マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの長期修繕計画で発覚した信じられないミス

f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

知人が所有する都内のワンルーム・マンションで、あるトラブルが発生しました。

 

マンションの分譲販売といえば、一般的に新築物件を想像するでしょうが、中には中古物件をデベロッパーが賃貸マンション一棟を取得したうえで区分所有権として販売するということも、たまに見られます。

 

このマンションがまさにそのケースで、竣工時から約6年間賃貸マンションとして運用されていたのですが、それをデベロッパーが中古物件として一棟を取得して、築7年目に一般分譲した物件でした。

 

しかし、販売後2年が経過した時点で、販売時にデベロッパーが作成した長期修繕計画に大きなミスがあることが発覚したのです。

 

一般的な長期修繕計画では、築12年目から12年周期で大規模修繕工事の実施を予定することが多いのですが、そのマンションは築7年目の中古分譲なのにもかかわらず、分譲販売後12年目、つまり築19年目に第1回目の大規模修繕が予定されているのでおかしいと気づいたのです。

 

1回目のタイミングとしては、築15年目までに予定しておくことが望ましいと考えられるため、これではやや遅すぎるというわけです。

 

しかし、それよりもっと深刻なのは、

長計と表裏一体の関係にある、修繕積立金の問題です。

 

本来、分譲時(築7年目)から30年間の長期修繕計画では築12年目(分譲後5年目)、築24年目(分譲後17年目)、築36年目(分譲後29年目)の計3回の大規模修繕が予定されるべきところ、竣工年=分譲時だと錯覚したために第2回目までの分しか修繕費用を見込んでいませんでした

 

長期修繕計画作成の目的は、修繕見込み額にもとづいて将来的に確保すべき修繕積立金の金額を積算することにあるため、このミスによって必要な積立金の額が過少に見込まれたことになります。

 

言い換えれば、

区分所有者は購入時に想定していたよりも大幅に修繕積立金の負担が増えてしまうことになるわけです。

 

この長期修繕計画の作成上の瑕疵については、売主がその責任を認めたうえで、売主の負担で竣工時から分譲販売時点までの期間にかかる修繕積立金を管理組合に補てんする提案がなされ、その後管理組合の総会でも承認されたようです。

 

長期修繕計画を真剣にチェックする方は極めて少ないと思いますが、世の中にはこのようなトラブルも起こっていることを知っていただき、ご注意いただきたいと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

 

 

 

 

 

 

もはや他人事ではない!相続放棄のリスクは管理組合にとって震撼ものだ・・・


f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain


10月1日付けの朝日新聞に、「相続放棄マンション、積み上がる管理費滞納 価値に影響」という記事が掲載されていました。

 

www.asahi.com

記事の要約は以下の通りです。 

■ マンションの部屋が相続放棄されたため管理費などの滞納が積み上がり、ほかの所有者に負担のしわ寄せがいきかねない懸念に直面している管理組合を取材した。

■ 神奈川県座間市にあるマンションでは、80代の女性が借金を抱えて孤独死した。管理組合から親族に死亡を伝えたことろ、2カ月後に「相続放棄した」との連絡が来た。その女性は死亡時に管理費等も57万円滞納していたが、その後も滞納額は毎月積み上がっている。

■ 横浜市戸塚区にあるマンションでも、昨年10月に独居老人が死亡したが子どもはおらず、相続人となる親族13人全員の放棄の意思を確認するまで10カ月かかった。管理費の滞納はなかったが、死亡後は毎月2万円余りの滞納が増加している。

■ 相続放棄された場合、裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることになる。財産管理人は物件を売却したお金で滞納分やローンの残額などを債権者に支払い、残れば国庫に納める。

■ ただし、相続財産管理人の選任申立てには数十万円から100万円程度の費用がかかり、物件が売れてもローンの返済などで滞納分を回収できない場合もある。その場合、管理組合は滞納分を損失として処理せざるを得なくなる。

 

この記事が衝撃的だったのは、

相続放棄の対象となったマンションが、立地条件や築年数の面で特段大きな問題を抱えているわけではなく、どこにでもある普通の物件ということです。

 

もう一つは、相続放棄が発生した場合には管理組合にとって非常に厄介な事態になるということです。

 

冒頭の記事にも紹介されている通り、「相続財産管理人の選任」を家庭裁判所に申し立てなければなりません。

 

「管理人」の資格要件は特にないものの,一般的には弁護士,司法書士等の専門家に有償で業務を委託することになるでしょう。

 

ちなみに、裁判所のサイトでこの申立てに必要な書類を確認したところ、主なものだけでも以下の通り膨大で、その準備だけでも相当な手間ひまがかかることがうかがえます。

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
・財産を証する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類等)

