マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「マンションの資産価値は保ちたいけど、理事にはなりたくない」という本音

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分譲マンションの管理やコミュニティの実態を把握することを目的に、SUUMO(リクルート住まいカンパニー)が、首都圏の分譲マンション居住者を対象とした調査を初めて行い、その結果を公表しています。(8月22日付け)

 

2016年マンション管理とコミュニティについての調査  | 株式会社リクルート住まいカンパニー


<調査対象>
首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県)の新築マンションを契約し、 2004~2014年の間に入居、現在も同じマンションに住んでいる人

(回答総数:6,304 回答率:27.5%)



この回答結果の概要について、かいつまんで見てみましょう。


> ほぼ全員が「マンションを適切に管理・修繕し、資産価値を守りたい」と考えている。

> 管理組合の総会参加率は46%。

>「組合の理事になってもいい」と考える人は34%。

 


この3つの回答を総合すると、「適切な管理や修繕をしながら資産価値を守りたいが、自分はなるべく関わりたくない」という区分所有者の本音が透けて見えてきます。



特にひどいのが総会への出席状況です。

平均こそ46%となっていますが、たとえば総戸数300戸以上のセグメントでは、「ほぼ毎回参加」は14%しかいないのに、「ほぼ毎回不参加」の割合は38%とその3倍近くも占めています。

「ほぼ毎回不参加」というのは、止むを得ず参加できない事情があるからというよりは、「関心がない」からと言ってよいでしょう。

 また、「理事になってもよい」(34%)と回答した中で、これに大いにあてはまると回答しているのは3分の1、つまり全体の1割しかいませんでした。


> 課題に対し迅速に意思決定をする理事会は多い(64%)が、リーダーシップが感じられる(40%)、組合の運営を企業経営の視点で行う(27%)理事会は少ない。

 


理事会への参加意欲がほとんど期待できないわけですから、これはむしろ当然の結果といえます。

今回の調査対象は、新築から築10年以内の築浅マンションの居住者が対象です。

この段階では、1回目の大規模修繕工事もまだ未経験でしょうし、管理組合が抱えやすい役員のなり手不足、滞納、漏水事故、修繕資金の不足といった深刻な課題にはまだ直面していないことでしょう。

ただ、他の例に漏れず、こうした課題がいずれ顕在化してくるのは間違いありません。

 

そのときに、ごく一部の意識の高い区分所有者だけで対処していくのは容易ではないでしょう。


>マンション内で、挨拶をする相手がいる人は多い(91%)が、立ち話をしたり(43%)、頼みごとができる相手がいる人は少ない(23%)

 

このような実態は、現代のマンションライフの典型的状況だといえます。

 

でも、いざという時に居住者同士が連携できるかどうかは、日頃の付き合い方が重要な鍵を握っているように思います。

 

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マンション一括受電に関する主な論点をまとめてみた

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多くのマンション管理組合では一括受電についてはいまだ十分に認識がなされず、そのため理解も進んでいないと言わざるを得ません。

 

そこで本ブログの過去記事を整理しつつ、一括受電の主要な論点について纏めてみました。

 

#1 マンション一括受電のしくみが理解されていない

一括受電を導入するには、<管理組合が変電設備を自ら所有する方法>と、<一括受電サービス業者と契約する方法>の2つがあります。

 

それぞれの仕組みはもちろん、メリットと留意点をまず正しく知ることが大切です。

 

<参考記事>

allabout.co.jp

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

ただ、残念ながら取材記者の誤った理解にもとづく記事も見られます。

 

たとえば、下の記事で取り上げた新聞記事では、一括受電サービス業者(新電力)のスキームの実例だけを紹介しています。

 

そのうえで、一括受電によって電気料金が下がる理由として、

東電など地域電力会社が送配電設備を保有する高コスト体質なのに対して、一括受電サービス業者などの新電力は変電設備の投資負担しかないので、電気代を大幅に割り引くことができる

というトンチンカンな説明をしています。

 

受電サービス業者であろうと、管理組合であろうと、変電設備を持つことで3割安く電気を購入することができます。

 

一括受電業者は、安く仕入れた電力を管理組合に販売する際に料金調整することによって長期間にわたって差益を稼ぐというビジネスモデルを理解していませんでした。

 

 <参考記事>

 

#2 一括受電導入のハードルの高さは、マンション建替え以上!?

