に多いのが実態です。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

つまり、<管理費+駐車場使用料等>を原資として、管理委託費や水光熱費、保険料等を支払っているのが一般的なのです。

 

したがって、管理費の水準だけを他のマンションと比較しても、管理会社の業務委託費が割高なのかどうか判断できかねる、ということです。

 

逆に言えば、駐車場使用料収入を「隠れ蓑」にして、管理会社が希望する金額で管理委託費を設定できると言えます

 

では、なぜそんなことが可能になのか?

 

その答えは、本記事の要約にもあります。

竣工後の管理会社は無競争のまま分譲会社の系列子会社に決まっていることがほとんど」だからです。

 

したがって、必要なことは、管理委託契約に記載された管理仕様と、清掃や設備保守管理、事務管理業務といった業務ごとの金額を精査し、競争原理を取り入れて割高な部分を適正化することです。

 

上記の通り、竣工当時はほぼ管理会社の「言い値」で管理委託費の水準が決定されているため、競争原理によるスクリーニングがなされていません。

 

そのため、築年数、物件規模や立地条件にかかわらず、どんなマンションも少なくとも一度はこのスクリーニングを実施すべきです。

 

管理仕様(清掃や設備点検の内容と頻度など)の条件を各社一律になるように揃えれば、基本的に「安かろう、悪かろう」になるリスクもありません。(ただし、フロント社員の人的な力量や会社の組織対応力等は除きます)

 

今回紹介した記事の重要な論点は、

管理委託費を適正化せずに割高なまま放置することで、管理費も他のマンションに比べて割高と認識されると、リセール市場で敬遠されやすくなるため、資産価値が相対的に下がるリスクが上昇する、ということでした。

 

マンションの購入に際して、自らの可処分所得に占める毎月のランニングコスト(管理費と修繕積立金の合計)の比重を考えて購入するかどうかを判断する大きな要素になります。

 

竣工時の修繕積立金は人為的に低く抑えられているのが一般的なため経年とともに当初の3〜4倍に段階増額されていくことを余儀なくされるのが実情です。

 

経年的な修繕積立金の増額が避けられないうえに、管理費も割高と判断されれば、中古市場でそのマンションが敬遠されるのは必然です。

 

そのため、当社は顧問先の管理組合の管理コストを早期に適正化し、その結果生じる毎年の剰余金を修繕積立金会計に振り替えることで将来的な修繕積立金の増額リスクを抑え込むことを管理組合に提案しています。

 

その結果、過去のブログでも下記の通りコンサルティングの事例を紹介していますが、顧問先マンションで組合財政の健全化、ひいては資産価値の維持向上に貢献していると自負しています。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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財政状況の悪化に悩むマンションへの管理見直しのヒント

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11月19日付けの東洋経済オンラインに「「管理組合の資金難」 築浅も無関係でない深刻理由」と題した記事が掲載されていました。

 

toyokeizai.net

本記事の要約は以下の通りです。

■  マンション管理組合が抱える深刻な課題のひとつが財政難である。ほとんどの管理組合の会計は、一般(管理費)会計と特別会計に区分されている。特別会計(修繕工事費)に関しては、新築当初はマンションの修繕積立金が低く見積もられている場合が多く、年数を経るごとに値上がりするケースは少なくない。また近年の人件費や建築コストの上昇などによる支出増が予想されている。

■ 一方、 一般会計もまた同様に厳しい状況にあり管理組合の悩みの種となっている。管理費の会計収支を圧迫する要素は大きく3つある。1つ目は、管理会社からの管理委託費の値上げを求める管理会社が増加している。 第2に、資源価格の高騰に伴う電気料金の値上げである。

■ 3つ目の要因が、駐車場の空き区画の増加だ。居住者の高齢化によって車を手放すケースが増えるとともに、若い世代の車離れも進んだため、駐車場使用料収入の減少に見舞われている。

■ あらためて見直すべきなのが管理会社との関係性である。「管理会社に不満があるなら、もっと条件のいい会社にリプレイスすればいいと思うかもしれないが、そうシンプルな話ではなくなっている。

■ 以前であれば、好立地の築浅マンションには安価な委託費を提示する管理会社が複数手を挙げてきたが、現在は積極的に取り組む管理会社は少なくなってしまった。

■ 業務委託費が下がらないばかりか、マンション管理・維持の水準が現状以下になってしまう可能性が高まった。

■ 管理会社を取りまく背景、経営状況も大きく変化している。とりわけ人件費の高騰は著しい。最低賃金の上昇や少子高齢化により採用コストも上昇を続けている。日常的な管理業務を担う管理員の確保も難しくなりつつある。

