マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

分譲マンションの管理状況の評価制度は、どんな仕組みになるのか?


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国交省が分譲マンションの管理状況を公的に調査し、その結果をもとに評価・認定する仕組みを構築するという構想については、先日このブログでも取り上げました。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 本構想に関する現状の進捗状況については、マンション管理業協会(マンション管理会社の所管団体)のホームページで公開されている情報でおおむね把握することができます。

  

マンション管理業協会が業界の各団体に呼びかけによって参加した各委員、ならびに国交省や東京都から参加したオブザーバーで構成される「マンション管理適正評価研究会」が昨年発足し、下記3つの項目をテーマに検討を行っていました。

(1)管理に係る情報開示の必要性

(2)管理の質が市場価格・取引価格に反映される必要性

(3)適正な管理の基準

 

本研究会は昨年9月以降計4回開催され、その内容を取りまとめた「中間報告書」が去る1月24日に公表されるとともに、パブリック・コメントの募集を行っていました。(2月7日をもって終了しています。)


本研究会の報告書を要約すると、以下の通りになります。

■ マンション購入者の永住志向は年々高まっていることから、長期的なマンションの維持管理の重要性が高まること、及び修繕積立金の状況や居住者の高齢化等を踏まえると早急に適正な管理を促進する対策を検討する必要がある。

■ 高経年マンションストックの増加、ならびに区分所有者(居住者)の高齢化が今後予想される中、マンション再建・再生のための区分所有者の合意形成が難しくなることが想定される。

■ しかしながら、現状ではマンション購入者の意識は、立地や間取りに向きがちで、共用部分の維持管理状況に対する意識は低い

■修繕積立金については、築浅のマンションほど段階増額積立方式となっている割合が高く、さらに消費税増税の影響を受けて資金不足を懸念する管理組合が45%に達している。その結果、今後工事の延期(見送り)、あるいは工事範囲の縮小等で適正な修繕が実施できないリスクがある。

■ 現状、マンションの購入者は、物件探しの際の条件として立地や間取り、築年数のような情報を重視し、管理に関する情報は契約直前の重要事項説明の時に明らかにされるのが通例である。そのため 購入検討の早い段階から、対象物件の管理面における納得性とリセールバリューなど将来予測を検討する時間が必要である。

■  こうした要請に応えるために、マンションの管理情報をのうち基礎的な情報を「一般情報」、ペット飼育の可否や民泊の可否等人により評価が変わる情報を「客観情報」管理組合の財政状況といった管理状態の数値評価を行う「等級評価」に分類したうえで、登録・開示することが消費者保護の観点から必要である。

 

■ 現在の区分所有者にも、管理状況の評価が開示されることで管理の質が市場価格に反映されれば、リセールバリューが生まれたり、リバースモーゲージの際に、必要な資金を有利に調達できる。

 

■ また、管理状況を客観的、等級評価で示すことは、購入予定者の物件の選別に役立つだけでなく、管理組合にとっても管理面の強みや弱みが明らかになり、相対的に劣る部分について向上させようとする活動に繋がることが期待できる。

今回の中間報告書で管理組合にとって最も重要なことは、「マンションの管理状況の優劣が定量的に評価される」という点でしょう。

 

本報告書によると、等級評価される対象項目として以下の項目が挙がっています。

・管理者等の設置状況

・通常総会の開催時期と決算月

・管理規約原本の有無と現に有効な規約

・総会議事録の有無

・設備点検(法定点検を含む)業務の実施状況

・管理組合の財務諸表(管理費・修繕積立金の会計収支・純資産額)

・管理費等の滞納状況

・借入金の有無

・長期修繕計画の有無

・共用部の修繕工事の実施履歴

・建物の耐震性

・緊急対応、防災備品の備蓄、消防訓練の実施、防災対策の有無

 

これらを見る限り、日管連で実施している「マンション管理適正化診断サービス」で、A以上の評価を受けたマンションならばクリアできるでしょう

 

なお、この構想を具体的な制度として実現し、健全かつ継続的に運用可能なレベルにするためには、以下のように細部にわたって検討が必要な項目があると思います。

(1)評価主体の問題

誰が客観的に評価するのか?

マンション管理士などの専門家、もしくは自治体?

 

(2)情報の更新頻度

定期的な更新が必要なのは確かだが、何年ごとが妥当か?

 

(3)情報公開の仕組み

公的な機関によるものか、民間的な機関や媒体を通じたものか?

 

(4)インセンティブの付与

一定以上の評価を受けたマンションへの優遇措置の検討

 

(5)矯正のための制度検討

管理不全化の抑止を目的に、低評価の物件に対する外部による矯正促進策の検討

 

本件については、今後も引き続きモニタリングしていきたいと思います。

 

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マンション管理組合にも「所有と経営の分離」が待ったなし!

