マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「マンション防災対策セミナー」に参加してみた!

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先週土曜日の午前中は仕事が入っていなかったので、大手管理会社主催の「マンションの防災対策」セミナーに参加してきました。

 

対象は管理組合の理事でしたが、「無料招待」ということもあってか、100名くらいの参加者で会場はすでに混み合っていて盛況でした。

 

セミナーは2部構成。

第1部は、危機管理教育研究所 国崎伸江氏による講演

第2部は、防災備品を取り扱っている複数の業者からのプレゼン

といった内容でした。

 

第1部の講演がとても役立つ内容でしたので、「さわり」部分を以下ご紹介します。

 

(1)同じマンションでも地震のタイプによって影響が大きく異なる!

  低周期地震動の場合 ⇒ 低層フロアに影響大

  長周期地震動の場合 ⇒ 高層フロアに影響大(Ex:東日本大震災)

地表の揺れが震度3程度でも、高層階では「震度6級」の揺れに感じることも・・

(低層階の防災センターや管理室では、高層階の揺れの大きさは感知できない)

 

(2)死傷者を出さないための事前対策が重要!

 家具・ 棚に収納されている本・食器類等が落下して死傷者が発生する事例が多い

 ・家具の固定化、柔らかくて軽い素材への変更

 ・収納物の落下防止策として「滑り止めシート」(厚さ2㎜以上)を手前に貼る。

 ・キャスターは対角線上にロックをかけると有効。

 ・今流行りの「組立て式家具」は揺れに対して弱いので要注意。

 

(3)災害後も自宅で暮らせるように備える!

「災害に遭ったら、避難所に行けばよい」というのは甘い考え。現実には様々なストレスや犯罪などのリスクが伴うため、可能な限り自宅で暮らせるようにすべき。

 

そのためには、家庭内で食品を十分備蓄することが大切。

 ・備蓄の目安は10日分

 (冷蔵庫内の食品 ⇒ 常温用の備蓄品 ⇒ 非常食の順で消費していく)

 ・ガス・電気停止に備え、「卓上コンロ」(+カセット型ガスボンベ)は必須。

 

(4)マンション管理組合としての対策

 ① 災害対策本部設置の際に必要なアイテム類の購入と保管

ホワイトボード、筆記用具、模造紙、発電機、ラジオ、カッター、ガムテープなど

 

 ② ファースト・ミッション・ボックスFMB)作成の勧め

災害発生の時間帯によっては、管理組合の理事たちが不在の可能性も十分ある。

マンション内の誰でも5人以上いれば初動のオペレーションが迅速かつ円滑に行えるようにするためのツール

<手 順>

a) 5班分のミッションファイルを準備する

 「災害本部レイアウト班」、「安否・避難情報確認班」、「救助・救護班」

「消火・被害調査班」、「仮設トイレ設置・資材管理班」

 

b) 各班の指示カードを(1指示につき1枚)作成してファイリングする

 

FMBの完成イメージについては、以下のフロー図を参考にしてください。

国崎伸江氏の防災コラムより】 

 

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災害対策本部を特定のメンバーで構成することが「常識」とされている風潮には以前から疑問を感じていたので、この「FMB」作成のアイデアにはとても共感できます。

 

なお、FMBの専用サイトも今月末に開設される予定とのことでした。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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マンション管理業者の違反行為が止まらない・・・!

 

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10月9日付のNETIB-NEWSで、「福岡市のマンション管理業者に営業停止処分」という記事が掲載されていました。

www.data-max.co.jp

この記事を要約すると、以下の通りです。 

■ 10月2日、国土交通省は福岡市の管理業者「(株)西日本ビル代行」に対し、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」違反に伴い「業務停止」などの監督処分を行うと発表。

■ 業務停止命令および指示処分を受けた場合、30日間はマンション管理業に関する新規の契約を結べないほか、再発防止措置を講じるよう求められる。

■ 処分の理由は、マンション管理組合が毎月の管理料や修繕積立金などを出し入れする収納口座の通帳と印鑑をマンション管理業者が保管する場合、業者の私的流用や倒産による損失を防ぐために、「管理費保証制度」に加入する必要があるにもかかわらず同社はそれに加入していなかった。

■ 2016年12月、同社が管理を受託しているマンションの組合員から、「管理業者から法律に基づいた書面が組合に提出されているか」という旨の問い合わせがあったことから、今回の違反が発覚した。