■ そもそも管理員には、定年退職を迎えた人材がセカンドキャリア先として選択するケースが多く存在した。ところが企業の定年延長や再雇用の動きが活発化すると、あえて管理員に応募する人材は少なくなった。 管理会社の人的リソースを考えても、現状の管理棟数ですでにギリギリの状態である。

■ このような理由から管理委託費が上がらなければ、契約の継続を辞退する管理会社も出てきている。また管理会社のリプレイスを検討する管理組合に対しても、現状の組合のあり方を含め、何らかのトラブルを抱えているリスクも鑑みて慎重な姿勢を取る管理会社も少なくない。結果的に管理組合がリプレイス先を見つけられない事態に陥ってしまう可能性もある。

■ 本来、管理会社の仕事とは、理事会からの要望を丁寧に聞き、会社との間を取り持つ重要な役割を担う人材だ。円滑にマンション管理を行うためには高いコミュニケーション能力が不可欠となり、「人」による部分が大きい職務でもある。

■ そのため、管理会社のリプレイスを検討する前に、別のフロント担当者、あるいは管理員への担当変更を切り出すなど、段階的に申し入れを行うのも一つの手と言える。

修繕積立金の増額リスクだけでなく、昨今の環境変化によって管理組合の財政状況が悪化しているのは事実です。

 

顧問先のマンションでは、高圧の電気料金が昨年に比べて5割も上昇し、前期よりも100万円以上収支が悪化しました。

 

新電力の多くは、地域電力会社の料金に揃えるのが精一杯の状況で、新規受付も中止しています。

 

そのため、以前のように電力会社の変更でコスト削減ができなくなったうえに、以前よりも電気料金が上昇するという憂き目に見舞われています。

 

また、以前から管理員や清掃スタッフの人件費も上昇しており、管理委託費の値上げを求める管理会社も出てきているのは事実です。

 

ただし、本記事のように「リプレイスをしてもコスト削減は困難」というレベルではないと思います。

 

もともと、デベロッパー系列の管理会社に委託している場合、これまで一度も見直されていない契約ならば、一定の削減余地があるのが一般的です。

 

それは、事前に相見積もりを取得するなど競争原理が導入されずに管理会社を選定しているからです。

 

管理員や清掃業務の費用は上昇しているとしても、設備管理や事務管理費にかなり贅肉を含んで金額になっていることも珍しくありません。

 

多くの管理会社は、こうした割高な部分を「棚に上げ」て、一部の費目の値上がりで収支が悪化した部分を取り戻すために管理組合に値上げを要請しているのです。

 

こうした管理会社に対峙し、しっかりとした知見をもとにビジネス交渉のできる管理組合は基本いないのが実情です。

 

そのため、言われるがままに増額改定に甘んじてしまうわけです。

 

管理委託費の見直しについてもう一つ大切なテーマがあります。

 

それは「管理仕様の見直し」です。

 

管理員の勤務時間や清掃員の派遣、設備保守点検の頻度などを精査すると、そのマンションの立地条件や規模に鑑みると明らかに「過剰」と思われる仕様が見られるケースが少なくありません。

 

たとえば、

■ 管理員の勤務時間が長すぎるケース

小規模マンション(29戸)で、グレードも標準的にもかかわらず、1日の勤務時間が実質6時間で設定されており、その費用が管理委託費全体の50%超を占めていました。

 そのため、当社から1日4時間への短縮を提案し、従前に比べて管理員業務費が45%下がりました。

 

■定期清掃の回数が多すぎるケース

標準グレードの小規模マンション(31戸)では、管理仕様を確認したところ、床の機械洗浄を毎月(年12回)実施していました。

 1回あたりの単価は妥当な水準でしたが、年4回もしくは6回が標準的とされているため、半分に頻度を落としたところ、当然ながら清掃費用は半額になりました。

 

■管理員とは別に清掃員が派遣されているケース

55戸のマンションでは、従前の管理仕様が以下の通りでした。

・管理員 :週2日・3時間/日勤務

・日常清掃:週3日・4時間/日勤務

 

詳細を確認したところ、それぞれ別のスタッフが実施していることがわかりました。

 

物件規模が100戸前後であればわかりますが、この規模なら日常清掃を管理員が完全に兼務することが可能です。

 