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2月15日付の「マネー現代」に、「ご存じですか、日本のマンションを廃墟に追い込む「共有地の悲劇」と題した記事が掲載されていました。

 

gendai.ismedia.jp

 本記事の要約は以下の通りです。

■ 日本の不動産全般の将来は暗い。不動産全般の価値がこれから上がるとは考えにくく、むしろ下がるだろう。

■ 中でもマンションに関してはさらに暗い見通しを持っている。「共有」という権利関係は調整が難しく、多くの問題を抱えているが、マンションにはそれ以上に大きな影響を与える。

■ マンションは1棟単位で成り立っていて、各部屋は「概念上独立」しているに過ぎない。つまり、マンションの本来の価値は、各部屋ではなくマンション1棟で考えるべきだ。そして、その価値を決めるのに決定的役割を果たしているのが「管理組合」だ。

■ しかし、少なくとも現状では、このシステムほどお粗末なものはない。マンションの財産価値が、このようなお粗末な組織に左右されるならば、ほとんどのマンションの価格はこれから低下の一途をたどるだろう

■ 管理組合の問題は、通常「共有地の悲劇」と呼ばれる現象と密接に関わる。ウォーレン・バフェットの言葉にあるように「レンタカーを洗って返す人間はいない」ということだ。自ら購入した車には、手洗い洗車・ワックスがけを欠かさない人は珍しくはないが、レンタカーの場合、洗車機で洗う人さえいない。それは「共有物」だからだ。

■ 同様に、村共同の牧草地は、自分だけのものではないから、将来のことなど考えずに放牧が行われ、最後は荒れ地になってしまう。それと同じことが、マンションにも起こりつつある。

■ マンションの管理組合が、まがりなりにも機能してきたことの方が不思議である。管理組合の理事長(または理事)の成り手がなかなか見つからないのも当然である。責任を負わされ、時間も取られるのに、無給であれば、ばかばかしい限りだからだ。

■ それでも、これまでなんとか理事長の成り手を見つけてくることができたのは、日本人の公徳心の高さの他に、「地域コミュニュティー」の助けが大きかった。マンションは1つのコミュニティであり、村の寄り合いや町内会のようなものがイメージされたため、それを守ろうとする人々の総意が、管理組合という仕組みをなんとか維持してきたのだ。

■ しかしながら、人口移動の激しい都市部では、このような自治組織を維持するのが困難になってきている。

■ マンションと株式会社はよく似た仕組みである。マンションでは、1棟のマンションを「区分所有」という形で各部屋ごとに別々の人々が所有するのに対して、株式会社では、1つの会社の所有権を「株式」という「区分所有権」に分割して大勢の人が所有する。

■ 初期の株式会社では、大株主が経営者になることが多かった。しかし、企業の巨大化と株式市場の発展によって「所有と経営の分離」が行われるようになると、業務に精通しない多数の一般株主が経営に直接関与することはほぼ不可能になる。そこで、「専門の経営者」を雇ってその経営者を株主総会などで管理していく形が一般化する。

■ 分譲マンションも「管理と所有」の分離の段階に来ているのではないか?密な地域社会はすでに崩れ、人の移動が頻繁に起こる。しかも、マンションは投資対象にもなり、所有者と居住者が違うことがごく普通になってきたうえに、外国人によるマンションの所有や居住も増えてきた。文化も風習も価値観も違う人々を片手間(基本的に無給)の素人の理事長がまとめていくのは困難である。

■ 現在のマンション管理組合は「時代遅れ」で制度疲労を起こしており、早急に抜本的改革を行わないと、日本中のマンションがスラムになる恐れがある。

■ 神戸市の「タワーマンションの認証制度」のように、何らかの対策をとろうとする姿勢は評価できるが、一地方自治体の手に負える問題でもない。届け出や認証などの管理を強化すればするほど、ボランティアの理事長の成り手はますます減る。

■ 理事長の報酬を含む「本当の管理コスト」を明示するように法律で強制し、「先払い」させることが重要である。価値観が多様な所有者に後から、追加支払いを納得させるのはかなり難しい。また、将来のためにマンションの解体費用も「先払い」させるべきである。

■ この先払いした金は、信頼できる機関に供託するようにするべきだが、この「信頼できる機関」を見つけるのがもっとも困難かもしれない

 

 本記事の筆者(大原浩氏)のプロフィールを確認したところ、外国為替を含む金融業界の専門家であり、マンションについて特に精通されているわけではなさそうです。

 

ただ、以下のような管理組合が抱える本質的な問題への指摘と提言は、まさに至言というべきで深く同意します。

*****************

①そもそも「性善説に立ったあまりに脆弱な組織」に運営を委ねている

②都市化の進行に伴う地域コミュニティーの崩壊に直面する中、役員のなり手不足が深刻化し、理事会の健全な運営ができなくなるマンションが増えるのは確実

③株式会社のように、「所有と経営の分離」を図るべき

*****************

 

当社が管理組合さんからの問い合わせを受けた際に、必ず説明しているテーマがあります。

 

それは、「管理組合が抱える4つのリスク」です。

(その詳細は、下記サイトを参照ください。)

 

note.com

この中で、3つ目のリスクとして挙げているのが、

「ずぶの素人」が運営する脆弱な体制 に関するくだりです。

 

管理組合の役員さんの仕事って、町内会や学校のPTAと同じく「貧乏くじ」だと思われてますよね?