既築マンションで一括受電の普及が進みにくい原因は、それだけではありません。

 

一括受電の導入自体は、管理組合の普通決議事項のため、過半数承認で原則十分なのですが、実際には全住戸が現契約の解除に同意する文書を地域電力会社に提出する必要があります。

 

最大のイベントであるマンションの建替え決議でも、全体の8割以上の同意があれば実現可能なのに、「100%の同意が絶対条件」というわけです。

 

これはあまりにも理不尽であるし、管理組合の運営ルールの原点である区分所有法の精神にも反すると思います。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

そのため、管理組合で圧倒的多数で決議されたにもかかわらず、一括受電への理解が不十分な反対者が少しでも現れ同意書を提出してくれないと、導入スケジュールが遅れるか、もしくは導入自体が頓挫してしまうことになるのです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

#3 電力小売り自由化で、一括受電のメリットが分かりにくくなった

 平成28年4月に実現した「電力小売りの全面自由化」の宣伝効果によって、マンション一括受電に対する関心も高まったのは事実です。

 

 ただ、各住戸で電力会社を自由に選択できるようになったうえ、電気料金も若干下がることになったために、組合でまとめて電気を購入する一括受電と区別して正しく理解してもらうことが一層難しくなった感があります。

 

 低圧受電という中で料金が下がったとしてもせいぜい数%が関の山であり、一括受電で料金が大きく割り引かれるメリットを勝ることはないのですが、一括受電を選択することで電力会社を各住戸が選択できない点がデメリットだと考える方もいらっしゃるのも事実です。

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 以上を纏めると、

◆一括受電の基本的なしくみが認知されていない。

◆管理組合内の合意形成のハードルが異常に高い。

◆電力自由化によって、消費者の選択肢も増えて論点が複雑化した。

 

これら3点が一括受電が普及しにくい要因と言えます。

 

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8月セミナー開催のお知らせ

「8月度 マンション管理セミナー」を開催いたしますので、下記の通りご案内申し上げます。

  

先着10名様のお申し込みを受け付けております。どうぞお早目にご応募ください。

【日時・会場】

平成28年 8月 20日(土) 14:00~16:00

 

LEAGUE 5階 ミーティングスペース(501号室)

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

 

 

【参加料金】

 お一人様  5,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

弊社に個別にご相談いただける方

※ご希望の方には、管理組合様宛の領収証を発行いたします。

 

【内 容】

1. 講 演 


1) 管理コスト3割削減を実現したマンションの事例紹介

弊社のサポートでコスト3割削減を実現したマンションの事例(3物件)について、見直し実現までのプロセスと経済効果をご紹介します。

 

従前の管理組合の財政事情や管理委託費の査定結果、管理仕様の見直しポイント、管理会社との交渉経過、最終的に妥結した内容までをわかりやすく解説します。

 

3つの事例はそれぞれ見直しの進め方と結果が異なるので、きっとご自身のマンションの見直しの参考になるものと思います。

 

【主な内容】

・セキュリティ費用に、管理会社の多額のマージンが隠れていた事例

・既に管理委託費が3割下がっていたのに、なお割高だった事例

・管理会社との減額交渉が決裂し、リプレイスに踏み切った事例


2) 電力小売りが全面自由化!マンション一括受電は今後どう進めればいい?

マンションの一括受電のしくみやメリットはもちろん、それに伴う変更点やリスクまでを正しく理解していらっしゃる方はほとんどいません。

 

一括受電には大きく2つのスキームがありますが、それぞれの特徴から、導入の条件、メリットやリスクが何かを論点を整理して解説いたします。

 

また、4月から始まった電力小売りの完全自由化でどのような影響が出るのか、また管理組合として今後留意すべきポイントなどもご案内します。

 

【主な内容】

・マンション一括受電とは?

・一括受電には「2つのスキーム」がある

・一括受電のメリットと注意すべき点

・一括受電導入事例とデータの公開(導入に要する費用、光熱費削減メリットのスキーム間の比較)

・一括受電はどう進めればよいか?