また、50戸の規模にしては管理員の勤務日数も1日の勤務時間も少ないため、週4日・4時間/日勤務に増やし、清掃も兼務してもらうことにしました。

 

その結果、管理員と日常清掃の合計費用を増やさずに契約を変更しました。

 

このように管理会社を変更しなくても現在の委託契約を精査して見直すことで、コストアップを回避する方法もあるのです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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マンション管理組合に忍び寄る「所有者不明住戸」問題

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11月15日(火)のNHKニュースで、老朽マンションにおける所有者不明部屋の発生に伴う問題について取り上げられていました。

 

www3.nhk.or.jp

その要旨は以下のとおりです。

■ 人知れず、マンションの部屋の住人がいなくなる。今、そんなケースが相次いでいることがわかってきた。

■ この問題で、マンションの管理費の値上げや、建て替えができないという事態にもつながっている。

■ 築50年年の千葉県内にあるマンション。この部屋に住んでいた高齢の男性といつからか、連絡がとれなくなってしまった。

■ マンションの理事長が調べた結果、住んでいた男性は、7年ほど前に別の場所で亡くなったらしいことがわかった。

■ 所有者が不明になったことで管理組合が最初に直面したのが「管理費の滞納」である。

■ マンションの資産価値を維持するには、共用部分の日常的な手入れや、定期的な修繕工事を怠ると適切な維持修繕が欠かせない。その原資となるのが、所有者が支払う「管理費」や「修繕積立金」であるが、所有者が不明になると、このお金が支払われなくなる。

■ 先ほどの部屋のケースでは、滞納額は80万円余り。遅延金も含めると100万円以上になった。
■ その後、管理組合が調査した結果、亡くなった男性には兄弟もいたが、「相続放棄」していたことが分かり、請求すべき相手がいないことが判明した。

■ やむを得ず、この管理組合は、財産管理人を立て、部屋の資産整理を進めたもののが、結局未納分の管理費は回収できなかった。

■ そればかりか、相続人の調査費用や、財産管理人の選任申立費、それに報酬などさらに100万円近くのお金がかかった。

■ このマンションには120の部屋があるが、他にも同様のケースが2件発生しており、数百万円の費用がかかっているという。

■ この管理組合は修繕のための費用が不足する事態となり、節約のために管理会社を解約。一部自主管理に移行するとともに、さらに管理費も、戸あたり月額3500円の値上げに踏み切った。

■ この組合の理事長は、「所有者不明の問題については、問題が発生したらすぐに対処できる仕組みや実情に即した財産管理の在り方をぜひ、検討してほしい」と話す。

■ 2018年の国の調査によると、マンションの部屋の所有者の所在が分からなかったり、連絡が取れなかったりする部屋は、築年数の古い建物ほど多くなる傾向があり、築40年以上のマンションでは13%余りに達している。

■ 築40年以上のマンションの戸数は、2021年現在、115万戸。その数は今後急増し、10年後に2倍、20年後の2041年には425万戸と4倍近くに急増する見込みであるため、今回のような「所有者不明部屋」は、今後さらに増えていくとみられる。

■「所有者不明部屋」の問題は、組合財政以外の問題にも影響が出ており、老朽マンションの建て替えをも阻んでいる。

■ 現在の区分所有法では、原則として「区分所有者」全体の5分の4の合意を得る必要があるため、所在不明の区分所有者の意思を確認できないと合意形成に支障が生じる。

■ 所有者不明の部屋が発生した管理組合に代わって、所在不明者の特定や滞納された管理費の督促を代行する業者も現れている。

■ その業者は、不明者の行方を登記簿などからたどり、時には現地調査も行って相続人を探し出すとともに、費用回収のための裁判を行うこともあるとのこと。

■ こうした「所有者不明部屋」の問題にどう対応すればいいのか?マンション管理に詳しい識者によると、「所有者不明」の住戸が増えるのは想定外の事態のため、現在の法規制を抜本的に見直すべき段階を迎えていると話す。

■ そのうえで、マンションの住人の高齢化が進む中、管理組合のできる予防策として、以下の対策を勧めている。
・長期不在になる場合の届け出の徹底を促す。
・所有者、居住者の変更届の提出を順守させる。
・組合の定期総会の開催に合わせて、所有者名簿、居住者名簿の確認、更新を行う。
・修繕積立金・管理費の滞納発生状況をタイムリーに把握する。