 

でも、考えてみてください。

 

管理組合を巡ってかなり大きな単位のおカネが動いています。管理費と修繕積立金、駐車場使用料をあわせて毎月3万円払っていれば年間36万円。

 

100戸のマンションなら年間収益は4千万円近くにものぼります。修繕積立金にいたっては、10年も貯まれば軽く「億」を越える金額になります。

 

このマンションを巡る多額のおカネをどうやって運用するのかを、各区分所有者は理事長をはじめ管理組合の役員たちに委ねています。

 

こうしてみると、管理組合とは「資産管理会社」であり、その理事会は「経営幹部・取締役会」と置き換えることができます。

 

でも、管理組合を会社組織と比較した場合、明らかに異なる点があります。

 

それは、組織の経営を担うのが、プロフェッショナルかそうでないか です。

 

 

多くの上場会社では、所有と経営が分離しており、経営幹部や会社の役員は株主から選任されるのではなく、そこで長年勤務した従業員などから選抜された「その道のプロ」です。

 

一方、管理組合は「所有も経営も同じ区分所有者」です。

 

つまり専門知識のない「素人」が理事会を運営するため、その双肩に将来(=マンション1棟の資産価値の増減)を託しているのです。

 

にもかかわらず、多くのマンションでは輪番制を採用し、理事会役員は毎年のように交代で運用するのが慣例になっているのが実情です。(その結果、管理会社に理事会の運営自体も丸投げしてしまっている管理組合が少なくない・・・)

 

つまり、「多額のおカネの使い道を管理して専門的な知識が求められる」のに、「町内会やPTAと同じような半強制ボランティア方式の人事で運用している」のが管理組合運営の最大のリスクだと言えます。

 

ただ、筆者も最後に述べているように、所有と経営を図る上で区分所有者が託すことのできる「信頼できる機関」が現状不在です。

 

それは、管理会社か、マンション管理士か、各自治体か、それとも別の以外の誰かか?  

その「担い手をつくる」こそが、最大のテーマかもしれません。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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マンション管理会社の不正行為がなくならないのは、原因の分析が上っ面だから

 

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2月12日のニュース配信サイト「Net IB News」で、「従業員が管理組合財産を着服~東京都のマンション管理会社に監督処分」と題した記事が掲載されていました。

 

www.data-max.co.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 国交省の関東地方整備局は2月6日、東急不動産グループのマンション管理会社:コミュニティワン(株)に対し、監督処分を行った。同社は2015年と2018年にも同様の理由で監督処分を受けており、今回で3回目の処分となる。

 

■  同社が管理受託している複数の管理組合で、同社の従業員と再委託先の従業員が、管理組合財産(修繕積立金など)を不正に着服していたことが判明した。

 

■  また、マンション管理適正化法施行規則において「区分所有者などから徴収した修繕積立金等を収納口座に預入した後、管理事務に要した費用を控除した残額を翌月末日までに保管口座に移し換える」と定められているが、同社はこの移し換える作業を行っていなかった。

 

■ 同社は取材に対し、「(今回の不正行為は)管理組合の決算書を確認した際、実際の予算より多く計上されていたため社内調査を行ったところ、同社従業員と再委託先の従業員が、備品購入時に日用品などの私物を合わせて購入していたことが判明した」と説明した。

 

不正に加担した従業員は11名、着服金額はおよそ370万円にものぼる。着服分については組合に全額弁済され、対象の社員は社内規定にもとづく処分が下されている。

 

不正の背景について同社は、「これまで他社からのリプレイスやM&Aなどにより管理物件を増やしてきたが、その際、元の管理会社の方法を踏襲して管理していた。結果として管理組合ごとに異なる管理方法が混在し、それぞれの管理体制の把握ができていなかったことが今回の事態を招いた」と説明している

 

■ 今後については、「これまでバラバラだった管理方法の統一化を図り、支店ごとに行われていた管理業務も本社で一括化する。監査法人に委託して会計処理マニュアルを作成し、それに沿って適正な会計処理を行っていく」としている。

 

なお、本処分に関する国交省の発表は下記サイトを参照ください。

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000767933.pdf

 

管理会社の社員による組合財産の着服事件については、本ブログでも頻繁に取り上げ改善のための提言もしているので、もはやそれを繰り返す意欲も残念ながら湧いてきません。

 

ただ、本記事で気になったのは、記者からの取材に対する会社側のコメントです。

 

重要な点を以下の再度要約します。

***************************

<原因の分析>

他社からのリプレイスなどで受託した物件について、前の管理会社のやり方を踏襲した結果、社内で異なる管理方法が混在し、それぞれの管理体制の把握ができなかったことが今回の事態を招いた。

<改善のための施策>

管理方法の統一化を図り、支店ごとに行われている管理業務も本社で一括化する。管理業務については、監査法人を新たに設置したうえで会計処理マニュアルを作成し、それに沿って適正な会計処理を行っていく。

***************************

要するに、

個別の物件によって異なる管理体制について把握できていなかったことが、着服事件の原因と考えているわけです。

 

そのため、予防策として「管理方法の統一」や「会計処理マニュアルの変更」を行うとしています。

 

率直に言って、私には違和感しかありません・・・。

こんな勘違いも甚だしい分析にもとづく改善策で問題が解決するわけがありません。

 

そもそも本記事にも登場する「マンション管理適正化法」では、管理会社が月次会計報告書を作成のうえ、翌月末までに組合の理事長に送付することが義務付けられています。

 

重要なのは、その報告書をもとに、社内の誰がどのように不正やミスがないかをチェックしているのか?(ハッキリ言えば、していないのではないか?)です。

 

先日も、顧問先マンションの理事会で、月次報告書に不可解な現象が生じているので、フロント担当者に以下のような質問しましたが、彼は即答できませんでした。

 

・月極め駐車場の契約台数が変動していないにもかかわらず、その使用料収入が毎月激しく変動するのはなぜか?

