世直し本舗|村上智史の「士魂商才!」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史がご紹介します。

岩波新書「生き延びるマンション」は、丹念な取材記録の集大成!

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8月に発売された「生き延びるマンション」(山岡淳一郎著 岩波新書)を読みました。

 

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著者は、多くの分譲マンションが「建物の老朽化」と「住民の高齢化」という「二つの老い」が進む中、住民の大半が管理組合活動や維持管理に関心がない状況を憂いています。

 

このまま無関心の状況が続くと管理不能で住環境が荒れ、空室が増加してスラム化を呼び込むことになると言います。

 

なぜ住民の無関心がマンションのスラム化につながってしまうのか?

 

分譲マンションの管理を適切に行うには、「長期にわたる人的なマネジメント」が不可欠だからです。

 

そこに気づくには、分譲マンションの管理と運営にはどのようなリスクが潜んでいるのかをまず正しく認識する必要があります。

 

まずは、建物の資産価値を長期にわたって維持するために最も大切な管理組合の財政にかかわる問題です。

 

新築時の修繕積立金の設定が低すぎるために、将来の大規模修繕工事の資金を賄うにはなるべく早い段階で一定の金額以上に増額しなくてはなりません。

 

そのうえで、その修繕積立金をどのように支出していくかという問題に直面します。

 

多額の修繕積立金を巡っては、管理会社、施工業者、設計事務所、あるいは一部住民を巻き込んで利害関係者の思惑が錯綜しており、管理組合が主体となって適切なマネジメントが行われないと多大な無駄遣いや、工事の失敗を招いてしまうリスクもあります。

 

第二は、居住者の高齢化に伴うリスクです。

区分所有者の相続が発生した際に、円滑に部屋の承継人が決まればよいですが、マンションの「負動産」化、少子化の進行などに伴う相続放棄の増加によって所有者不明や管理費等の滞納の問題が発生するというリスクが今後顕在することは間違いないでしょう。

 

また、高齢化の進行に伴い、マンション内で認知症の居住者が今後増加することも予想されます。

 

つまり、管理組合の仕事は単に建物の維持管理だけでなく、新たに「住民の終活サポート」も今後視野に入れざるを得なくなるということです。

 

第三には、修繕か建替えかという選択に関する問題です。

 

マンションの建替えに関する制度は存在するものの、現在実施中も含めて建替えを実現できたマンションは全国でたったの267件(2019年4月現在)にすぎません。

 

これには、区分所有法の制約(全体の8割以上の賛成)もありますが、経済的負担が大きいのが最大のハードルでしょう。

 

しかし、通常数千万円にのぼるローンを組んでその後長期間の返済を強いられる一生ものの買い物であるにもかかわらず、それがようやく終わったら建て替えを検討しなくてはならないというのはどうなんでしょうか?

 

国交省の調査によると、「滅失した住宅の平均築後経過年数」は、日本の場合たったの「30年」です。

 

これは米国(55年)や英国(77年)の実績データと比べると、かなり短い。

 

また、「住宅投資に占めるリフォーム投資の割合」は日本の場合29%しかなく、英国(56%)やフランス(53%)とその差は歴然です。

 

その背景には、日本の不動産・建設業界が「スクラップ&ビルド」(新築・売り抜け)のビジネスモデルに依存しているということがあります。

 

この「スクラップ& ビルド」方式は社会的な費用を確実に増やします。

 人口も増え、給与も増え・・という右肩上がりの時代はそれも可能だったかもしれません。

 

しかし、少子高齢化による人口減少社会がすでに到来し、今後は高い成長率が見込めない経済状況の中で住宅環境を安定的に維持していくには、土地だけでなく、上物(うわもの)の住宅自体が資産化する方向にパラダイムを転換していくことが必要です。

 

そもそも、地震にも強い鉄筋コンクリート造のマンションは、外壁改修や防水工事、給排水設備のメンテナンスを怠らなければ、人間と同様に「寿命100年」を目指すことも決して夢ではありません。

 

しかし、それは無関心層が多数を占める管理組合の現状ではとても覚束ないでしょう。

 

つまり、それを実現するには「マンション住人自身の意識変革」が必要不可欠なのです。

 

本書は、こうした無関心派の管理組合とは違って、「何とかしなければ・・」と目覚めた住人の取り組みが大きな変革をもたらした複数の事例が詳細に綴られつつ、コンパクトにまとめられています。

 

特に、地震をきっかけにマンションを支える複数の杭が支持地盤に届いていなかったことが判明したために、結局全体の建て替えを余儀なくされた横浜市の大規模マンションでの検討経過のレポートは圧巻です。

 

売主のデベロッパーによる最初の反応とマスコミに取り上げられた後の対応の変わり方、建て替え決議に至るまでの組合内部の苦悩、杭の施工不良を招いた一因と推測される建築確認申請にかかる手続きの問題などが克明に描かれています。

 

この他にも

・訪問介護ステーションを設置した都心のタワーマンションの取り組み

・多摩ニュータウンにある団地の建替え実現までの約20年間の軌跡

・自主管理方式のまま法人化し、住民主体で運営している高経年マンション

など、「終の住処」を「楽園」に変えようと努力する住民の行動について参考になる事例が数多く取り上げられています。

 

ぜひ管理組合の役員さんには読んでいただきたい一冊だと思います。

 

 <参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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