■ また、「居住者どうしが日頃からコミュニケーションを取り、相互に助け合える環境を整えていくことがとても大切」と話す。

■ マンションの「所有者不明部屋」問題の対応については、法的な整備がほとんど整っていないのが現状である。そのため、国は法改正も視野に対策の検討を進めている。

■ 具体的には、区分所有法を見直し、以下の制度措置を検討している。

・建て替えなどに必要な多数決の要件を緩和する案

・所有者不明の部屋に特化した財産管理制度の創設

 

こちらのブログでも、この問題についてが以前から取り上げていますが、日本社会の高齢化の進行に伴って、区分所有者の所在不明問題は今後間違いなく増加していくでしょう。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

この問題は、都市部か地方といった所在地や築年数の多寡は問わず、どのマンションでもいつ起こっても不思議ではないリスクと覚悟した方がよいです。

 

所有者不明に伴う管理費の滞納が発生する問題については、NHKの取材記事にも紹介されているとおり、所有者不明となった住戸について「不在者財産管理制度」(あるいは相続放棄の場合には「相続財産管理制度」)を活用してその住戸の売却処分を申請するという方法があります。

 

ただし、それには家庭裁判所への事前の申立てが必要で、100万円程度の「予納金」も納付しなければなりません

 

そのため、このような非常事態に備えて、日頃から管理組合の財政に余裕を持たせるようにマネジメントしていくことが大切です。

 

また、なるべく早期に問題の発生を察知することも重要です。

そのため、管理会社の協力も得ながら、区分所有者の連絡先の届出や変更された情報のアップデート、管理費等の滞納状況に関するモニタリングと回収状況の確認を毎月行うようにしましょう。

 

なお、今年の4月から始まった「マンション管理計画認定制度」の認定基準には、「組合員・居住者の名簿を備え、年1回以上はその内容を確認する」ことが盛り込まれていますが、上記のリスクに対応して項目に加えられたものと思います。

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

一方、区分所有法の改正検討について挙げられている以下2つの論点ですが、

(1)建て替え等に必要となる多数決要件の緩和措置

上記の通り建替えを決議するには区分所有者全体の5分の4の賛成が必要となっており、先ずそれ自体が高いハードルとなっています。

 

ただ、この厳しい成立要件を仮に4分の3や3分の2に引き下げて決議自体を可能にしても、建替えの実施に際しては建て替え反対者の立ち退き問題や多額の資金の確保といった様々な問題を解決する必要があるため、法改正によって建替え事例が今後増えるかと言えばそう容易に状況は変わらないと思います。

 

(2)分譲マンションの管理に特化した財産管理制度

区分所有者が専有部分や共用部分の適切な管理をしないために管理不全状態となって他の区分所有者や近隣の住民等に被害を及ぼす場合に、財産管理人を選任することができれば、継続的で柔軟な管理を行うことが可能になりますが、現行の区分所有法にはそのような制度はありません。

 

そのため、2021年の改正民法における所有者不明建物管理制度や管理不全建物管理制度(下図参照:法務省民事局作成資料の抜粋)を参考に、区分所有マンションの管理に特化した財産管理制度に関する規律を整備することが考えられています。

 

 

ただ、国の法改正などの対応は実態に比べて完全に後手に回っている感があります。

管理組合としてはこうしたリスクを正しく認識したうえで、日頃から発生の予防に努めるとともに、発生した際の基本的な対応も迅速に実行できるよう準備しておくことが重要です。

          

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マンションの機械式駐車場の撤去平面化に立ちはだかる「附置義務条例」の壁

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都内にある顧問先のマンションでは、来月臨時総会を開催し、機械式駐車場の設備更新と平面化工事を実施するための議案を審議する予定です。

 

このマンションでは、現在全22区画(平置き1区画を含む)の駐車場に対して、月極めの契約数は9台と稼働率は4割強にとどまっています

 

マンション内の居住者に利用ニーズを探るためのアンケートも実施しましたが、機械式ならではのサイズ等の制約条件や使い勝手などの問題もあり、今後も稼働率の回復は見込みづらい状況です。

 

一方、築20年を超えて設備の老朽化が進行しており、今後部品交換などの修繕費が嵩むことが予想されます。そのため、駐車設備の撤去・平面化の検討を開始したのが2年前のことです。

 

ただ、このマンションの敷地は間口が狭く奥行きが長い形状のため、設備を全て撤去すると必要な駐車区画数を確保できないことがわかりました。

 