・毎月自動引き落としになっているはずの防犯カメラの保守料金が前月計上されていないのはなぜか?

 

 なぜ私の質問に答えられないかというと、管理会社の社内で、会計処理業務は(フロント担当とは)異なる部署の社員が行っており、会計報告について相互でチェックしていないからです。

 

加えて言うと、

フロント担当者の上席であるマネジャーによる管理・監督もほとんど行われている痕跡がありません。

 

そのため日常的に発生するフロント担当の業務ミスや遅延・失念等も、クライアントである組合からクレームを受けない限り、一向に気づかないままという有様です。

 

つまり、根本的な原因は、社内の分業体制とそれに起因する管理監督ならびにコミュニケーションの不足にあると考えています。

 

もう一つ重要な原因は、基本的な会計知識の欠如です。

具体的に言えば、複式簿記のしくみを理解していないということです。

 

管理組合の会計は、原則として「発生主義」にもとづいて処理します。

これを言い換えると、「現金主義ではない」ということです。

 

この「発生主義」と「現金主義」の違い、分かりますか?

 

たとえば、毎月区分所有者が納める管理費は、組合にとっては収入です。

月次報告や決算書でも管理費は予算に対して毎月100%計上されているはずです。

 

ただ、それは預金口座にも100%あるということでは必ずしもありません。

発生主義の場合、請求した(された)金額ベースで収入(支出)を計上するからです。

 

しかし、実際には、管理費の滞納や口座への入金失念も時々発生します。

では、そのような場合は報告書のどこで確認するのか?

 

その答えは損益計算書ではなく、「貸借対照表」にあります。

 

貸借対照表の左側、「資産の部」には預金残高などが記載されています。

預金残高の下に「未収金」の項目があります。

 

管理費等に滞納が生じた場合は、この未収金に計上されます。

言い換えると、未収金がなゼロなら管理費等の滞納もないわけです。

 

こうした基本的な知識すらない人が処理すると、

月次収支報告の中に発生主義と現金主義が混在することになり、上記のような私の質問が出てくることになります。

 

発生主義を理解していない最もティピカルな例は、

マンション保険料」の計上方法に現れます。

 

保険契約は長期一括割引の優遇を受けるため、5年分の保険料を前払いするのが一般的です。

 

その際、今年の保険料と来年以降4年分の保険料をそれぞれ異なる科目で以下の通り仕訳しなくてはなりません。

・今年の保険料   ⇒ そのまま今期の費用(保険料)として計上

・来年以降の保険料 ⇒ 未経過分の保険料は「前払金」として資産の部に計上

 

管理組合の決算書を数多くチェックしてきましたが、未経過分を含めて当期の費用で全額計上しているマンションを時々見かけます。

 

しかし、管理組合側にも会計に明るい人が滅多にいないので、見事にスルーです。

 

こうした処理をすると、毎年の決算収支が実態以上に変動しているように見えるので、本当の分析ができにくくなります。

 

この程度のことは、「日商簿記3級」レベルの知識さえあれば十分対処できるのですが、残念ながら現実にはその水準に満たない人たちが数多く管理組合の会計処理に携わっていることが問題なのです。

 

こうした体たらくな業務実態を知ってか知らずか、「前の管理会社の方法を踏襲したから」とか「経理処理マニュアルを改正する」とか筋違いな分析と対応をしている限り、またこのような残念な事件が再発することでしょう。

 

<参考記事>

 yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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国交省の「マンションの管理状況の認定制度」に期待すること

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2月8日付けの日経新聞に、「マンション認定制度を創設 国交省、優遇措置も検討」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

 

■ 国土交通省は修繕費用の積み立てや管理組合の活動を計画通り実施する物件の認定制度を2022年までに創設する。認定物件には税制上の優遇措置などを検討する。

 

■ 適切に管理している物件を認定する「管理計画認定制度」を今の通常国会に提出予定のマンション管理適正化法の改正案に盛り込む。

 

■老朽化したマンションをそのまま放置しないようにする狙いがある。20年後には築40年を超えるマンションが現在の4.5倍の約370万戸に膨らむ見通しだ。

 

■ 国の調査では管理組合の3割超で修繕積立金が不足している。 具体的には地方自治体が修繕のための資金計画や実際の積み立て状況のほか、総会の定期的な開催や議事録の保管といった管理組合の運営状況などを評価する。自治体は改善の必要がある管理組合に対して助言や指導をするほか、必要に応じて専門家も派遣する。

 

■ 改正法案は22年までに完全施行するまでに優遇策の具体的な内容を詰める。業界団体からは修繕積立金や管理費の負担を軽減するための税優遇や、共用部分のリフォームに使う融資の金利優遇などを求めるがある。

 

■ 現状は部屋を購入する際に修繕積立金の不足や管理組合の活動状況まで説明されないことが少なくない。本認定制度の創設はマンションの管理状況も含めた物件選びに影響してくる。優遇措置などで優良物件が選ばれる流れが強まれば、不動産会社や管理会社の対応を促すことになる。