・電力小売自由化による影響と管理組合の対応について

 

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

2. 個別相談会(※希望者のみ)

貴マンションの管理委託費を簡易診断させていただきます。その他、管理会社の変更や大規模修繕、高圧一括受電、省エネ対策などのご相談も随時承ります。

 

【お申込み方法】

弊社サイトの問合せページから下記の要領でお申し込みください。  

 

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電子ブレーカーの導入ができないマンションの事情とは?

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マンション共用部の電気料金を下げる方法は、以下のとおり3つのアプローチがあります。

  1. 消費電力量を抑制する方法

  2. 電気料金の単価を下げる方法

  3. 電気の基本料金を下げる方法

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

「基本料金を下げる方法」として代表的なのが、電子ブレーカーの導入です。

 

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マンションの場合、一般的には共用部の設備のモーター容量の合計(KW)を契約容量とするため、その稼働状況や使用電力に関係なく最大電力値での契約(負荷設備契約)となってしまいます。

 

その結果、共用設備の稼働時間は総じて短時間なのにもかかわらず、基本料金が割高となってしまうわけです。

ところが約10年前の電気事業法改正によって、実際の設備稼働時にブレーカーに流れる電流をもとに使用電力を決定し、ピーク時の電力は使わないという契約(主開閉器契約)に変更できるようになったのです。

 

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それによって契約電力の水準が下がり、その分基本料金も下がるというわけです。


ただし、それには共用部に電子ブレーカーを設置し、実際に流れる電流値と設備の稼働時間の両方を計測できるようにする必要があります。

もっともこの電子ブレーカーの設置工事の代金(30万円台)は、毎月の基本料金の削減額が大きい場合には2,3年でその費用を回収できてしまいます。

 

特に、エレベータや機械式駐車場など設備機器の多いマンションほど効果的であるとともに、高圧一括受電するまでのメリットがない比較的規模の小さいマンションに適しており、基本料金が下がるという意味では確実なコスト削減方法というわけです。

 

ところが、マンションによっては設備上の問題で、電子ブレーカーの導入ができない事例もあることがわかりました。

 

先日、関西エリアにある30戸のマンションで現地調査した際に、動力設備と消火設備の配線が現在一つの系統で繋がっていることが分かりました。

 

実は、このようなタイプのマンションはかなり少数派で、通常は消防と他の設備は別系統で配線している方がはるかに多いのです。

 

このタイプの場合、電子ブレーカーの導入がなされた後、何らかの事情でブレーカーが故障すると消防設備を含む全体が使用できなくなる恐れがあります。

 

そのため、消防法上の制限によって両者の系統を切り離す工事が必要となるわけです。(※)

 

※非常電源専用受電設備は、他の電気回路の開閉器又は遮断器によって遮断されないことが必要なため。(消防法施行規則)

 

しかしながら、もう一つ問題があることが分かりました。

関西電力の所管エリアでは、本年4月以降は消火設備と他の共用設備を別系統で受電できなくなったのです

 

そのため、このマンションで電気系統の分離工事をすること自体が現時点ですでに不可能になってしまったため、電子ブレーカーの導入は断念せざるを得ませんでした。

 

実際にはこうした珍しいケースもありますので、ご検討の際には必ず現地調査を行うようにしてください。

 

 

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管理見直しの成功に欠かせないキーパーソンの存在

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マンション管理組合へのコンサルティングを始めて3年余り。

 

当然ですが、当初の目論見通りに見直しを実現できたマンションもあれば、残念ながら途中で頓挫したケースもあります。

 

これまでの経験を振り返ってみると、やはり管理組合のキーパーソンの存在が成否を決める部分が大きいと感じています。

 

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たとえば、川崎市のマンションでお世話になっているYさん。

ご相談いただいた当時は理事長でしたが、その後当社がコンサルティングを開始する段階では、任期満了で退任となってしまう予定でした。

 

しかし、Yさんは2年目も理事として残ることをあえて選び、今度は副理事長の立場で組合内でリーダシップを発揮され、他の理事や専門委員との調整・根回しも入念に行っていただきました

 

一部過剰に設定されていた管理仕様の見直しについても、理事会だけでの判断で進めることは避け、事前に住民アンケートを実施するよう自ら企画し、あらかじめ全体の意見を把握したうえで慎重に合意形成を進められました。