■ 取材に応じた同社は、「法改正の際、制度変更を当該マンション管理組合の理事長に説明したが、管理費の値上げにつながるため、納得いただけなかった。」とコメントしている。

 

つまり、本記事の管理業者は、「 マンション管理適正化法」に違反したために業務停止処分を受けたわけですが、それが具体的にどんな違反行為なのかが分かりづらいと思います。

 

この記事を読み解くポイントは、

管理費・修繕積立金の収納方法」と「管理費等保証制度」の2点ですが、これらについて以下解説しましょう。

 

(1)管理費・修繕積立金の収納方法

一般的に、毎月徴収される管理費等は以下のように収納・保管されます。

①まず、毎月、区分所有者の口座から自動振替え(もしくは振込み)によって、管理組合理事長名義の「収納口座」に入金がなされる。

②管理事務に要した費用(管理委託費、水光熱費など)が控除される。

③残額を、翌月末日までに収納口座から「保管口座」に移し換える。

 

この一連の収納・保管業務を、管理会社が代行するのが一般的です。

あるいは、管理会社から「集金代行会社」に再委託することも少なくありません。

<集金代行会社に委託している場合には、区分所有者の口座から集金代行会社の口座に振り替えたあと、管理組合又は管理会社の収納口座に収納することになる>

 

管理会社による組合財産の着服等を防止するため、管理組合の「保管口座」に係る管理組合の「印鑑」は原則として管理会社が管理するのはNGです。

 

保管口座には、多額の修繕積立金と管理費会計の繰越剰余金が集まる重要性の観点から、管理会社が(通帳はOKですが)カード・印鑑等まで預かれないのです。

 

一方、「収納口座」については、上記のフローのとおり、毎月1ヶ月分の管理費等が預け入れされるものの、翌月末までには保管口座に経費控除後の残金が移管されて一旦残高ゼロになるため、保管口座に比べるとリスクは低いと言えます。

 

そのため、事務代行業務の効率性の観点から、管理会社が「収納口座」に関する印鑑・カード・通帳等を管理することも「条件付きでOK」としているのです。

 

その「条件」こそが、管理費等の保証契約締結です。

 

(2)管理費等保証制度

管理費等保証制度は、「マンション管理適正化法」で規定される指定法人として、「一般社団法人マンション管理業協会」が行う保証制度です。

 

一般社団法人マンション管理業協会は、マンション管理会社の国内唯一の所管団体で、マンション管理会社308社(平成30年3月現在)が協会保証機構に加入しています。

 

■ 保証が受けられる管理組合

保証機構に加入する管理会社と管理委託契約を締結している管理組合で、かつ管理会社から保証機構に対して届け出のあった管理組合

 

■保証の対象となる管理費等

管理組合が毎月徴収している管理費、修繕積立金、各専用使用料等。(一時的に徴収する工事分担金及び借地料、町会費、CATV使用料等は対象外)

 

■保証する債務

管理会社が倒産等により、管理組合に対し管理費等の返還債務を負うこととなった場合、協会が管理会社に替わって管理費等1ヶ月分の額を限度としてその返還債務を履行するものです。(ただし、管理組合に故意または過失があると認められた場合には、この限りではありません。)

 

保証対象となった管理組合には、マンション管理業協会から「保証委託契約受諾証明書」が管理会社を通じて交付されます。(下の画像参照)

 

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さて、本記事の違反行為に話を戻すと、

この管理会社は「収納口座」の通帳だけでなく印鑑も預かっていたにもかかわらず、管理費保証制度に加入していなかったため処分を受けたというわけです。

 

それにしても不可解なのは、

この管理会社のコメントにある「制度変更を管理組合理事長に説明したが、管理費の値上げにつながるため納得いただけなかった。」という発言です。

 

保証契約を締結できないなら、収納口座の印鑑を預からないという選択肢もあったのに、なぜこの方法に固執しなければならなかったのでしょうか?

 

しかも、あたかも管理組合にも道義的な責任があるかのような主張ぶりです。

 

「開いた口が塞がらない」というのは、このようなケースを言うのかもしれません。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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管理会社が長期修繕計画を作成すると、修繕積立金がさらに足らなくなる!?

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顧問先のマンション管理組合(30戸)では、長らく放置されてきた長期修繕計画の更新に今年着手することになり、その業務を委託先の大手管理会社に発注しました。

 

先日、その更新案について説明を受けたのですが、いやはや驚きました。

 

このマンションの場合、前回作成した際には30年間で必要な資金はおよそ2億円。

国交省のガイドラインとほぼ同水準の金額でした。

 

これを均等積立方式を前提に専有面積あたりで換算すると、

月額210円/㎡程度です。

 

ところが、管理会社が作成してきた長計上の金額はその2倍のなんと4億円!