 

 分譲マンションの管理状況を公的に調査のうえ、評価・認定する仕組みを構築しようということのようです。

 

わが国の高齢化・人口減少傾向が急速に進行する中、今後新築マンションの供給が減少し、既存マンションの老朽化物件の割合が上昇していくのは確実です。

 

老朽化が進行するにつれ、修繕積立金の不足、役員のなり手不足が深刻化し、適切な修繕がなされないことに伴って資産価値が低下するだけでなく、酷い場合には管理不全状況に直面するマンションも今後増えていくだろうと予測されます。

 

総論としてはこの構想に反対する理由はありません。

ぜひ進めてもらいたいと思います。

 

マンション管理組合が抱える最大のリスクは、おカネの問題です。

具体的には、修繕積立金の「簿外債務」問題です。

 

本記事では、「管理組合の3割が修繕積立金が足らない」とされていますが、かなり過小に見込まれていると思います。実態はそんなレベルでは済まないはずです。

 

なぜなら、新築マンションのほとんどは、

修繕積立金が国のガイドラインの半分以下の水準で設定されているからです。

 

マンションの長期修繕計画には将来の修繕見込額を賄うための資金収支表も備えていますが、当初の修繕積立金では到底足らなくなるので、5年ごとに「倍々ゲーム」で増額改定するか、いよいよ足らなくなった場合には戸あたり数十万円単位で一時金を徴収するという計画が組み込まれているのが実情です。

 

しかし、その資金計画には何ら「担保」がありません。

将来の区分所有者が新築当初に比べて3〜4倍の経済的負担になることを事前に了承しているわけではないからです。

 

ましてや高経年マンションの場合、住人も高齢者が多数を占めているのが普通です。

 

マンションの購入時に比べて所得が減少したり、年金生活に入ることで可処分所得が下がる中、毎月の維持費が上昇することをすんなり受け入れられるとは思えません。

 

もし本記事の認定制度がスタートした場合、このような修繕積立金の実態をふまえてどのように評価するのでしょう?

 

段階的増額プランではなく、均等積立方式で運営するよう管理組合に促すことが理想的ですが、その場合はほとんどのマンションが「落第」してしまうので、きっとそこまで厳しい評価はできないでしょう。

 

段階的増額プランでも一時金徴収方式でも、「資金を賄える形式」さえ整っていればOKにするのではないかと予想します。

 

したがって、財政状況を含めて優れたマンションを積極的に評価するという制度を期待するのは難しいと思うのです。

 

むしろ、本制度には「問題児のマンションを見つけて矯正する」という役割を期待したいです。

 

具体的には、通常総会すら適法に開催されず、決算書の所在も不明な管理不全状態のマンションをあぶり出し、これらに改善を促し、公的な支援を含めて正常化させる仕組みができれば「御の字」ではないかと思います。

 

ただ、こうした正常化を促す過程で障害になるのが、

管理規約の制約に絡む「トートロジー」です。

 

管理不全に陥ったマンションを救済するための施策を実行したくても、管理規約にもとづいて総会決議がなされないと何もできないというのが実情です。

 

たとえば、たとえ法的には可能な外部の管理者の導入をしたくても、現行規約の改正が必要になれば区分所有者の4分の3以上の賛成を集めなくてはなりません。

 

そもそも規約の改正が実現できるくらい民度の高い管理組合なら、管理不全には陥ることはないわけで、全く矛盾しています。

 

つまり、現行法の枠組みでは組合の内部機関が正常に機能していないマンションを外部の力だけで立て直すことが現行法では不可能なのです

 

建て替えにしろ、建物解体後の敷地売却にしろ、現行法の枠組みでは、区分所有者のほとんどが関与しない限り老朽化マンションは「出口」が見つけられず立ち往生に陥ってしまいます。

 

私権の制限を含めて政策的に何らかのメスを入れない限り、根本的な問題解決にはならないでしょう。

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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福岡の「欠陥マンション」トラブルで考える、マンション管理組合の「教訓」とは?

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2月4日付けの福岡県民新聞に、「JRブランドのマンションでトラブル」という記事が掲載されていました。

 

さらに、ネットで検索してみると、「福岡市東区の分譲マンションが傾斜 販売業者の対応に憤る住人」と題した、より詳細な記事が見つかりました。

 

www.data-max.co.jp 

これら2つの記事を合わせて要約すると以下の通りとなります。

■ 昨年12月、テレビのワイドショーで取り上げられた欠陥マンション疑惑。床に置かれたビー玉が勢いよく転がったり、玄関ドアが開かなくなったり、というショッキングな映像とともに、憤るマンション居住者の落胆する姿が映し出されていた。
 
■同マンションは、JR九州が平成6年の新駅開業に合わせて販売したもので当時の販売価格は3000万円前後。JRブランドで人気が集まり、倍率30倍の部屋もあったという。
 
■ところが、入居後2年目にして建物のひび割れが見つかったほかに、玄関ドアが開かない部屋が複数あることがわかり、5戸については玄関ドアの取り替えで対応することとなった。
 