 

その結果、従前と比べて33%ものコスト削減を実現することができました。

住戸あたりの経済効果は、年間6万円にも及んでいます。

 

京都のマンションで、現在お世話になっているHさん。

数年前に中古で購入され、現在修繕委員を務めていらっしゃいますが、理事ではありません。

 

しかしながら、管理会社の修繕や保険の提案の内容に疑問を抱いたことをきっかけに、信頼できる専門家を自ら探そうとネットで検索したところ、当社へのご相談に至りました。

 

Hさんにお会いしてみると、たいへん誠実で包容力のある方ですが、多忙な中、理事さんとのスケジュール調整や根回しに尽力いただいています。そのため、遠距離での対応ながらこちらの調整手間もかからず、とても助かっています。

 

私たちコンサルタントは、そのマンションのオーナー(区分所有者)でも役員でもありませんから、立場的な問題でそれ以上は踏み込んでできないこと、言えないことが少なくありません。

 

わかりやすくいえば、外部の専門家として助言・提案あるいは事務的なサポートができるだけで、管理組合の意思決定自体は理事会にお任せするしかないのです。

 

分譲マンションは共有財産ですから、管理組合の意思決定を行うにはなるべく多くの組合員のコンセンサスが欠かせないのですが、中にはコンサルタントを起用することや、コンサルタントの提案通りに進める方針に対して抵抗感を持つ方もいらっしゃいます。

 

その際、理事会としていかに主体性を持って意思決定するか、またリーダーシップを発揮して一般の組合員に対する説得、あるいは意見の調整ができるかが成否を分けるポイントになると思います。

 

そして、このような機能を自主的に果たしてくださるキーパーソンの存在こそが管理組合に不可欠なのです。

 

 

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マンション管理会社の法令違反がなくならない2つの理由

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マンション管理会社が「マンション管理適正化法」に則って業務を行っているかを確認するため、国土交通省が昨年全国一斉に事務所等に立入り調査を実施した結果が7月15日に報告されています。

 

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<調査結果の概要>

◆国土交通省が、全国のマンション管理業者から135社を任意に抽出し、平成27年10月から約3ヶ月の間に、各社事務所への立入検査を実施した。

 

◆管理業務主任者の設置、重要事項の説明等、契約の成立時の書面の交付、財産の分別管理及び管理事務の報告の5つの重要項目を中心に調査を行ったところ、うち51社に対して是正指導を行った。(※指導発生率:37.8%)

 

◆重要調査項目別の違反者数は以下のとおり。<複数違反の業者あり>

 ①管理業務主任者の設置(第56条関係)  : 2社
 ②重要事項の説明等(第72条関係)    :39社
 ③契約の成立時の書面の交付(第73条関係):27社
 ④財産の分別管理(第76条関係)     :20社
 ⑤管理事務の報告(第77条関係)     :22社

 

◆違反業者に対しては違反状態の是正をするように指導を行ったが、関係団体に対しても、法令遵守の徹底を図るため研修活動等を通じて管理業全般の適正化に向けた会員指導等を行うよう要請を行う。

 

マンション管理会社に対しては、平成13年に「マンション管理適正化法」が施行され、これを遵守することが求められるようになりました。

 

その理由は、法の目的として明文化こそされてはいませんが、法施行前のマンション管理が適正でなかったからです。

 

顧客である管理組合側に無関心層が占め、そのためその業務を管理会社に丸投げするケースが多いのをよいことに、管理会社が野放図な運営管理を行うだけでなく、管理費等の出納業務の際に社員が組合財産の横領・着服を行うなど、管理組合に重大な損害をもたらすような事案が発生したことが背景にあったのです。

 

たとえば管理会社は、その事務所ごとに成年者で専任の管理業務主任者(国家資格)を30組合ごとに少なくとも1名以上配置しなければなりません。

 

また、現在管理組合との管理委託契約について「自動更新」は認められていません。たとえ契約条件が現状維持であっても、更新前に管理業務主任者が重要事項の説明を行い、そのうえで組合総会で決議することが義務付けられています

 