そのため、16台の立駐ユニットを8台の新ユニットに交換するとともに、5台分の立駐ユニットを2台分の新平置き区画に改装し、合計11台(現平置き1区画を含む)の駐車場に改装する方針としました。

 

しかしながら、これを実行するには別の「大きな課題」があることがわかりました。

それは、「駐車場附置義務条例」です。

 

当マンションの場合、東京都の駐車場附置義務条例(当マンションの場合:20台以上)の制約のもとで建設されたことから、その基準を下回る台数に減らす場合は、以下のとおり都から「条例の緩和措置」を承認してもらうための条件と手続きに従う必要があるのです

 

■ 新築時の基準台数未満に削減する場合は、事前申請のうえ附置義務緩和の認定を受けること。具体的には、行政との事前協議(1ヶ月程度)を行なったうえで、組合総会の特別決議を得た後に、正式に行政に認定申請を行うこと。

■ 東京都の場合、附置義務緩和の台数制限として、過去3年の最大利用実績数を下回らないこと等が定められていること。

■ 上記条例に違反し、設備の撤去・平面化を実施したことを後に行政が認知し、原状復旧等の措置命令に対して組合が従わなかった場合、50万円以下の罰金を課せられること。

 

上記(2)の制約条件から、本プロジェクトについて行政に申請するには少なくともまだ1年以上現状の稼働台数が増えないことを確認する必要がありました。

 

そして、今年の秋になってようやく行政に事前協議を行える条件が整ったため、さまざまな書面を作成したり、必要な資料を取り纏めたうえで行政に提出し、先日無事、その協議が終了しました。

 

そのため、来月の組合総会(特別決議のため全体の4分の3以上の賛成が必要)で承認が得られれば、いよいよ工事を施工できることになります。

 

 

駐車場設備の撤去・平面化を普通に実行するだけでも組合にとってはかなりヘビーなプロジェクトですが、今回のように附置義務条例の制約のもとで行政から承認を得るために煩雑な事務作業も加わり、大変な業務負荷が加わることになりました。

 

これを乗り越えたのは、本プロジェクトに2年以上熱心に取り組んだ理事長をはじめ役員の皆さんの努力の賜物だと思います。

 

あとは、無事総会で決議されることを祈るばかりです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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顧問先マンションの「8年間の成果」を見える化!

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私がコンサルタントとして顧問を務めるマンション管理組合(神奈川県・90戸)では、1年毎に理事長が交代するたびにブリーフィングを実施しています。

 

事業年度ごとのトピックのサマリーを時系列で整理し、その経緯や検討経過、施策の効果などをレポートに纏めた資料をもとに、先日新理事長に説明しました。

 

このマンションにおける主なトピックとしては以下の項目が挙げられます。

・管理コストの適正化(管理委託費:従前比33%ダウン)

・機械式駐車場の平面化(86台のパレットを撤去して35台の平置きに改装)

・修繕積立金の増額改定(月額単価 @200円/㎡⇒@300円/㎡)

・屋上防水改修工事の実施(25年の長期保証付き:特殊素材仕様のため)

・第2回大規模修繕工事の実施検討(来春着工予定)

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

上記以外にも多くのトピック(長期滞納者対応、漏水対策、台風時のエレベーター被水事故など)がありますが、改めて振り返ると様々な課題と闘ってきたんだだなぁ・・と感慨深くなります。

 

8年前と比べて最も顕著な違いがあるのが、管理組合の「お財布事情」です。

 

駐車場の稼働率低下で収入が減少したものの、管理委託費などのコスト削減の成果によって、安全余裕率(収益に占める剰余金の比率)が大幅に改善しています。

(下表参照)

 

【8年前の会計収支】管理費会計の安全余裕率:0.2%

【現在の会計収支】管理費会計の安全余裕率:18.9%

 

また、修繕積立金の「簿外債務」(長期修繕計画で見込む今後30年間の修繕費から繰越剰余金の残高と現在の徴収額の横伸ばし分を差し引いた金額)については、8年前の時点では修繕積立金を+@155円の増額を行う必要がありました。

 

 

現在の長期修繕計画では、消費税の増税を含む修繕見込額の増加や修繕積立金の増額改定も反映されており、8年前とは所与の条件も変化していますが、管理費会計の収支改善に伴う剰余金の充当を前提とすれば、現時点では簿外債務はマイナスとなるため、修繕積立金のこれ以上の再増額は必要ない見通しとなっています。

 