■その際、造上の欠陥が疑う声もあったが、売主側から「主要構造部分への影響がない」との確約書が管理組合に提出され、一旦は落ち着いていた。
 
■その後約20年が過ぎ、玄関ドアを交換した5戸のうち2戸のドアが再び開閉困難となった。
 
その後に建物が傾斜していることが発覚し、管理組合が調査した結果建物の傾斜は最大で98mmもあった。これに起因して「玄関ドアの枠が変形し、開閉しづらく交換した部屋もある」「天井と壁の境目に隙間ができて、隣の部屋からの光が漏れている」などの“症状”が表れている。

 管理組合とゼネコンを含む販売業者側との協議が続いた。 販売業者は「不具合は主要構造部分に起因するものではない」「不具合が主要構造部分に影響を与えることはない」などと回答している。建物の傾斜についても、「建物の傾斜の原因は特定できない」「今後 原因追究は行わない」と区分所有者を突き放す回答をしている両者の協議は決裂し、2019年5月、調停は不成立となった。

 

マンションの傾斜問題で焦点になるのは、杭の支持層への到達である。建築の専門家のコメントを紹介すると、

・傾斜地の支持地盤は敷地の表面の傾斜を見て判断するものではなく、適切な地盤調査に基づいて、敷地内で一定ではない支持地盤の深さを推定し杭の長さを決定する。

・設計の時点では、杭ごとの支持地盤の深さは推定であるので、施工時に支持地盤の深さを確認し、杭が支持地盤に到達するように施工をする。

・そのため、このマンションの杭は工場で製作する既製杭ではなく、現場を掘削し支持地盤を確認して施工をする「場所打ち杭」が採用されているのではないか

・このマンションが傾斜した原因は施工時の手抜きにより、杭が支持地盤に到達していないことによるものとみて良いだろう

 

同マンションは、時期をずらして複数棟が建設されているが、施工上の不具合が生じているのは、問題の棟だけ。今年1月から詳細な調査が実施され、マンションの傾斜などの不具合の原因が明らかになる予定だ。

 

 このマンションが最大10センチ近くも傾斜した原因と推測される「杭の支持層への到達」の有無についてはさらに詳細な調査が今後実施されるため、その結果を見ないことには何とも言えません。

 

ただ、これまでの経過を見て惜しまれるのは、築2年目で生じた各所の不具合(建物のクラック、玄関扉の開閉ができない)に対する原因追及の方法です。

 

その際には、「主要構造部には影響がない旨の確約書」を売主と取り交わし、修繕工事は売主負担で実施することで一旦落着したとのことです。

 

しかし、この時点で真の原因を特定するために、売主との利害関係のない第三者の専門家による精密調査が行われていれば、もっと違う展開になったように思うのです。

 

顧問先のマンションでも、本記事ほど深刻な事案ではないものの、新築工事の際の瑕疵に起因する不具合のケースに遭遇したことがあります。

 

その一例をご紹介しましょう。

■ 東日本大震災の際に外壁タイルが大量に落下したことから、不審に思った管理組合が施工方法に問題がなかったか管理会社(売主の系列会社)に確認させたが、「特に大きな問題はない」との報告を受けた。

■ その2年後に大規模修繕を実施したところ、外壁タイルに異常な割合で浮きなどの不具合が見つかったため、当初予算の5割増しの負担強いられることになった。

■ 新築時の工事に手抜きがあったのではないかとの疑念が生じたものの、すでに築10年をゆうに超えていたため、瑕疵補修の請求は諦めざるを得なかった。

 

このマンションでも、最初の大量のタイル落下事故が発生した時点で第三者による詳細な検査を受けていれば、売主に瑕疵補修請求ができていた可能性があったと思います。

 

しかしながら、調査の依頼先に「売主の子会社」である管理会社を選んでしまったため、真の原因が究明されずに終わってしまったように推測されます。

 

本記事を含め、この種のトラブル事例から得られる管理組合にとっての教訓は、以下の通りです。

・現時点で建物に不具合等が生じていなくても、建物の瑕疵(施工不良、手抜き)の調査は、アフターサービス期間(主要構造部の瑕疵は、築10年まで保証するのが一般的)が終了するまでに実施しておく。

 

・その調査の依頼先は、売主と利害関係を持たない「第三者の専門家」を選定する。

 

なお、建物の基本的な安全性を損なう欠陥が見つかった場合には、その危険度の如何を問わず、「不法行為責任」が成立します。(下記の記事参照)

 

 <参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 
その際には、被害者(管理組合や区分所有者)との契約関係の有無を問わず、注意義務を怠った設計者、監理者、施工業者にも損害賠償責任を問うことができます


 
なお、不法行為責任の消滅時効は、行為の時から20年です。

(損害を知った時からは3年)

 
分譲マンションの場合、「アフターサービスは最大10年間」が一般的ですが、この不法行為責任についても、覚えておくとよいでしょう。

 

  

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駐車場の収入に依存するマンション管理組合が多いのはワケがある!

