マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション管理組合には馴染みのない「FBサービス」って何?

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この7月からコンサルをしている築20年のマンションでは、管理会社に対する不信がくすぶっています。

 

発端は、10年ぶりのマンション保険契約の更新でした。

保険の代理店も兼ねている管理会社が、従来どおりメガ損保であるM社とS社の2社だけの見積りしか提示しなかったところ、築年数の増加に伴い保険料の負担が今の10倍に増えることが分かったため、そのまま更新するわけにはいかなくなりました。

 

そこでこの組合から相談を受けた当社が提携先の代理店を紹介し、他社の見積もりをもらったところ、同条件ながら管理会社よりも半額ほど安く収まることになりました。

 

この他にも、管理会社が提示する補修工事の見積金額がどうも高いと思って他の業者からの相見積りを取ったら、なんと10分の1に下がった・・という笑えない話もあったようです。

 

そして、不信の矛先は今度は管理委託契約に向かい、現在管理委託費の見直しに着手したところなのですが、事務管理の内容についてもクレームが持ち上がりました。

 

それは、「管理組合の銀行口座のパスワードを管理会社が管理しているうえに、理事長の承認も得ずに勝手に経費を精算処理している!」というものです。

 

管理組合がその経費を精算する場合、理事長が支払承認 ⇒ 払戻し請求書に理事長印を捺印 ⇒ 管理会社が払戻し請求書を銀行に持参のうえ精算手続き という流れが原則としてあります。

 

しかし、こうした事務手続を効率的に処理するために近年「FBサービス」を採用する管理会社が増えています。(※FBとは、ファーム・バンキングの略称)

 

まず、管理組合の銀行口座を「収納口座」と「保管口座」に分離します。

「収納口座」とは、毎月月末までに組合員から徴収する管理費・修繕積立金等をプールして日常の管理に要する諸費用の支払を行うための口座です。

 

そして、経費精算の後に収納口座に残ったキャッシュをその翌月末までに「保管口座」に移動させます。

 

FBサービスを採用する場合には、次のようなことが管理委託契約で定められています。

◆あらかじめ総会決議で予算として承認された経費(管理委託費、水光熱費など)については、個別の承認を得ずに管理会社が精算の手続きを執行できるものとする。

◆その際、管理会社は「収納口座」から電子決済にもとづき支払うことができ、そのために必要なパスワードも管理会社が保持するものとする。

 

ここで、ひとつ疑問が生じますね。

「なぜ管理会社がパスワードを保持するのが許されるのか?」

 

管理会社にパスワードを渡せば、横領・着服といった不正行為で組合財産が毀損するリスクが生じます。

 

そのため、こうしたリスクへの制度的な対応として、万が一の際の措置として、管理会社は管理費等の1ヶ月分相当額を「マンション管理業協会保証機構」に預託することが義務付けられています。

 

この保証措置によって、FBサービス以外の決済方法でも、たとえば「収納口座」の印鑑あるいはキャッシュカードを管理会社が管理できることになっています。(※もちろん、保管口座についてはこのような管理は一切認められていません。)

 

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したがって、この出納業務に関するクレームに関しては、法的にも問題がないことが分かりました。

 

ただ、この管理組合では、FBサービスの利用へ切替えた際に支払承認の簡素化を含めて十分な説明を受けていなかったために、ほとんど理解されていなかったようです。

 

 

ファーム・バンキングと言っても一般の管理組合の方々にピンと来ないのは無理もないこと。

 

管理会社が事務効率を上げるのは結構ですが、顧客の信頼を損なわないよう丁寧な説明をするようにして欲しいものです。

 

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