マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

福岡発・耐震偽装マンションはなぜ建替えが認められないのか?

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3月20日付の日経アーキテクチャー誌に、下記の記事が掲載されています。

福岡県久留米市の分譲マンションをめぐり、管理組合が3月5日、建築確認を下ろした行政に対して建替え命令を求める行政訴訟を提起しています。

本件は、瑕疵発見以来現在に至るまでの長期間に及んでいるだけでなく、行政の対応にも不可解な点が多いので、関連記事を検索して経緯を以下の通りトレースしてみました。

◆15階建・92戸のマンションが、96年に竣工・販売される。
 <分譲主:新生住宅(※2008年解散済み) 建築元請業者:鹿島>

◆しかし、入居直後から相次いで瑕疵が見つかる。機械式駐車場の故障をはじめ、クラックの発生、モルタル・タイルの浮き、コンクリートの剥落・爆裂、コンクリートのかぶり厚の不足と鉄筋のサビなど、構造上の不具合が次々と発覚。

◆97年以降、マンション管理組合が販売会社と施工元請の鹿島に繰り返し調査や補修を求める。

◆04年頃に、非常階段のコンクリートの塊が落ちる事故が発生。

 

◆その後鹿島が「鹿島施工による標準的な建物とは言えない」、「当社の施工不良でコンクリート塊の落下を招いた」と認めて、「鹿島の責任」で調査補修を明言。その後、管理組合と鹿島らの協議の末、共用部の補修工事が実施された。

◆一方、12年頃に今度は建物設計時の構造計算自体に疑問が生じ、管理組合が専門家に検証を依頼したところ、極めて深刻な耐震強度不足が判明した。

 

◆現在の構造計算プログラムで検証した結果、一次設計(通常の震度6弱程度の地震に対する安全性)の耐震強度が、基準に対し約22%しかなかった。なお、確認申請当時の構造計算プログラムでも、耐震強度は約37%しかないとのこと。(※建築基準法令では、耐震強度が基準の50%未満の場合は、地震で倒壊または崩壊する危険性が高いとされる。)

◆その原因として、本来の地盤種別(地盤の強固さ)よりも良好な地盤と虚偽の申請をしていたことが判明。

 

管理組合に引き渡された構造計算書が竣工後の日付で、建築確認申請時のものではないことも発覚

◆さらに、加水コンクリート(本来適正とされる量よりもコンクリートを減らして加水が行われた生コンクリート)が使用され、コンクリートも設計強度の68%しかないことも判明。

◆13年以降、住民らは、久留米市に、こうした専門家による耐震強度の検証結果を示して建て替えの必要性を訴え、救済・対策を求めてきた。

 

ところが、住民の訴えからすでに2年経過したにもかかわらず、市の検証結果はまだ出ていません。

久留米市は当初、管理組合に対して「安全に関する緻密な検証なので、慎重に確認作業をしたい。通常の確認申請よりもシビアにチェックするから、時間がかかる」と説明。

さらに、「行政だけの検証でなく、客観的な判定が望ましい」と、第三者機関に検証を依頼する方針だと住民側に示していました。

 

ところが、市が第三者機関の判定を仰ぐとして、JSCA(一般社団法人日本建築構造技術者協会)に検証を依頼したものの、それは実現しなかったばかりかその理由すら明らかにされていません。

その後、管理組合は久留米市を相手取り、建替え命令を求めて2014年7月から久留米簡易裁判所で民事調停を行っていました。7回の調停を経ても市が管理組合の主張を認めなかったため、今回の提訴に至ったというわけです。

 

なぜここまで行政の対応が遅いのでしょうか?

マンションの建築を許可した自らの責任を問われることを恐れているのでしょうか?

 

しかしながら、過去の耐震強度偽装事件について、建築確認の審査を行った行政側の責任が争われた最高裁の判例を見ても、その責任範囲はかなり限定的に扱われています

 

姉歯元一級建築士による耐震強度偽装事件の判決(最高裁第3小法廷 2013.3.26)によれば、「建築主事は違法な建築物ができないよう防止する一定の職務上の法的義務を負う」としながらも、「建築物の安全性は一次的には建築士が確保すべき。自治体は、建築士が義務に従っている前提で審査する」と断じ、「審査する建築主事が職務上通常払うべき注意を怠り、漫然と法の規定との不適合を見過ごした場合には違法となる」と述べています。

それにもかかわらず、構造計算書のねつ造の真相すら未だに明らかにされないことは腑に落ちません。

 

マンションの住民である管理組合だけでなく、物件周辺に居住する市民にとっても耐震強度が脆弱なマンションの危険性を日々感じながら生活していることについてどこまで危機感を持っているのかと問い詰めたくなります。

 

一日も早く事の真相が明らかにされ、管理組合にとって解決の道が見えることを祈るばかりです。

 

どうも有難うございました!!

 

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