マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「マンション修繕工事の資金難 」問題の本質は、業界の悪しき慣習にあり!

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5月27日付の「日経マネー研究所」のサイトに、 「マンション修繕に思わぬ誤算 工事費高騰で資金難 」という記事が掲載されていました。

 

style.nikkei.com

 記事の要約は以下の通りです。

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■ マンションの大規模修繕工事。ここ数年は工事費の相場高騰などから、住民が月々払う修繕積立金だけでは費用を賄えないケースが増えてきた。住宅金融支援機構の融資額が目立って増加しており、やむなく借金して修繕するケースも増えているという。

 

■ 建設業界で深刻な人手不足が続いていることを背景に、修繕工事費の相場は13年春に比べて20~30%高くなっている。そのため、修繕工事を五輪後の20年以降へ延期する例も多いが、逆に工事の集中が将来予想されることもあり、五輪後すぐ価格が沈静化するかは不透明な状況。

 

■  修繕計画が狂う原因は他にもある。その一つが近年のクルマ離れに伴う駐車場利用料収入の減少傾向だ。特に機械式の駐車場は維持・更新費用がかさむため、利用料収入で賄えなければ、修繕積立金を取り崩して穴埋めすることになる。

 

■ もともとマンションの修繕積立金は、新築分譲時に高めの金額を示すと購入検討者から敬遠されかねないため、不動産会社が当初の金額を低めに設定している。

 

■ 国交省は「修繕積立金ガイドライン」を11年に策定しており、1平方メートル当たり月178~218円を必要額の目安としている。しかし、新築マンションの修繕積立金の平均を1平方メートル月約95円で、国の指針を大きく下回っている

 

■ 管理組合側に立った対策としては、まずは修繕計画と工事費の相場を照合するなどして、修繕積立金が不足するおそれがどれだけあるのか早期に検証したい。

 

■ 積立金が足りない場合、どう金額を引き上げるかが重要になる。段階的に増額するほうが住人は納得しやすいが、一度に大きく引き上げて固定金額方式に変更する組合もある。

 

■ 屋上や外壁などを対象とする大規模な修繕は一般に約12年ごとに計画される。その周期を長期化することによって工事費の総額を抑えようと考える管理組合もある。より耐久性の高い材料や塗料を使えば、18年くらいの周期でも雨漏りなどを防げるとされる。総工事費の15~20%とされる仮設足場の費用を削る効果も享受できる。

 

■ 修繕計画の見直しは、管理組合の場で時間をかけて話し合う必要がある。管理組合では一般に理事全員が毎年交代する。最近は理事の任期を2年に延ばし、毎年の改選は半数ずつとする方式に改める例も出てきた。

・・・・・ 

 

確かに、修繕工事費の相場は5年前と比べると3割程度上昇しているという実感があります。

 

この背景には、

東日本大震災後の復興ニーズ、東京オリンピックへの準備など需要サイドの事情も確かにありますが、深刻な人手不足に直面しているという供給側の問題もあると思います。

 

大規模修繕実施のスケジュールをオリンピック後に延期するという選択は、もはやマンション管理組合の「常套手段」となっています。

 

しかし、人手不足の問題は構造的な問題でもあり、そのうえ五輪後に工事発注が集中すれば、期待するほど工事費の相場は下がらない可能性も十分にあるでしょう。

 

ただ、工事相場の問題よりも構造的な問題として根深いのは

新築当初マンションの修繕積立金が故意に低く設定されていることです。

 

これこそ、古くて新しいマンション業界の悪しき慣習だと考えます。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

今から20数年前までは、新築時の修繕積立金はなんと管理費の1割程度の水準でした。

3LDKの部屋でも、月額1,500円程度です。

 

それはさすがに酷すぎるということで、

その後管理費の半分程度の水準まで引き上げられたのです。

 

それでも、いまだ国が示す目安の半分程度にとどまっています。

 

つまり、マンションの修繕積立金は、新築時から管理費と同水準の金額に設定しなくては将来足らなくなる可能性が高い、ということです。

 

でもマスコミ各社はその点についてはあまり鋭く突っ込みません。

冒頭の記事のように「オブラートに包んだ評論家的なコメント」しか見られません。

なぜでしょうか?

 

それは、広告を中心に不動産業界には大スポンサーとしてお世話になっているという事情があるからだと思います。

 

 

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