「管理組合財産の分別管理」については、預金名義を(管理会社でなく)管理組合とするとともに、(管理会社がこれを着服できないように)通帳と印鑑を分離して保管しなければなりません。

 

今回の調査結果では、抜打ちで調査した135社のうち約4割にあたる業者で重要項目の違反が見つかったということです。

 

法が施行されてすでに15年が経過しているにもかかわらず、異常に高い違反率と言わざるを得ません。

 

最近、新たにコンサルを受注した先の管理組合でも、管理委託契約の重要事項説明が実施されていない事実が判明しました。(ちなみに、委託先は誰もが知る大手の管理会社です。)

 

それでは、こうした法令違反がいつまでもなくならない理由は何でしょうか?

 

一つは、顧客である管理組合が「適正化法」による規制内容を十分認識していないからです。そのため、管理会社に対するチェック機能が働かず、問題が放置されやすいことが原因だと思います。

 

管理会社への指導だけでなく、管理組合への啓蒙も必要不可欠でしょう。

 

二つ目は、法令違反に対するペナルティが事実上機能していないことです。

 

行政処分としては、指示処分 → 業務停止 → 登録取消 の3段階がありますが、かなり悪質な業者でもなぜか登録取消には至っていません。

 

<過去記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

ちなみに、「指示処分」は反省文の提出にすぎないうえ、「業務停止」は受託中物件は対象外になるため、ほとんどダメージを受けることはありません。

 

こうした「緩い」官民の関係を前提とする現在の法制度を根本的に見直さない限り、違反の根絶は到底実現しないでしょう。

 

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「原始規約」が実は存在しない!?築20年目のマンションの話

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先月、当社の「管理コスト適正化診断プログラム」を発注いただいた管理組合さんの話です。

 

築20年目を迎えるマンションの概要や管理仕様の内容などを提供してもらった上で査定したところ、仕様を変えずに現状の委託費に対して3割以上削減できるという診断結果になり、その詳細を理事会でご説明しました。

 

その際、理事の方から、

「おたくの会社は、管理規約の見直しはやってくれるのか?」との質問がありました。

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もちろん対応することはできるのですが、

話をよく伺ってみると具体的に変更したい項目があると言うことではなく、竣工当初に設定すべき原始規約がどうも存在しないのではないか、ということでした。

 

原始管理規約には、原則として竣工当初の区分所有者全員の記名押印があるはずです。


しかし、組合員が実際に「規約」として持っているのは、区分所有者の記名押印がないばかりか、会計期間や役員の任期が空欄のままのドラフトしかない、というわけです。

 

それが事実だとすれば、「いま現在この管理組合には有効な規約が存在しない」ことになるため、必要なのは新たに管理規約を「設定」することになります

 

そしてその場合には、(規約の変更と同じく)区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による組合総会の特別決議を経る必要があります。

 

ただ、原始規約の設定については、実態として2つの方法が採られています。

 

1)管理規約(案)の事前承認付き分譲のケース

 マンションの販売契約時に、分譲業者が作成した規約案を購入者に提示して書面による承認を取り付けます。

 

その書面では、建物引渡し後に管理規約が発効することを停止条件に、原始規約が設定される、というものです。


管理規約の設定は「集会(総会)で決議すべき事項」に該当するのですが、「区分所有者全員の書面による合意があるときは、集会の決議があったものとみなされる」ので、総会の開催はこの場合不要だというわけです。

 

2)マンション購入者による総会承認によるケース

 マンション購入者への建物引渡し時又はその後、設立総会を開催して、分譲業者等が作成した管理規約(案)について特別決議を経て原始規約の設定を行うというものです。


この場合は、管理規約を設定した際の設立総会の議事録が、規約原本の機能を果たすこととなります。

 

現時点で推測するに、

このマンションの場合は、上記1)のケースで規約設定を進めたものの、当初の規約案が不完全なまま設定されてしまい、その後長らく見直されずにきてしまったのではないかと考えます。

 

ただ、このマンションの管理会社は、竣工以来分譲業者の系列のままですから、このような状況を長期間放置したことについては大いに責任があると言えるでしょう。

 

本件については今後新たな事実が判明しだい、続報としてこのブログでも取り上げたいと思います。

 

 

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