 

しかも、こうした手続きを経ても、最終的に管理費の滞納分が回収できないリスクもあるわけです。

 

今年の6月、相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積は、今や「九州」の面積よりも広い という驚くべき推計結果が、所有者不明土地問題研究会によって公表されています。

 

www.asahi.com

低成長経済と少子高齢化に伴う人口減少の影響を受け、「不動産を所有すること自体が善」という従来のパラダイムが大きく転換しつつあるのは確かなようです。

 

まさに「負動産」の時代にどう備えるか、真剣に考えなくてはなりません。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

 

 

 

 

マンション「長期修繕計画」に対する誤解と陥りがちなワナ


f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

管理組合の理事さんと話していると、「長期修繕計画にしたがって大規模修繕を実施すべきだ」という固定観念をお持ちの方が意外に多いことを感じます。

 

国交省は、マンション管理組合のために「長期修繕計画作成のガイドライン」を作成して公表しています。

 

その中に、「長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的」という章があり、以下のように説明しています。

・・・・

■マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時適切な修繕工事を行うことが必要です。また、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図る改修工事を行うことも望まれます。

 

■そのためには、次に掲げる事項を目的とした長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額を設定することが不可欠です。
将来見込まれる修繕工事及び改修工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を明確にする。


計画修繕工事の実施のために積み立てる修繕積立金の額の根拠を明確にする

 

③修繕工事及び改修工事に関する長期計画についてあらかじめ合意しておくことで計画修繕工事の円滑な実施を図る。

・・・・・

つまり、

長計の作成目的とは、将来見込まれる修繕や改修工事に関する「おおよそ」の時期と「概算」の費用を明確にしたうえで「必要な修繕積立金の金額を明確にする」ことです。

 

したがって、実際にいつ、どのように、いくらの費用をかけて修繕を実施するかまで決定したものではないことに注意が必要です。

 

というのも、管理会社は修繕工事を受注したいという立場上、この計画のスケジュールと周期に則って理事会に修繕の提案をしてくるからです。

 

その際の常套句は、たいてい「長計で予定されている」とか「一般的な耐用年数を経過している」といったものです。

 

でも、マンションの立地している環境や条件は様々なので、長計や耐用年数だけで修繕時期を判断するのは早計です。

 

日常の保守点検の状況報告や、外壁打診診断などの結果を踏まえて総合的に判断する必要があります

 

もう一つ注意しなくてはならないのは、

管理会社の見積金額が、概ね長計で想定した金額にほぼ近似していることが専らだということです。

 

大抵の場合、管理会社は管理組合の事務管理も受託しているため、管理組合の財布の中身は「筒抜け」です。

 

そのため組合が払える範囲内の金額を見定めたうえで見積書を出せるのが管理会社の「強み」なのです。

 

したがって、その際に理事さんがやるべきことは、

管理会社としがらみのない業者からも相見積りを取得して発注金額を適正化することです。

 

しかし現実には、冒頭で紹介したような長計に対する誤った固定観念と管理会社の「押し」と「刷り込み」によって、ついつい注文書にハンコを押してしまうことになりがちです。

 

それこそ、管理会社の「思うツボ」なのです。十分ご注意ください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マンションドクター火災保険」の割引効果はやっぱり凄かった!

f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

自宅マンションでは、今年の秋で5年の積立保険が満期を迎えます。

 

そのため、理事会では保険会社の相見積もりを代理店に依頼して、5社間で比較検討することとになりました。

 

その結果、5年前に加入した際の保険料に比べて実質2倍〜3倍も増額することがわかりました。

 

その原因は、

■ 各社の共通点として、築年数の増加とともに保険料が上昇する料金体系であること

■ 近年各社が相次いで保険料を大幅に増額改定したこと

 にあります。

 

また、「積立型」保険も、5年前は運用利回り相当の値引きが積立て金額の1.4%(※5年分合計)も受けられたのですが、超低金利時代の現在は「掛捨て型」とほとんど変わらなくなりました。


保険各社の比較では、掛捨て型・積立型ともにメガ損保のT社が有利でしたが、日新火災の「マンションドクター火災保険」についてはマンションの管理や修繕の状況が良好と判断した場合には保険料の割引制度があるため、その診断(無償)を受けることにしました。

(※もちろん診断したのは私ではなく、代理店が指定した管理士さんです)

 

 f:id:youdonknowwhatyoulove:20170925115250j:plain

 

 そして、先日その診断を受けたところ、最高の「S」ランクの評価になり、当初の日新火災の見積り条件に比べて保険料が3割超下がりました!