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1月30日付の毎日新聞に、「マンション機械式駐車場が「お荷物化」している事情」と題した記事が掲載されていました。

 

mainichi.jp

本記事の要約は以下の通りです。

 

■ 昭和の時代には、ほぼすべての人が駐車場使用を希望し、なかには2台の駐車スペースを借りたいという人もいた。マンションの駐車場については、設置台数が多ければ多いほど喜ばれ、平成に入ってからは「全戸確保」が理想像であった。


■ ただ、マンションの敷地内で「駐車場設置率100%」を達成するのは容易ではなく、機械式駐車装置を使用することが多かった。この機械式駐車場が多くのマンションで「お荷物」になっている。


■ 機械式駐車場はパレットを動かす電気代や保守点検料など維持費が高いからだ。機械式駐車場の月額使用料を仮に@1万円として、全150戸のマンションで150台分の機械式駐車場がフル稼働している場合、毎月150万円の駐車場使用料が管理組合に入ってくる。


■ この収入がすべて維持費にまわっている場合、駐車場利用者が減れば、影響が大きい。たとえば100台分しか利用されないと、維持費が50万円が不足する。


■ この不足分を管理費から補おうとすると、今度は管理費が足りなくなる。そこで、管理費を値上げしようとすると、「駐車場を使っていない人間からお金を取るのか」と反対する人が出てくる。


■ 空いている駐車スペースを外部に貸し出すというプランも考えられる。だが、セキュリティー上の問題が生じたり、賃貸収入について管理組合に法人税課税されたりするなどの問題があり、簡単にはできない。


■ マンションの機械式駐車場は転用しにくく、使わなくても維持費が発生し続ける。さらに、機械式駐車装置の寿命が尽きたときに、装置全体を交換しなければならない、という大きな問題もある。


■ 利用率が下がったからといって、装置を撤去し、平らな場所に埋め戻すにはお金がかかる。埋め戻す工事の期間や、利用中の車をどこに置くかなどの問題があるため、簡単にことは進まない。


■ 首都圏の新築マンションでは、駐車場設置率30〜50%というケースが増えた。一方、駐車場設置率が高いマンションでは平面式駐車場や自走式駐車場(3階建て以上の駐車場棟で、自ら車を運転して自分のスペースまで行く方式)が主流である。

 

 マンション管理組合の運営を支える「財布」は、2種類あります。

それは、「一般会計(管理費会計)」と「修繕積立金会計」です。

 

前者は、毎月納付される管理費や各専用使用料を収入源としながら、管理会社に支払う管理委託費をはじめ、電気料、保険料、小修繕費などの経常的な支出を賄っています。

 

上記の「専用使用料」の中で最も大きな割合を占めるのが、本記事で取り上げている「駐車場使用料」です。

 

これまで多種多様なマンションの決算書を拝見してきましたが、一般会計の収益の中で駐車場使用料への依存度が高い管理組合が少なくありません。

 

典型的な例として、コンサルティング先の某マンションを紹介しましょう。

(経常支出については、管理コスト適正化以前の状況です)

 

【一般会計】

   ・管理費(月額)  :157円/㎡

   ・専用使用料(月額):180円/㎡

   収入合計(月額)  :337円/㎡

   経常支出(月額)  :316円/㎡

 

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このマンションで特徴的なのは、管理費の単価が新築マンションの平均値に比べて7割程度とかなり割安なことです。

 

ただその一方で、経常支出が「管理費の2倍」にも及ぶ負担となっています。

 

その差額を補っているのが、各専用使用料の収入なのですが、その大部分を機械式駐車場の収入が占めています。

 

現状の一般会計において収支剰余金は差引き21円/㎡となり、剰余金の収入に対する余裕率は6%あるため何ら支障は生じていません。

 

 

 ただ、このマンションのような駐車場収入に依存する収支構造は、昨今の住人の高齢化や若者のクルマ離れのトレンドを考えると非常にリスキーです。

 

もし将来駐車場の稼働率が低下し、専用使用料が現状より2割減ったら、一般会計は赤字に転落してしまいます。

 

さらに大きな問題は、修繕積立金会計にも潜んでいます。

 

国交省の「標準管理規約」では、専用使用料の取り扱いについては以下のように定められています。

第29条(使用料)

駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる

 

つまり、本来的には保守点検にかかる経費を差引いた残りの収入については、修繕積立金会計に振り替えることが望ましいのです。

 

しかしながら、このマンションの場合、駐車場のすべてが機械設備にもかかわらず、駐車場収入の全額が消費の財布(一般会計)に注ぎ込まれています

 

それでは、なぜこのような会計の運用になっている管理組合が多いのか?

 

その背景には、

管理費をなるべく安く見せたいという売主(デベロッパー)の意図があると思います。

 

新築当初の修繕積立金が人為的に低く設定されているのはすでに周知の事実ですが、管理費についても実は同様の「仕掛け」がなされているのです。

 

つまり、管理費と修繕積立金というランニングコストをなるべく「安く見せる」

⇒ マンション購入者の可処分所得が「増える」(ように見える)

⇒ マンションの販売価格を高く維持できる(=デベロッパーの収益最大化)

につながるからです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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自治体による分譲マンションの情報開示制度は機能するか?