ちなみに、「変わっていない」ことを挙げると、管理会社は8年前と変わりません。

 

つまり、リプレイスせずに管理組合の財政改善などの改革が実現できたのです。

 

私だけではなく、管理会社との二人三脚で管理組合をサポートした結果だと思います。

 

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前回の契約更新から5年経ったのに、マンション保険料が大幅に下がったワケ

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顧問先のマンション(神奈川県 31戸 築27年目)では、現在の保険契約が11月1日をもって満了となるため、更新後の契約について検討していました。


大手損保5社から相見積もりを取ったところ、「マンション管理適正化診断サービス」の結果が良好だったため、保険料が大幅に下がることがわかりました。


他の顧問先マンションでは、少しでも保険料の負担増を抑えようと(保険会社の)免責額を増やしたり、過剰と思われる補償をカットするなど苦肉の策を講じているところです。

 

しかしながら、このマンションについては現状の補償条件を維持したまま2割以上保険料が下がるため内心驚きました。(下記参照)

   

【保険料(5年分一括払いの場合)】

・日新火災(現契約)     1,277,670円
・日新火災(更新予定)      979,270円(現状比 23%ダウン)

(参考)T社         1,521,940円

 

なぜこのような結果になったのでしょう?

 

まず、日新火災の「マンションドクター火災保険」の場合、日管連の「マンション管理適正化診断サービス」の結果が引受保険料に反映される仕組みになっています。

 

 

このマンションの場合、この適正化診断の結果が5年前と比べて「B」⇒「A」ランクに評価が改善したため、築年数が増えたにもかかわらず保険料が下がったのです。

 

具体的にどこが評価されたのか、診断項目ごとにチェックしてみました。

 

(1)長期修繕計画の更新

前回の診断では、5年ごとの見直しが必要とされる長期修繕計画が10年以上更新されておらず、ポイントを獲得できませんでした。

そのため、3年前に長期修繕計画の更新を実施したため、今回評価が改善されました。

 

(2)修繕積立金の徴収額

修繕積立金の徴収額が、「国交省のガイドライン」の目安額に比べて低い水準にとどまっていたため、ポイントが得られませんでした。

 

そのため、3年前に長期修繕計画の更新と併せて修繕積立金の増額改定も実施し、この項目もクリアしました。

 

(3)大規模修繕工事

このマンションでは、今春第2回目の大規模修繕工事が完工したばりで、当然ながら施工業者の瑕疵保証も有効なためリスクが低いと評価され、今回はポイントを獲得できました。

 

また、施工業者には、大規模修繕工事瑕疵保険にも加入してもらうことを発注の条件に加えたことが追加ポイントの獲得につながりました。

 

このマンションは、5年前に管理コストの適正化からコンサルティングを開始し、その後は定期顧問契約を締結し、大規模修繕工事、管理会社のリプレイス、エレベーターのリニューアルなどのサポートをしてきましたが、その成果が保険契約に現れる形になり、当社の貢献を管理組合にアピールできる良い機会になりました。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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【終了しました】マンション管理セミナー 11月開催のお知らせ

11月に「マンション管理セミナー」を開催いたしますので、ご案内します。

 

参加人数を絞ったミニセミナーの開催とその後の個別相談会を開催します。

先着5名様の参加を受け付けますので、お早目にごお申し込みください。

 

【日時・会場】

令和 4年 11月  12日(土) 10:30~12:00

 

LEAGUE 地下1階 ミーティングスペース

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

弊社に個別にご相談いただける方

 

 

1. 講 演

 

管理コストを3割削減するための見直し術」

これまで弊社のコンサルティングによって大幅なコスト削減を実現した事例を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

【内 容】

■ ポイント1:管理人の勤務体制と業務内容
最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

■ ポイント2:設備保守点検の契約形態と実施頻度(エレベーター、機械式駐車場など)
エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

■ ポイント4:事務管理費など管理会社の経費
管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

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その他、管理会社の変更や大規模修繕、設備更新工事などのご相談も随時承ります。

 

【お申込み方法】

弊社サイトの「問い合わせページ」より、お申し込みください。

 

お問い合わせ内容は「その他」を選択のうえ、コメント欄に「セミナー参加希望」とご記載ください。(お名前、マンション名、メールアドレス、電話番号等を必ずご記載ください。)

 

<注意事項>

※ 会場では、マスクの着用をお願いいたします。

※体調のすぐれない場合には、無理をなさらず欠席をお申し出ください。

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