マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「一括受電サービス」は、管理組合にとって魅力的か?

2016年の電力の小売り全面自由化に向け、一括受電サービスに参入する企業が続々と名乗りを上げています。

<参考記事>
・マンション電力に大手続々
・KDDIがマンション一括受電に参入
・野村不動産パートナーズ、マンション高圧一括受電に参入
・マンションの電気代節約 「一括受電」と電力の「見える化」

中央電力やオリックス電力等の専業のサービス業者に加えて、東電や関電の地域電力会社、通信会社、管理会社などが参入したことで競争激化の様相を示しています。

ただ、このサービスの特長は各社に大きな違いはなく、概ね以下の4点に集約されます。

● 変電設備は自社で所有するので、 管理組合の初期負担はゼロ。

● 検針・請求業務、設備保守点検も業者が実施するので、管理組合は何もしなくてよい。

● 共用部の電気代が40~50%下がる(もしくは、各専有住戸の電気代が5%下がる。)

● ただし、マンションの規模・設備状況によって電気代の削減幅は変動する。

この一括受電サービス、ホントに管理組合にとって魅力があるのでしょうか

地域電力会社の受電スキームと比較してみましょう。

(下図参照) 


 

<出典:産経ニュース>

 
図を見て明らかなように、これまで電力会社が自社の変電設備を利用して高圧⇒低圧に変圧し、電力を共用部と各住戸に提供していた役割が、サービス業者に変わるだけです。 

管理組合は、マンション内の電気室を電力会社に無償で提供しているはずです。


私から言わせれば、一括受電サービスとは、「電気室の場所代として家賃が貰えるようになること」と理解した方がスッキリします


つまり、管理組合として専有住戸分を含めて電力をサービス業者からまとめ買いすることを(ほぼ永久に)約束する代わりに、電気室の場所代を管理組合に支払ってくれるというのが、このサービスの本質です。


「高圧一括受電」は、それとは明らかに違います。


高圧一括受電とは、変電設備を管理組合自らが所有することで、割高な低圧料金と割安な高圧料金との差額を資金余剰として活用できる
ことに最大の特長があります。

 
一括受電サービス業者が特に巧妙なのは、「電気室の家賃を払う」と言う代わりに、「共用部の電気代が約半分になる」というセールストーク
にあります。


これによって、管理組合は「高圧一括受電とはそういうものだ」とつい勘違いしてしまいます


なぜそんな言い方をするのかというと、冒頭に述べた「電力の小売り自由化」を2年後に迎えると、電力事情も大きく様変わりすることが予想されるからです。


今後「新電力」への参入がさらに増え、管理組合を大口顧客としてターゲットに据えるのは目に見えています。


その時に、サービス業者は自社の変電設備を持っているため、電力を仕入れる側として非常に強い立場にあります。 
 
 
その立場を最大限に利用して、今の電力会社以外の「新電力」からより安価な電力を購入することで、さらに儲けるチャンスが出てきます。

 
その時、管理組合にメリットはあるのか

 
答えは、NO です

 
管理組合は、サービス業者との契約で決まった固定収入見合いの分け前にしか与かれないでしょう。


なぜなら、サービス業者の事業収支は管理組合に開示する義務はないからです。もちろん契約書にも記載されていません。


つまり、「高圧一括受電」している主体は、サービス業者であり、管理組合ではないのです。

 
ですから、一括受電サービス業者との契約は「電気室の賃貸収入を貰うこと同じ」と割り切る方が分かりやすいと思います。
 
 
高圧一括受電についてもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
↓   ↓
・マンション管理士の仕事(6)【光熱費の削減】下

 

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