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1月16日付の日経新聞に、「神戸市、マンション認証制度白紙に 積立額など開示案」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

 

■ 神戸市は15日に開いたマンション管理支援制度検討会で、管理状況が良好な市内の分譲マンションを優良として認証する制度の創設案を取り下げる方針を明らかにした。

 

■ 代わりに修繕積立金の総額や滞納状況などを任意で公開する情報開示の仕組みを提示した。認証制度がなくても市場の評価材料になるとみており、2020年度中に制度開始をめざす

 

■ 本検討会に提示した案は、管理状況に関する市への「届け出」と、市のホームページで管理の詳細を公開する「情報開示」の2本柱となる。

 

■ 届け出制度は規模を問わず、市内の全分譲マンションを対象に3年に1回、総会の毎年開催や積立金徴収の有無などの届け出を義務付ける方針。自治会との交流や防災訓練実施の有無なども把握したい考えだ。

 

■ 届け出したマンションを対象に、管理状況の詳細を外部からも評価できる情報開示制度を設ける。積立金徴収の有無だけでなく、積立金の総額や借入金の残高、大規模修繕の履歴や今後の計画などの公開を検討する。提出は任意で、毎年の情報更新を想定する。両制度とも管理組合の総会や理事会の議決を条件とする方針だ。

 

■認証制度については「管理組合から一気に書類が提出された場合、市に迅速な処理能力があるのか」といった懸念の声も上がっていた。

 

■ これに対し、市は「情報開示できること自体がインセンティブになる。買う人に評価されれば情報開示を目指すようになる」と説明する。情報開示の仕組みや開示内容を充実させることで認証制度までは不要と判断した。

 

■  マンションの適正管理制度をめぐっては、東京都が管理組合の届け出を受けて「優良」と評価する制度を運用している。ただ、積立金の総額や借入金の残高などの公開まで踏み込むのは全国でも初の試みとなる。

 

■  検討会の出席者は「(マンションの比較で)統一的に出せるのは滞納件数と総額ぐらい。1年後に会計が悪くなるとマンション側が訂正しないケースもあるのではないか」と課題を指摘した。

 

■  識者からは「虚偽の情報で取引され、被害が出たときは論点になる。罰則は現実的でないが、自発的に正しい情報を出すような仕組みが必要だ」との意見が挙がった。

 

■  神戸市長は、情報開示制度について「強制するわけにはいかないが、適切な管理の要素として積立金や滞納の状況などは重要な情報」と話した。

 

神戸市のマンション認証制度の構想とは、

分譲マンションの管理実態を行政が把握したうえで管理状況が芳しくない管理組合には適切な支援を行うとともに、管理状況が良好なマンションには行政が「認証」によってお墨付きを与えることで、市場価値を向上させようというものでした。(下図参照)

 

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本記事では、この構想のうち「優良マンションの認証制度」は見送って単なる「情報開示」に代えることを検討中、ということです。

 

ただ、もし本記事のとおり、3年1回の頻度での管理組合の届け出義務とその情報開示の制度にとどまるなら、この制度の「目玉」がなくなったように思えます。

 

また、管理組合や購入検討者などの関係者にとってのベネフィットもさほど感じられないので、制度としての持続可能性は極めて低いと考えます。

 

そもそも、個人が中古マンションの購入を検討する場合、(仲介業者を介して)下記のような物件情報の開示を求めることが可能です。

・総会議案書

(管理費滞納状況、積立金残高を含む決算の実績および予算収支がわかる)

・管理規約・使用細則

(管理組合の運営ルールの概要がわかる)

・長期修繕計画書

(今後30年の修繕予定と資金収支の計画がわかる)

 

したがって、(タイミングによっては)必ずしも最新ではないマンションのデータを開示されたとしても、特に有難いわけではないのです。

 

そのため、情報を閲覧する側には特にメリットがないうえ、情報開示が義務付けられるとそのための事務手間が増えることになります。

 

行政が関与することを前提とすれば、制度が目指すの本来の目的を踏まえて、

管理や財政状況の悪いマンションをあぶり出しつつ、いかに改善を促すか」ということに注力すべきだと思います。

 

そして、もし私が本検討会の委員だったら、以下のような提案をするでしょう。

 

(1)日管蓮の「マンション管理適正化診断サービス」を活用せよ!

 

本診断では、診断資格を有するマンション管理士が組合資料一式を閲覧しながら理事長との面談を経て診断した結果をレポートを作成するので、管理組合には特に手間や負担もありません。(しかも無料!)

 

レポートを見れば一目瞭然で、マンション管理状況の良し悪し(S・A・Bの3段階)を客観的に判断できますし、行政として把握しておきたい情報は概ね入手することが可能です。

 

yonaoshi-honpo.co.jp

 

(2)診断レポートの開示と指摘事項に関する定点観測を行え!

診断レポートには、診断結果の総評と改善提案のページも用意されています。

 

たとえば、

・理事会や総会が定期的に開催されていない

・3か月以上の管理費滞納がある

・5年以上長期修繕計画が更新されていない

・消防など設備点検の不具合が解消されていない

といった問題の指摘があれば、それらを次回の診断までに解消することを管理組合に要請すればよいわけです。

 

行政としては、管理組合の事前承諾を得たうえで、過去分を含めて診断レポートをアーカイブとして保管しながら、開示すればよいと思います。

 

もちろん、診断結果の優良なマンションはリセール・バリューの維持向上にも資すると考えられるので、管理組合にとって開示するインセンティブにもなるでしょう。

 

逆に言えば、

診断結果の開示に応じないマンションは「推して知るべし」というわけです。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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