つまり、月額あたり400円/㎡を超える水準でした。

 

ちなみに、付設駐車場は平面式のため、機械式駐車場の修繕費の加算は不要です。

 

また、エレベーター1基の4階建て(地下部分もなし)、通常の外廊下方式の極めてスタンダードなマンションで、特段考慮すべき事情等はありません。

 

ただ、大規模修繕を12年毎に実施する周期のため、計画期間との兼ね合いで通常2回分のところ、今回3回分が含まれてしまっていました。

 

それが増額に影響しているのは確かですが、それでも倍増というのはあんまりです。

 

フロント担当者にその点を指摘したところ、

工事費の単価等は自社の受託実績をもとにその平均値をもとに積算している」とのこと。

 

それを聞いて、「謎」が解けました。

割高になりがちな管理会社の受託実績を反映させているからです!

 

フロント担当者もさすがに「国交省ガイドラインの2倍」は拙いと思ったのか、

再度見直しさせて欲しいとの話になり、その後実質的に200円台後半の水準に改訂された計画で再提出されました。

 

長期修繕計画に、工事の実績金額を反映させること自体は合理的な試みです。

 

が、それが適度な競争原理が効いた環境下のものでなければ、修繕資金の想定額が以前よりも大きく膨張する可能性があるので注意が必要です。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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管理費会計が苦しいからと言って、修繕積立金会計の剰余金組入れはNG!

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管理委託費の適正化診断を依頼されたマンション管理組合の直近の決算実績を確認していたら、修繕積立金会計から管理費会計に100万円強の資金組み入れが行われていることに気づきました。

 

修繕積立金の使途については、国交省の「標準管理規約」で以下のように定められています。

積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。


1. 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
2.不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
3. 敷地及び共用部分等の変更

 

したがって、管理費会計の資金がショートしたからと言って、安易に修繕積立金会計の資金を流用するのはNGなのです。

 

この管理組合の決算データを精査してみたところ、この「資金組入れ」を行った背景にはマンション保険の契約更改があったことが分かりました。

 

マンション保険の場合、「1年契約」と「5年契約」の選択が可能です。

契約期間が長い方が保険料の割引を受けられるので、一般的には5年契約を締結するケースが多いと思います。

 

ただ、5年契約を選択した場合は、手続き上5年分の保険料を一括精算する必要があります。

 

もし管理費会計の「繰越剰余金残高」が4年分の前払保険料に満たない場合、あるいは剰余金があっても管理費の滞納などの理由でキャッシュが不足している場合には、管理費会計の範囲では精算できないことになります。

 

このマンションの場合も、まさにその通りで、繰越剰余金はそこそこあったものの、管理費の滞納も発生しているため、管理費会計だけでは完結することが当時は難しかったものと推察されます。

 

ただ、一時的な資金ショートであれば、「資金組入れ」という手段ではなく、「預り金」という負債勘定で処理すべきだったと思います。

 

つまり、本来は管理費会計にある資金で保険料全額を精算すべきところ、一時的な資金ショートが生じたために修繕積立金会計から不足分を借り入れるということです。

 

それによって、管理費会計から支払った前払保険料を修繕積立金からの「借入れ」で賄ったという事情が貸借対照表で明らかになるため、組合員の皆さんにも組合の財政事情が正しく伝わります

 

ちなみに、この管理組合では、5年分のマンション保険料を1年の会計期間で全額を一括計上していました

 

正しくは、当期分の保険料だけを費用計上し、残額(未経過分の保険料)は「前払金」(資産の部)に計上すべきです。

 

今回のケースは、プロであるべき管理会社が、管理規約上の制約や「複式簿記」の本質(=キャッシュフローと会計収支の違い)を理解していないことが露呈した典型的な事例だと思います。

 

 <参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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インターホン設備の更新は、マンションの警備コスト削減のチャンス!?