 

さすがに現在の保険料よりは負担が増えるものの、この水準なら組合収支にほとんど影響がないので管理組合としてとても助かりました。

 

特に築15年を超えるマンションなら、契約更改の際にぜひ診断を受けてみることを強くお勧めします!

 

  <参考記事> 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com yonaoshi-honpo.co.jp

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

 

 

10月度 マンション管理セミナー開催のお知らせ

「10月度 マンション管理セミナー」を開催いたしますので、ご案内いたします。

  

先着10名様のお申し込みを受け付けております。どうぞお早目にご応募ください。

【日時・会場】

平成29年 10月 21日(土) 14:00~16:00

 

LEAGUE 5階 ミーティングスペース(501号室)

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

 

【参加料金】

 お一人様  5,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

弊社に個別にご相談いただける方

 個別相談をお申込みの方には、もれなく私の著書「マンション管理見直しの極意」を進呈いたします!

 

【内 容】

1. 講 演 


(1)   管理コスト3割削減を実現したマンションの事例紹介


弊社のサポートでコスト3割削減を実現したマンションの事例(3物件)について、見直し実現までのプロセスと経済効果をご紹介します。

従前の管理組合の財政事情や管理委託費の査定結果、管理仕様の見直しポイント、管理会社との交渉経過、最終的に妥結した内容までをわかりやすく解説します。


【主な内容】

・1年間で段階的に管理委託費を下げて適正化を実現した事例

・管理会社の抵抗を受けて、設備保守業務を専門業者に委託して減額した事例

・コスト以外にも管理会社の対応能力への不満が原因でリプレイスした事例


(2)組合役員なら知っておきたい<最新>標準管理規約

マンション管理組合の運営ルールについて、高齢化等を背景とした管理組合の担い手不足、管理費滞納等による管理不全、暴力団排除の必要性、災害時における意思決定ルールの明確化など様々な課題が指摘されています。

これら課題に対応した新たなルールの整備として、昨年国交省の標準管理規約が約5年ぶりに大きく改正となりました。

さらに、住宅宿泊事業法(民泊新法)が来年6月に施行されることに伴い、本年8月には民泊を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を追加する改正が行われました。

これまでの標準規約改正の背景を振り返るとともに、改正されたポイントを整理して解説いたします。

【主なテーマ】 
 ・️管理規約と区分所有法の違いとは?
 ・「標準管理規約」が制定された背景と趣旨
   ・これまで4回(平成16年、平成23年、平成28年、平成29年)の改正の要点と解説

 

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

2. 個別相談会(※希望者のみ)

貴マンションの管理委託費を簡易診断させていただきます。(無料)その他、管理会社の変更や大規模修繕、高圧一括受電、省エネ対策などのご相談も随時承ります。

 

【お申込み方法】

弊社サイトの問合せページからお申し込みください。 

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

「マンション管理会社 満足度調査2017」を検証してみた

f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

9月7日、スタイルアクト株式会社が運営するサイト「住まいサーフィン」が毎年行っている、マンション入居者への管理会社の満足度調査の結果が発表されました。

 

www.sumai-surfin.com

その要約は、以下のとおりです。

■ 回答者数 

約2,000名

 

■ 調査項目

1)管理人(言葉遣い、業務遂行力、ホスピタリィ、対応の早さ、勤務時間)

2)管理会社(業務遂行力、やる気、真面目さ、対応力、提案力)

3)コスト(修繕積立金に不安がないか、コストパフォーマンス)

4)生活サービス

5)全体満足度

6)推奨度

 

■ 調査結果

・評価トップ3社のランキング

1位:野村不動産パートナーズ (9年連続トップ)

2位:三井不動産レジデンシャルサービス

3位:住友不動産建物サービス

 

・管理人への満足度について、「対応力」「ホスピタリティ」では最上位と最下位の評価で40%の乖離が生じており、管理会社によって大きな差が現れた。

 

上位3社の「総合満足度」は70を超えていますが、いずれも「管理人」と「管理会社(フロント担当者)」の評価の良さがランキングを押し上げたようです。(例えば、最高ポイントは、管理人:80 管理会社:73

 

その一方で注目すべき点があります。

 

調査項目のうち、「コスト」に対する満足度がすべての会社で突出して低調であったということです。

 

・「修繕積立金に不安がないか」→ 最高:59 最低:41

 

新築マンションの長計修繕計画(30年)では、将来的に修繕積立金の徴収額が5年周期で大幅に増額されていく想定になっているのが一般的で、その点を指しているものと思われます。

 

・「コストパフォーマンス」  → 最高:48 最低:33

 