 
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現在コンサルティングしている管理組合で、今春、管理会社のリプレイスによって管理委託費の適正化に成功したマンションがあります。

 

ただ、管理会社を変更しても、管理委託費の中で「遠隔監視」(いわゆる機械警備)業務については1円も下げることができませんでした

 

なお、遠隔監視業務とは、概ね以下の業務内容を指します。

■ 共用設備の異常監視ならびに緊急対応業務
■ ホームセキュリティ業務(専有住戸内の火災、非常通報、防犯など)
■ 各住戸鍵の預かり

 

この費用がまったく削減できなかった背景には、巧妙なからくりがありました。

 

このマンションの集合インターホン設備は「警備会社によるOEM供給の商品」です。

 

そのため、共用部のみならず各専有住戸内の火災や防犯等の警報監視も含めて一体化した構造になっており、他の警備会社に変更することが事実上できなかったのです。

 

その結果、競争原理が働かず、警備費用にメスを入れることができませんでした。

 

ところが、

ここに来てその警備会社から、「インターホン設備をそろそろ更新しませんか?」という提案がなされました。

 

このマンションは今年で築15年目を迎えるのですが、インターホン設備の更新周期も概ね15年周期とされており、「ちょうどいい頃合い」だったわけです。

 

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警備会社からは、セキュリティシステムと一体化していることを「売り」に、自社製品(OEM供給)による更新を当然のように勧めてきます。

 

ちょっと待った! 

 

今こそ「千載一遇」とも言うべき見直しのチャンス到来です。

 

まず、

警備会社をフリーに選択できるインターホン設備も検討の選択肢に加えます

 

それにはどうすればよいのか?

インターホンメーカー(もしくはその代理店)から直接購入すればよいのです。

 

国内メーカーである「アイホン」もしくは「パナソニック」の製品なら機能・品質的にまず問題はないでしょう。

 

また、複数のルートから相見積りを取得すれば競争原理が働くので、予算額よりも下げることができます

 

次に、

警備会社から遠隔監視業務の相見積りを取るよう、(元請けの)管理会社に依頼します

 

その状況を認識すれば、今の警備会社はリプレイスされないように遠隔監視業務の委託金額を見直して条件提示してくるはずです。

 

実際、このマンション(約100戸)では、

現在年間約120万円の警備費が70~80万円台の水準へと大幅に下がる見込みが立ちました。

 

これにて管理委託費の適正化プロジェクトも、すっきり完結できそうです。

 

なお、ご自分のマンションでは、いかほどの金額が妥当なのかを事前に確認したい方は、下記のサイトにアクセスしてみてください!

 

             f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 <参考記事>

 

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【理事長のギモン】マンション内で発生した保険事故の対応は、管理会社の仕事じゃないの?

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顧問先の管理組合では、マンション保険を見直した結果、他社の方が保険料の負担も下がることが分かったので、現在の契約を中途解約しようという話になり、その準備を進めていました。

 

これに伴い、管理会社が兼務している保険代理店も他社に変更となる予定でした。

 

しかし、それを知った管理会社のフロント担当者が理事長に対して

当社が保険代理店業務から外れた場合、これまで行ってきた事故対応業務は行えなくなる」との説明をしました。

 

そのため、その理事長も、保険事故の申請のたびに今後負担が増えることに不安に感じ、代理店の変更は見合わせた方がよいのでは?との相談がありました。

 

これについては、標準的な管理委託契約であれば、「基幹事務以外の事務管理業務」の中に「契約事務」に関する以下のような定めがあります

 

「甲に代わって、甲が行うべき共用部分の損害保険契約、マンション内の駐車場等の使用契約・・(中略)等に係る事務を行う。」

 

「甲」とは管理組合のことを指すので、

管理会社は管理組合に代わって共用部分の損害保険契約に係る事務を行う

とコミットしていることになります。

 

では、具体的に代行する事務の内容とは何でしょうか?

 

各マンション管理会社が所属する「一般社団法人マンション管理業協会」に照会してみたところ、当該契約事務には以下の業務が含まれるとの回答を得ました。

 

■ 損害保険の契約締結・更新等にかかる事務

■ 保険事故発生時における保険代理店への連絡ならび保険金申請の手続き

 

 共用部で事故等が発生した際に、現場写真の撮影ならびに修繕の手配はもちろん、管理組合が加入している損害保険契約に関連して、保険代理店への連絡と保険適用の申請に関する事務の代行もいわゆる「事務管理業務」に含まれるということです。

 

ただ、標準管理委託契約では代行業務に関する具体的な内容まで記載されていません。

 

そこで、他社の委託契約の事例を調べてみたところ、

大手管理会社H社やM社については、独自の書式にて条文を作成していることがわかったので、ご紹介します。

【H社の場合】

共用部の火災保険及び共用部分、または専有部分の賠償責任保険の契約締結等に関する管理組合の業務を代行する。また、共用部分または専有部分にて発生した保険事故について、管理組合又は組合員の報告にもとづき、保険代理店に連絡し、事務手続きを行う。

 

 【M社の場合】

①  乙(管理会社)は、甲(管理組合)と損害保険会社間における次の損害保険契約にかかる締結・更新等の事務手続を、甲に代わって行う。

 ・共用部の火災保険

 ・本マンション居住者にかかる個人損害賠償責任保険

 ・共用設備等にかかる施設所有者管理者賠償責任保険

 ・共用部分等にかかるその他の損害保険」

 

② ①の事務代行に関連して、乙は甲に代わって次の業務を行う。

 a 加入保険契約の証券等の保管(積立保険など貯蓄型保険を除く)

 b    保険金の請求及び甲名義の口座による受領 

   c    満期返戻金、解約無効執行返戻金の請求及び甲名義の口座による受領

 

上記2社と標準管理委託契約を比べた場合、標準契約の条文では「共用部分の損害保険契約」としか記載されていないため、専有住戸内の漏水事故等が対象になる「個人賠償責任保険」に関する対応業務は含まれていない、と主張されるリスクもあると思われます。

 

したがって、上記2社で採用しているような条文が記載されている方が、管理組合にとっては安心でしょう。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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管理コスト適正化の邪魔!マンション共用設備に付帯する厄介な契約とは?

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マンション管理組合の維持コストを適正化するためのコンサルティングをしていると、適正化の障害になる事象に直面することが少なくありません。

 

その中での「あるある事例」を2つご紹介します。

 

(1)集合インターホン設備が警備会社オリジナル仕様の場合

これは最大手のS社に多いのですが、ベースはアイホンなどの有名メーカー品ながら、それに独自の機能を加えた商品を提供しているケースです。

 

ただ、独自の機能と言っても、特筆すべきものではなく、メディカルサービスをオプション(別途費用)で利用できる程度のものです。

 

本当の狙いは、警備会社の変更を阻止することにあると思います。

と言うのも、このようなOEMタイプの設備の場合、警備会社の委託費が割高なので、リプレイスを試みても同じ仕様を維持することが難しいのです。

 

たとえば、今現在マンションの部屋ごとの警備信号を受信できるようになっている場合でも、それが他の警備会社に変更すると全戸一括でしか受信できなくなる、というケースです。

 

居住者としては、住戸別か一括受信かのような違いについて細かく認識していないのが普通なのですが、いざ変わるとなると気にするのが人情というものです。

 

その結果、他社へのリプレイスが難しいとなると、その警備会社との委託費交渉において主導権が握れず、結局コストの適正化を実現することができない・・というわけです。

 

このような場合、集合インターホン設備のリニューアル時期(築15年前後)が到来するまで辛抱するしかなくなってしまいます

 

別のケースでは、管理会社と警備会社があらかじめ提携してインターホン設備だけでなく、各住戸玄関の電気錠システムも構築し、セキュリティシステムを提供している場合にも遭遇しました。

 

ところが、インターホン設備のメーカー(外国製)の部品供給が停止したために、メンテナンスが不可能になり、築12年目の段階で早くも電気錠システムともども設備全体の更新を余儀なくされてしまいました。

 

一般的なインターホン設備なら@10~15万円で済むところが、結局戸あたり35万円もの大きな出費となってしまいました。

 

(2)共用設備の一部がリース契約になっている場合

以下のような共用設備について、新築当初より管理組合が6~8年程度の期間でリース契約を締結していることもあります。

 

 ■ 防犯カメラ

 ■ メールボックス一体型宅配ロッカー

 ■ 非常用充電器

 ■ ガス給湯器

 

まず、リース契約になっているということは、すなわちマンション購入代金の中にこれらの設備代金が含まれていないことに留意すべきです。

 

第2に、リース契約は、買い取り(購入)プランに比べて期間金利や動産保険料、あるいはリース会社の経費利益の分だけコストが上乗せされているため、どうしても割高になります。

 

第3に、そのリース契約が設備の保守管理契約とセットになっている場合、保守管理費が割高であっても、リース契約が満了するまでそこにメスを入れることができません

 

このように、消費者やユーザーの無知・無関心を逆手に取って、デベロッパーや管理会社は巧妙な仕掛けを張り巡らして利益を確保しようと日夜努力しているのです・・。

 

それに対抗するには、われわれも知識と情報で武装するしかありません。

 

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 <参考記事>

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