 上記のサイトページでは詳細に関する解説がありませんが、コスト(管理委託費)に対するパフォーマンス(業務成果、満足度)に不満があるということは、現状の委託金額が適正ではないということを意味していると思われます。

 

 

 管理組合の現状と今後の財政事情を考える上では、

やはり「割高な管理委託費」と「修繕積立金の増額リスク」の2つが普遍的な課題だと言えるでしょう。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

 管理組合にとってたいへん重要な「コスト」の課題を解決し、その評価ポイントが少なくとも70を超えるように目指してもらいたいものです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

民泊利用の可否を明記するために改正された標準管理規約

f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

8月29日付けで、国交省が標準管理規約を改正することを発表しましたね。

 

www.mlit.go.jp

改正の趣旨を要約しますと、次のようになります。

■いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月に国会で成立し、今後1年以内に施行される予定となったため、分譲マンション内でも合法的に民泊利用ができる状況になる。

 

■これに伴い、分譲マンションにおける民泊をめぐるトラブルを防止するために、あらかじめ管理組合において区分所有者間で十分議論したうえで、民泊利用を許容するか否かを管理規約上明確化しておくことが望ましい


■そのため、マンション管理規約のひな型である「マンション標準管理規約」を改正し、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示すこととした。

■主な改正内容は2点
・専有部分の用途を定める第12条を改正し、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定を記載。

・住宅宿泊事業者(「ホスト」となる区分所有者)が同じマンション内に居住する、いわゆる家主居住型のみ可能とする場合等の規定例も記載

 

つまり、

・民泊事業が旅館業法に抵触することなく合法化されること(一定の制約条件はある)

・現状の標準規約(「専ら住宅」条項では不明瞭)の手当てが必要であること

を理由として、国(政府)が民泊利用の可否を管理規約に明記することを管理組合に正式に推奨することにしたのだと思われます。

 

ただ、管理規約の改正については、組合総会の特別決議(組合員総数・議決権総数全体の各4分の3以上の賛成が必要)を経る必要があるためハードルが高いという実情があります。

 

また、そもそも無関心層が多い事情から、今回の改正を管理組合の役員たちがタイムリーに認識できるのか、管理会社から規約改正の提案がなされるかといったプリミティブな問題も含んでいると思います。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 今回の規約改正に際して事前に実施されたパブリック・コメント(国民からの意見)も公開されていますが、そこでは下記のように私と同様の懸念を抱く意見も見られます。

 

 管理組合によっては、住宅宿泊事業法の施行に管理規約の改正が間に合わないケースが発生することが想定される。

 その場合に、法令施行後すぐに住宅宿泊事業の届出がなされてしまうと、当該マンションでは、住宅宿泊事業が行えることが既成事実となってしまう可能性がある。

 そのため、法令施行に管理規約の改正が間に合わない場合の対応や考え方について明らかにしてほしい。

 

これに対する国交省の回答として、以下のコメントが記載されています。

・管理規約の改正までには一定の期間を要することから、管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくても、管理組合の総会・理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されていないことについて届出の際、確認する予定としております。

 

規約の改正のハードルが高いことや総会決議までにそれなりの期間を要することを考慮して、組合総会(通常の過半数決議)や理事会決議でも民泊禁止の決定があればそれを認める意向だと解釈できます。

 

しかし、今回の改正は民泊の禁止だけでなく容認する場合の両論併記型を基本にしているわけですから、例えば(少数の区分所有者で構成されることが一般的な)理事会決議だけで民泊を禁じることを容認するとなると、民泊の利用を容認して欲しい側からすると著しく公平性を欠く措置のように思えます。

 

もっとも、民泊新法施行直後の暫定的な措置としてなら、アリかなと思いますが・・。

 

なお、改正標準規約の補足コメントには、以下の規定例も記載されています。

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用 するものとし、他の用途に供してはならない。


2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1 項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

 

ポイントは、使用細則の改正は普通決議で可能なため、規約改正に比べてハードルがかなり下がるということだろうと思います。

 

ただし、上記の条項を規約に盛り込むには、やはり現在の管理規約を改正することが必要だとすると、結局当初の難易度は変わらないのではないでしょうか。(民泊利用の可否を再度見直す際には、ハードルが下がるのは確かですが・・)

 

また、今回は民泊への対応だけが改正の対象とされましたが、昨今はシェアハウスやウィークリーマンションといった新業態が登場したために「専ら住宅条項」ではこれらの利用を排除できないリスクが高まっています。

 

できれば、国交省にはこうした部分の手当ても含んだ規定案も示してもらいたかったと思います。

 

いずれにしても、現時点で民泊利用に対する規約の改正がなされていない管理組合さんは、ぜひ理事会などで議論してみてることをお勧めします。

 

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